守谷工房のリペア5へ                守谷工房Topへ

おもちゃのまちでシャッター修理(2023.9.10)


夏前の6月末に栃木県壬生町までガレージシャッターの修理に
出かけました。記事のアップが遅れましたが、折角写真も撮って
きましたのでその顛末をレポートします。3連の大きなガレージで
シャッターの1枚目は正常、2枚目はリモコンが反応せずかつ
昇降が重く、そして3枚目はリモコンの反応が安定しません。
 

壬生町は工房から車で約80km、1時間40分ほどの
道のりです。現地近くのコンビニに立ち寄ります。

 

トミーテックバンダイナムコクラフトが立地する
工業団地を有し、おもちゃのまちで有名です。
 

コンビニの店頭に防犯カメラが設置されて
いますが、6月は燕の繁殖の季節で・・
 

カメラの上に段ボールの巣箱が置かれて
いて、その中で燕が子育て中です。
 

ご依頼主のお宅に到着し、早速シャッターの
動作を確認します。まず左端の1枚目です。
 

リモコン操作によりシャッターが上昇し
始めます。この1枚は問題ないそうです。
 

金属が擦れる耳障りな音がします。
上昇がやや重いように感じます。
 

上端位置まで上昇して自動的に
停止します。まぁ、正常です。
 

ガレージ内に外光が射し込みます。2枚目の
シャッターはリモコンが全く反応しません。
 

ガレージ内の手動スイッチを操作します。リモコンも
手動スイッチもシャッターごとに用意されています。
 

モーター音が聞こえシャッターが
ゆっくり上昇し始めます。
 

途中まで上昇したところで
停止してしまいます。
 

伺っていた通り手で押し上げると再び
上昇し始めます。動きがかなり重いです。
 

何とか上端まで到達しました。油切れや汚れの
付着により各部で摩擦が増大しているようです。
 

3枚目右端のシャッターをリモコン操作
します。反応しません、伺っていた通りです。
 

手動スイッチで上昇させます。動きは
鈍いものの何とか上端まで移動します。
 

1枚目シャッターの内側、天井方向にリモコンを
向けると3枚目は反応することに気づきました。
 

その先にリモコンの受信ユニットが設置
されています。シャッター3枚分で3台です。
 

最も状態の悪い2枚目中央のシャッターから修理を始めます。
設置30年が経過するガレージで、製造元の文化シャッター
ガレージごと一式交換するしかないと回答しているそうです。
 

シャッター上端の巻き上げ機構部です。
ボックスカバーがないので確認が容易です。
 

左右両端に1m近い長さのコイルスプリングが組み込ま
れています。巻き上げトルクを低減する役割があります。
 

中央部分にモーターを含む巻き
上げ装置が組み込まれています

 

かなりシリンダー長のあるギヤードモーター
です。外観的な状態は悪くありません。
 

シャッター両側を挟み上下にスライドさせるスリット
です。多くの場合、この部分で摩擦が増大します。

 

スリットの内側には、摩擦を低減するため
テフロン製のライナーが貼り付けられています。

 

そのライナーも長年にわたるシャッターの
往復で、表面が荒れ汚れが集積しています。
 

少々乱暴ですが、ハンドグラインダーにサンダー
ディスクを取り付けライナーを研磨します。
 

ライナー表面がひと皮剥けて白く
新しいテフロン面が現れます。
 

スリット奥の突き当りは金属面なので
スプレーグリスを吹き付けておきます。
 

シャッター両側の摺動がかなり改善されたようで、この状態で
シャッターは上端まで巻き上げられるようになりました。しかし、
昇降時に上部の巻き上げ機構から耳障りな金属音が聞こえて
きます。詳しく機構を確認すると、鋼鉄製で頑丈に固定された
センターシャフトの周りを、金属リングがギヤードモーターの
動力で回転する仕組みです。このリングにシャッター上端が
固定されているので、回転により巻き上げられるわけです。
 

リングの内周にギヤが刻まれています。センターシャフトに固定
されたディスク上で3か所の位置(0度、120度、240度)に
ピニオンギヤが取り付けられ、リングを介してシャッターを支え
内周のギヤと噛み合ってリングを回転させ巻き上げます。
 

油切れを起こして全体的に錆が広がり、
どこから金属音が出てもおかしくない状態です。
 

手が届く限りあらゆる可動部・摺動部に
グリスまたはオイルを吹き付けます。
 

シャッターの上端を中央でリングに固定している部分です。
内側に挟み込まれているプレートが少しはみ出ています。
 

横方向から確認すると、中央付近が
突き出て全体的に湾曲しているようです。
 

シャッター上端(中央)を固定
しているボルトを緩めます。
 

プレートのはみ出ている部分を叩いて
シャッター上端ラインに揃えます。
 

固定ボルトを締め込みますがまだ
湾曲は改善されていないようです。
 

中央あたりを手で押し込んでみますが、
それで修正できるものではないようです。
 

注油は他2枚のシャッターにも作業します。
次はリモコンが反応しない不具合です。
 

3枚のシャッター各々にリモコンと受信機が用意
され、それぞれペアリングする必要があります。
 

受信機側は正常に動作していると仮定し、
反応しないリモコン2個を分解してみます。
 

ガレージの内外から操作するので、赤外線ではなく電波を
使った仕様です。ボタン電池を入れても操作できません。
 

リモコンの内蔵基板を注意深く観察すると、クリスタル
発振子端子の片方で半田が取れています。SMDが
多く並びリフローで半田付けされる中、このデバイスは
手作業で取り付けられていると思います。真っ先に
しかも高確率でトラブルを起こしそうな部分です。
 

基板側のランドも剥がれていますが
隣の島に何とか接続できそうです。
 

いつもは工房内のデスク上で作業する内容
ですが、現場それも屋外で半田付けします。
 

ガレージの中にAC100Vコンセントがあるので、
ツールボックス内の普通の半田ごてが使えます。
 

結果は、完全に復活です。ガレージの屋根に
受信機3個分のアンテナ(3本)が出ています。
 

最後の問題は、3枚目のシャッターでリモコンが機能する時と
しない時があることです。ガレージ内ではリモコンの方向により
反応します。写真の方向、つまり受信機の方に向けると反応し
ガレージの外に出ると全くダメです。原因が分かりました、この
写真に証拠が写り込んでいます。矢印が示す垂れ下がった
コードのようなものは、屋根上のアンテナからの配線が本来は
受信機に接続されているはずが、切れているのです。実際には
アンテナにもつながっていないので、隣のアンテナ配線を共用
することにします(3本まとめて1本で足りるように思いますが)。
 

作業を終え全体の動作確認を行います。
3枚とも一斉に上昇していきます。
 

実はシャッター面を構成するスラット、その
連接部の全てにオイルを吹き入れてあります。
 

シャッターの表側から吹き付けたので周囲に
オイル染みが広がり外観が損なわれています。
 

洗剤を使った洗浄が必要ですが、作業前にご依頼主に
確認したところそのままでよろしいとのことで省略します。
 

巻き上げ機構に特に深刻な損傷や故障がないので、
当分はお使いになれると思います。シャッター昇降が
滑らかになり昇降スピードも速くなっています。耳障りな
金属音(キーキー)も鳴り止んでいます。シャッター面を
綺麗に洗浄し、できれば再塗装することで新品に近い
状態に戻るでしょう。その作業もご依頼いただければ
再び「おもちゃのまち」壬生町へ出かけて参ります。

 
守谷工房のリペア5へ                守谷工房Topへ