ジェットバス修理のご依頼があり、埼玉県越谷市まで出かけます。
守谷市から30kmくらいなので十分出張可能です。お伺いしてみると
ヤマハ社(日本楽器製造)製のシステムバスで、そこにジェットバスが
ビルトインされています。ヤマハは1987年まで住宅設備を製造し、
その後ヤマハリビングテック社に移行、2013年以降はトクラス社と
して製造・販売が続いています。製造元では「修理できない」そうです。
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ヤマハが手がけた優れたデザインのバスユニットです
バスタブの前後にジェット流の吹き出し口があります。
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浴室内のリモコンを操作しても動かない・・、
ご依頼主から教えてもらえるのはそれだけです。
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手前のエプロンを外すと左端の空間に
ジェットポンプが取り付けられています。
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ポンプや電動機、制御回路などどこが故障していても
不思議はなく、お手上げになる可能性は無限大です。
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反対側、右端の空間は壁面との間隔が
狭く、覗き込むことも容易ではありません。
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カメラを押し込んで撮影したところ、ジェット
吹き出し口と吸水口が配管されています。
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浴室内右側の壁面にジェットバスの
操作リモコンが取り付けられています。
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動作時以外もいくつかのLEDが点灯して
いるはずですが、全て消えたままです。
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周囲のコーキングを取り除き
カバー、本体の順で外します。
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リモコンの奥、壁面の穴から
接続ケーブルが出ています。
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ジェットポンプ近くの制御回路と接続されて
いるはずですが、ケーブルは僅か2芯です。
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この2芯ケーブルに回路計を当てると、
12Vほどの電圧がかかっています。
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リモコン内の回路を動作させる電源供給と
制御回路との通信を兼ねているようです。
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電源が来ているということは、電源回路や制御
回路は正常に動作しているのではないか・・、
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となれば、リモコン側に問題があり動作しないだけではないか、
という仮説が立てられます。実際、リモコンは浴室内で湿度が
異常に高い環境に長年晒されてきたわけで、回路基板に損傷が
生じる可能性が十分にあります。逆に、リモコン辺りに原因が
見つからなければ、ポンプや電動機、制御回路を調べることに
なり、バスタブの隙間奥まで手を入れなければなりません。
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回路基板を眺めると惨状が目に飛び込んで
きます。基板の下端に腐食が広がっています。
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回路は両面基板で構成されており
裏側のパターンはさほどでもありません。
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三端子レギュレータ近くの100μF電解コンデンサです。
片方の端子がなくなっています。端子の鉄材から生じた
錆でしょう、基板表面に赤茶色の汚れが広がっています。
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レギュレータを挟んだ隣の電解コンデンサです。こちらも
状況は劣悪です。近くの抵抗器2本にも影響が及んで
います。リモコン自体が防水構造で、周囲はコーキング
されていますが、長年の間に水が侵入したのでしょう。
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腐食部分をワイヤーブラシで清掃します。
表面のレジストが浮き上がっています。
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片足の電解コンデンサが
勝手に落ちてきます。
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レジストが想像以上に広範囲に剥がれ
落ち、銅箔パターンが露出しています。
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もう1本の電解コンデンサ周りも
銅箔パターンが剥き出しです。
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腐食物をできるだけ取り除いてから
まず電解コンデンサを交換します。
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基板ホール部分では基板裏側まで腐食が
及んでおり、なかなか半田が乗りません。
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両面基板なので表側のパターンにも
部品を電気的に接続しなければなりません。
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銅箔表面を丁寧にクリーニング
しながら確実に半田付けします。
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隣の抵抗器は端子に加え
本体にも腐食が進んでいます。
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150Ωが2本並列接続されているので
新しい75Ω1本に置き換えます。
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三端子レギュレータ手前の電解コンデンサを
除いた跡です。銅箔が広く剥き出しです。
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電解コンデンサ取り付け部の表側ランドが
欠損しています。部品に工夫を加えます。
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ランド先のパターンに届くよう端子
リードを途中で折り曲げます。
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裏側配線パターンも
確実に半田付けします。
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三端子レギュレータの入力側端子も
長年水分に晒され断裂寸前です。
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取り外して新しい
部品に交換します。
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「運転」ボタンに該当する内部のタクトスイッチです。
オンボード点検で導通が怪しく、外して調べます。
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やはり押してもONになり
ません。壊れているようです。
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新しいタクトスイッチに交換します。「運転」ボタンは最も使用頻度が
高いボタンなので、タクトスイッチの劣化も早かったようです。しかし、
そもそも20年以上もの年月、よく持ったものです。ここまでの修復を
終えたところで、リモコン基板をいったんご依頼主へ送り返します。
リモコンに不具合があったことは確かですが、それ以外も故障して
いる可能性があります。ポンプや電動機、制御回路にわたる原因
究明は大変な作業になり、修理を続行するかあらためてご依頼主と
相談することになります。リモコンはコネクタ1個でケーブルを接続
するだけですから、ご依頼主に動作を確認してもらうことは難しくあり
ません。首を長くして待っていたところ、「動作しました!」と嬉しい
連絡です。ヤマハ製ジェットバスの故障は(たかが)リモコン内部の
腐食が原因ということです・・、あらためて取り付けに伺います。
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再び越谷市に出向きます。リモコンは再度工房へ
戻してもらい、基板の防水処理などを施しています。
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リモコン本体を元の壁面に固定します。
真面目に水準器で水平を確認します。
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外カバーを嵌め込みます。
軽くクリーニング済みです。
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周囲から水が浸入しないようコーキングします。元々
不完全な防水処理が今回の故障を招いたようなものです。
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うーん、やはり守谷工房のコーキングは下手です。
が、防水がしっかりできていることが大事です。
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動作を確認します。「運転」を始め、
全てのボタンが正常に機能します。
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バスタブ左側(前方)からのジェット吹き出し
です。品の良いジェットはヤマハの雰囲気です。
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バスタブ右側(後方)からのジェット
吹き出しです。快調そのものです。
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「浴室内のリモコンを操作しても動かない~直るでしょうか」とだけ
聞かれても、浴室専門の設備業でもない限り答えようがありません。
何の実績も根拠も見通しもないのに、取りあえず出かけていく自分に
我ながら呆れます。しかし、製造元は元より設備業者にも修理業者
にも見放されて困っているのに、知らないふりはできません。結果、
回路基板の部分的損傷という、修復可能な範囲内にある不具合に
終始するわけです。何とかなる場合が少なくない以上(ほとんど?)、
懲りずに出かけて行きましょう。お困りごとは守谷工房へご相談を。
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