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ジェットバスの修理で越谷市へ(2024.5.18)


ジェットバス修理のご依頼があり、埼玉県越谷市まで出かけます。
守谷市から30kmくらいなので十分出張可能です。お伺いしてみると
ヤマハ社(日本楽器製造)製のシステムバスで、そこにジェットバスが
ビルトインされています。ヤマハは1987年まで住宅設備を製造し、
その後ヤマハリビングテック社に移行、2013年以降はトクラス社
して製造・販売が続いています。製造元では「修理できない」そうです。

 

ヤマハが手がけた優れたデザインのバスユニットです
バスタブの前後にジェット流の吹き出し口があります。
 

浴室内のリモコンを操作しても動かない・・、
ご依頼主から教えてもらえるのはそれだけです。
 

手前のエプロンを外すと左端の空間に
ジェットポンプが取り付けられています。

 

ポンプや電動機、制御回路などどこが故障していても
不思議はなく、お手上げになる可能性は無限大です。
 

反対側、右端の空間は壁面との間隔が
狭く、覗き込むことも容易ではありません。

 

カメラを押し込んで撮影したところ、ジェット
吹き出し口と吸水口が配管されています。
 

浴室内右側の壁面にジェットバスの
操作リモコンが取り付けられています。
 

動作時以外もいくつかのLEDが点灯して
いるはずですが、全て消えたままです。
 

周囲のコーキングを取り除き
カバー、本体の順で外します。
 

リモコンの奥、壁面の穴から
接続ケーブルが出ています。
 

ジェットポンプ近くの制御回路と接続されて
いるはずですが、ケーブルは僅か2芯です。
 

この2芯ケーブルに回路計を当てると、
12Vほどの電圧がかかっています。
 

リモコン内の回路を動作させる電源供給と
制御回路との通信を兼ねているようです。
 

電源が来ているということは、電源回路や制御
回路は正常に動作しているのではないか・・、
 

となれば、リモコン側に問題があり動作しないだけではないか、
という仮説が立てられます。実際、リモコンは浴室内で湿度が
異常に高い環境に長年晒されてきたわけで、回路基板に損傷が
生じる可能性が十分にあります。逆に、リモコン辺りに原因が
見つからなければ、ポンプや電動機、制御回路を調べることに
なり、バスタブの隙間奥まで手を入れなければなりません。
 

回路基板を眺めると惨状が目に飛び込んで
きます。基板の下端に腐食が広がっています。

 

回路は両面基板で構成されており
裏側のパターンはさほどでもありません。
 

三端子レギュレータ近くの100μF電解コンデンサです。
片方の端子がなくなっています。端子の鉄材から生じた
錆でしょう、基板表面に赤茶色の汚れが広がっています。

 

レギュレータを挟んだ隣の電解コンデンサです。こちらも
状況は劣悪です。近くの抵抗器2本にも影響が及んで
います。リモコン自体が防水構造で、周囲はコーキング
されていますが、長年の間に水が侵入したのでしょう。

 

腐食部分をワイヤーブラシで清掃します。
表面のレジストが浮き上がっています。

 

片足の電解コンデンサが
勝手に落ちてきます。

 

レジストが想像以上に広範囲に剥がれ
落ち、銅箔パターンが露出しています。

 

もう1本の電解コンデンサ周りも
銅箔パターンが剥き出しです。
 

腐食物をできるだけ取り除いてから
まず電解コンデンサを交換します。
 

基板ホール部分では基板裏側まで腐食が
及んでおり、なかなか半田が乗りません。
 

両面基板なので表側のパターンにも
部品を電気的に接続しなければなりません。

 

銅箔表面を丁寧にクリーニング
しながら確実に半田付けします。
 

隣の抵抗器は端子に加え
本体にも腐食が進んでいます。

 

150Ωが2本並列接続されているので
新しい75Ω1本に置き換えます。
 

三端子レギュレータ手前の電解コンデンサを
除いた跡です。銅箔が広く剥き出しです。

 

電解コンデンサ取り付け部の表側ランドが
欠損しています。部品に工夫を加えます。
 

ランド先のパターンに届くよう端子
リードを途中で折り曲げます。

 

裏側配線パターンも
確実に半田付けします。
 

三端子レギュレータの入力側端子も
長年水分に晒され断裂寸前です。

 

取り外して新しい
部品に交換します。
 

「運転」ボタンに該当する内部のタクトスイッチです。
オンボード点検で導通が怪しく、外して調べます。

 

やはり押してもONになり
ません。壊れているようです。
 

新しいタクトスイッチに交換します。「運転」ボタンは最も使用頻度が
高いボタンなので、タクトスイッチの劣化も早かったようです。しかし、
そもそも20年以上もの年月、よく持ったものです。ここまでの修復を
終えたところで、リモコン基板をいったんご依頼主へ送り返します。
リモコンに不具合があったことは確かですが、それ以外も故障して
いる可能性があります。ポンプや電動機、制御回路にわたる原因
究明は大変な作業になり、修理を続行するかあらためてご依頼主と
相談することになります。リモコンはコネクタ1個でケーブルを接続
するだけですから、ご依頼主に動作を確認してもらうことは難しくあり
ません。
首を長くして待っていたところ、「動作しました!」と嬉しい
連絡です。ヤマハ製ジェットバスの故障は(たかが)リモコン内部の
腐食が原因ということです・・、あらためて取り付けに伺います。
 

再び越谷市に出向きます。リモコンは再度工房へ
戻してもらい、基板の防水処理などを施しています。

 

リモコン本体を元の壁面に固定します。
真面目に水準器で水平を確認します。
 

外カバーを嵌め込みます。
軽くクリーニング済みです。

 

周囲から水が浸入しないようコーキングします。元々
不完全な防水処理が今回の故障を招いたようなものです。
 

うーん、やはり守谷工房のコーキングは下手です。
が、防水がしっかりできていることが大事です。

 

動作を確認します。「運転」を始め、
全てのボタンが正常に機能します。
 

バスタブ左側(前方)からのジェット吹き出し
です。品の良いジェットはヤマハの雰囲気です。

 

バスタブ右側(後方)からのジェット
吹き出しです。快調そのものです。
 

「浴室内のリモコンを操作しても動かない~直るでしょうか」とだけ
聞かれても、浴室専門の設備業でもない限り答えようがありません。
何の実績も根拠も見通しもないのに、取りあえず出かけていく自分に
我ながら呆れます。しかし、製造元は元より設備業者にも修理業者
にも見放されて困っているのに、知らないふりはできません。結果、
回路基板の部分的損傷という、修復可能な範囲内にある不具合に
終始するわけです。何とかなる場合が少なくない以上(ほとんど?)、
懲りずに出かけて行きましょう。お困りごとは守谷工房へご相談を。

 
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