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ジェットバスを復活させる(2024.12.15)


宅配ボックスと同様、これまでジェットバスの修理も戦績半々と
いったところです。リモコンやケーブルの断線など、直るべくして
直る単純な不具合でしか成果を得ることができていません(それは
それで喜んでいただいてはおりますが)。しかし、ジェットポンプや
電源・制御ユニットなど主要部が故障していると、ほとんど手を
出すことができないままです。何とか風穴を開けたいものです。

 

こちらのジェットバス付き浴室、動作しなく
なり既に数年が経過しているそうです。
 

片側にジェット水流の吹き出し口が
2個あります。下は吸い込み口です。
 

足元側にも2個の吹き出し口が
あります。中央は湯沸かし口です。
 

壁面に操作用のリモコンが取り付けられています。
内部に浸水して故障した・・程度なら良いのですが。
 

ボタンを操作しても何も反応がありません。
正常であればLEDがどれか点灯しそうなもの
ですが、そもそも通電していないような様子です。

 

かつての修理と同様に、浸水によるリモコン
内部の故障程度であれば嬉しいのですが。
 

長年浴室内に取り付けられていた
機器は、錆やカルキで固着しがちです。
 

固定ネジを何とか緩め、壁面
からリモコンを引き剥がします。

 

リモコン背面から電気配線に加え、ゴムホースが
接続されています。リモコン内部の排水用です。
 

排水用ホースが付いているとは万全な
設計で、故障の可能性が一挙に後退します。
 

基板面を点検しますが、顕著な
腐食部分などは見られません。
 

リモコンが問題ないとすると電源ユニットが疑われます。
天井裏に設置されていると予めお聞きしております。

 

気は進みませんが、脚立に昇り
天井の点検口を開けます。

 

点検口から家屋の小屋組みが見えます。本当の天井は
こちらで、ユニットバス天井との間に空間があります。
 

ライトで照らしてみると、少し奥まった
ところにユニットが置かれています。
 

ジェットポンプのモーターに電力を供給する電源
ユニット、およびリモコンの操作を受けて動作を
制御する回路が組み込まれていると思われます。
 

現場で対応できることには限りがありますので、
先ほどのリモコン共お預かりし工房に持ち帰ります。

 

側面にスペックが記載されたシールが貼られています。
AC100Vから最大15AのDC15~20Vを出力します。
 

側面にAC入力、ジェットポンプの電源出力、
リモコンと水位センサーの接続コネクタが並びます。

 

この時点で、ジェットバス用電源ユニットの
内部など全く未知の世界です(何と無謀な)。
 

家電品のように人の目につく場所に
設置できる体裁・・ではとてもありません。

 

無骨な金属製外装カバーを
外して内部を点検します。

 

側面長いっぱいのヒートシンクに、風量の
ありそうな冷却ファンが組み込まれています。

 

DC300W(20V・15A)を
出力するスイッチング電源です

 

ユニット内側面にサーキットブレーカーが取り付け
られています。浴室内での安全設計が厳重です。

 

ヒートシンクに並ぶパワーデバイス、TRか
FETかは分かりませんが。一部は整流器です。
 

不良個所を探すためシャシーから
基板を取り出してみます。
 

ヒートシンクは底面から
ネジで固定されています。
 

浮き上がってはきましたが、
ブレーカーが干渉します。

 

機器内に組み込まれて過電流を遮断する
優れものです。先に外しておきます。
 

1枚の基板に電源回路から制御
回路まで全てが収められています。
 

コストを抑えた合理的な設計なのでしょうが、これでは
各部品の役割がブロック単位ですら判読できません。
 

毎日のように飽きるほど基板を眺めていると、じんわり(?)と
回路構成が見えてきます。大出力のスイッチング電源部とその
制御回路、リモコンからの信号を受け電源を作動させる回路が
同居しています。大雑把に見て、コイルや電解コンデンサなど
大サイズの部品はスイッチング電源、小さなC・RやICは制御
系を構成します。それらがワンボードに詰め込まれています。

 

基板の表側に焼損箇所があります。写真は既に部品を交換した
状態ですが、制御系駆動用に小電力を作り出す部分です。パワー
TRが破損し、隣の定電圧ダイオード(ツェナー)は焼き切れて
います。また周囲の基板表面が変色しているのが分かります。
 

基板の裏側を見ると、表側以上に黒く変色しています。
かつてツェナーやTRが過熱したことが分かります。

 

運が良ければ、この小電力電源回路を修復
すればジェットバスが復活するかも知れません。
 

面倒くささを押し返して、該当部分の回路図を起こします。
パワーTRはコレクタ電流がカバーできれば何とかなります。
困るのは焼けてしまったツェナーダイオードのスペックです、
ツェナー電圧が分かりません。2Vあたりから少しずつ部品を
変えながら、出力電圧とパワーTRの電流を確認します。4V
手前でコレクタ電流が急に増加しパワーTRが発熱するので、
3.8Vのツェナーに決めます。その他、ドライブ用のTRや
怪しいC・Rも交換しますが、回路各部の設計電圧等は当然
分からないままです。。悔しいことに、ジェットポンプに相当
する負荷を用意できず、かつリモコンとの通信プロトコルも
不明なので、現場に出向いて動作確認するしかありません。
 

リモコンの回路図も作成済みです。本体側の通信端子を
ON・OFFしながら動作状態を表す色違いのLEDを点灯
させるなかなか巧妙な回路です。本体から各端子に出る
電圧を測定しましたが、スイッチ操作との関係を推定する
ことすらできません。本体側はプロセッサがプログラムで
処理しているのでしょう。BB(ブラックボックス)です。

 
 
本件の修理作業を開始して間もなく、師と仰ぐ「有限会社
タナテック(千葉市)」の田辺氏を訪問する機会がありました。
手詰まりとなったジェットバス回路基板について、攻略法を
ご教示いただくまたとないチャンスです。回路計を片手に30分
近くも基板を調べて下さり、故障しやすい箇所・部品、電圧や
信号の追い方、ダミー負荷による動作試験方法など山ほど
アドバイスとヒントをいただきましたが、最後に言われた
諦めずに頑張りなさい」に最も元気づけられ、再び工房へ。

 
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