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ジェットバスの修理で所沢市へ(2024.6.12)


続けてジェットバス修理のご依頼があり、所沢市まで出かけます。
守谷市から常磐道と外環道を乗り継ぎ、70kmくらいの距離です。
バスタブの設置と同時に施工されたビルトインのタイプで、お住いの
建築以来20年以上経過しているそうです。動作しなくなったのは
5年以上も前のことで、製造元を始めあちらこちらに問い合わせるも
修理の見込みがなく、バスタブに開いたタダの穴と化して長いそう
です。お伺いしてみると、周囲がタイル張り壁面で囲まれ、内部の
点検はほぼ不可能です。到着直後に引き上げそうになります・・。
 

バスタブサイドに取り付けられている操作
パネルです。右はON・OFFの押しボタンSW、
 

左側は回転するツマミでパワー調整用です。
タカラスタンダード社製であることが分かります。
 

今さら動き出す可能性はないものの、
万一に備えてバスタブに水を張ります。
 

バスタブ側面の吸水口およびジェット
吹き出し口を水没させておきます。
 

浴室内で点検のしようがないということは・・、
屋外に出てみると浴室外にありました。

 

バスタブに隣接する位置に
いかにも風のボックスです。
 

ボックスのカバーを開けてみると
やはりジェットポンプです。

 

浴室壁面を屋外に貫通する穴があり、そこを
2本の配管(吸水・吹き出し)が通ります。

 

モーターの横に配線が集まる部分が
あり、カバーがネジで固定されています。
 

カバーの表面に中の端子の説明が貼られて
います。年月が経過し一部判読不能です。
 

想像力を働かせ何とか読み出した結果です。これだけ
分かれば何とかなりそうです。まず、図中の円で囲んだ
部分、ここに外部からAC100Vが接続されるようです。
 

カバーを外し端子を確認します。ここに
AC100Vが来ているはずですが・・、
 

電源が接続されていなければ
そもそも動作するはずありません。
 

電源の配線を辿ります。ブレーカーを
経由してから地中に入っていきます。

 

数m離れた軒下で地面から出てくる
ACコードを発見。もしかすると・・
 

すぐ近くの外壁面に屋外用コンセントがあり、
いかにもここに差し込まれていた感じです。
 

コンセントにプラグを差し込むと
端子にAC100Vが復活しています。
 

電源のAC100Vが接続されたので、次はモーターのON・OFFを
制御する配線を調べます。カバーの表示に「運転スイッチ」の
表示があるわけで、この端子(配線)にまず間違いありません。
 

端子に接続された配線は、外壁を通り抜け浴室内に
入っています。先ほどの押しボタンSWにつながるのでは。

 

仮説として、押しボタンSWによりこの端子間が短絡する
ことでONになるのではないか・・そんな簡単でしょうか。
 

「運転スイッチ」の端子間には26Vほどの直流電圧が
かかっています。配線の先はもしかすると可変抵抗器かも
知れないし、もっと複雑な回路構成かも知れません。12Vを
短絡した瞬間、過電流が流れて本体が破壊されるのでは・・。
心配が高まる中、回路計を500mA電流測定にセットし火花が
飛ぶことも覚悟の上、テスト棒を「えぃ」とばかり当てると、

 

小気味よい音を立ててモーターが動き出します。急いで
浴室内に戻ってみると、この通り吹き出し口からジェット流が
ガンガン出ているではないですか。配管内に長年残っていた
水が大量のスラッジを吐き出し、バスタブ内が大変なことに
なっています。が、パイプクリーニングで何とかなるでしょう。
何よりポンプが息を吹き返し、絶望視されていたジェットバスが
これで復活します。ポンプの損傷やモーターの焼損といった
致命的な故障ではありませんでした。そして「運転スイッチ」の
動作は、端子が一瞬短絡される度に、つまり浴室内の押し
ボタンSWが押される度に、ONとOFFを繰り返す仕組みです。

 

心臓部が復活したことで、安心して
周辺部の整備に取り掛かれます。

 

ジェット流の勢いを調整するツマミです。
内部にバルブの開閉シャフトがあります。
 

ツマミを回して奥にあるバルブの
開閉を調整する構造です。
 

右側はジェットをON・OFFする押しボタンSW
ですが、取り付け基部がぐらぐらして不安定です。
 

しかし、取り付け状態を改善しようにも
周囲の樹脂製リングを脱着できません。

 

押しボタンSWを引き出すと、ポンプユニット
から来る配線も一緒に出てきます。
 

パネルのベースプレートをアクリル材あたりで新しく
したいうと思うのですが、どうしても外れてきません。

 

金属製のリング部品も固着したままです。
樹脂部品を一新する計画は取り止めます。
 

残るはこの押しボタンSWです。押し込んでも
ジェットバスが起動しなくなっていたのですから、

 

内部の電気接点が接触不良を
起こしているに違いありません。
 

接点復活剤を吹き付けてはみますが、
回路計を当てるとしっかり導通があります。

 

おかしいと思い念のため配線にかかる電圧を
調べます・・。何と、26Vが来ていません。
 

再び屋外に出て「運転スイッチ」の配線を調べます。
外壁の開口部はいかにもヤッツケ仕事で穴を開けた
ステンレス板で覆われています。ここで開口部の
奥から配線を引き出してみると、何と途中でぶっつり
切れています(写真は既に接続・修復した状態です)。
長い時間何かと擦れ合って断線したような状況では
なく、不自然にぶっつり切れています。その原因まで
調べ上げることは今回の修理には含まれませんが。

 

断線を修理した後、浴室内の配線をもう一度点検
すると電圧が確認できます。もちろんこの配線の
短絡により、モーターをON・OFFすることができます。

 

パネルのベースプレートを脱着できない以上、
現状のままで使用に耐えるよう改善します。

 

大きな問題はこの押しボタンSWを
パネル内で固定できないことです。
 

おそらく何か元の固定用部品が脱落した
のだと思います。代用部品を用意します。

 

水道工事用の樹脂製リングに
ゴム系接着剤を塗り付けて、
 

押しボタンSWを挿入した上から
押さえ付けるようにして入れます。

 

元のツマミをそのまま装着します。せめて
再塗装くらいはしたかったのですが。
 

ポンプのON・OFF、ジェット流の調節、
両ツマミとも本来の機能通りに復旧です。

 

強力なジェットポンプにより、バスタブの
前後から大量のバブルが放出されます。
 

ジェットバスの付いていないお風呂と、故障した
ジェットバスが付いているお風呂、どちらがマシか
考えさせられるような製品の故障。製造元を始め
ご依頼主は問い合わせる先々で依頼を断られて
います。ネズミにでもかじられたかのようなただの
断線が原因です。地域の水道設備屋さんや電気
修理店で十分修理可能なのに、調べてもくれない
この現状、この不憫さはいったい何なのでしょう。

 

「故障したジェットバスが付いているお風呂」で
5年以上も我慢されてきたご依頼主を、何とも
お気の毒に思います。ですが何か御縁があった
のか修理のご用命をいただき、幸いなことに
修理に成功した以上は、まだまだ綺麗で機能も
十分なお風呂を、これから毎日楽しんで下さい。

 
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