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高級オルゴールオルフェウス その1(2023.4.18)


昨年10月Topics25に那須オルゴール美術館の紹介記事を掲載
しました。その中に日本電産サンキョーオルゴール株式会社への
リンクがあります。同社が誇る高級オルゴールオルフェウス修理の
ご依頼です。当初、市内のおもちゃ病院に持ち込まれたようですが
職人技による精密機械は「おもちゃ修理」の領域には入りません。
 

オルフェウスシリーズには30弁、50弁、72弁、
100弁のモデルがあり、こちらは50弁の1台です。

 

シリンダーが左右にシフトすることで「四季」と
「主よ人の望みの喜びよ」の2曲を再生します。
 

工房とて、これだけの精密機械に手を
出すことは無謀と言えなくもありません

 

ところで、日本電産サンキョーオルゴール株式会社はその後
社名が変わり、現在はニデックインスツルメンツ株式会社です。
 

ムーブメントにアクセスするため、オルゴールを
収める工芸品的に仕上げられた木箱を分解します。

 

左端の仕切り板を引き抜くと
ガラス板が横方向にスライドします。

 

間近に見るオルフェウス50弁のムーブメントです。澄んだ音色を
発する櫛歯を中心に、洗練された金属部品で構成されています。
 

シリンダー表面に打ち込まれたピンです。
櫛歯先端と絶妙なクリアランスに調整されます。
 

シリンダを駆動(回転)するギヤと調速用
ガバナーです。ガバナー風車は樹脂製です。
 

シリンダー駆動の動力となるゼンマイを収めた金属ケース
です。上面に巻き上げ時のラチェットが付いています。
 

木箱からムーブメントを取り出します。
底面に固定ネジがあります。
 

先にゼンマイ巻き上げ用のハンドルを外し
ます。巻き上げ反対方向にネジを緩めます。
 

ゼンマイのシャフトが
底板を貫通しています。
 

ムーブメントのダイキャスト製ベースが
3本のネジで底板に固定されています。
 

ネジを緩めるとムーブメントが
持ち上がってきます。
 

さて、このオルゴールの不具合は・・、ゼンマイを
途中までしか巻き上げることができないそうです。
 

巻き上げ途中で、ギヤが外れるような音が
してゼンマイが元に戻ってしまうそうです。
 

ゼンマイのケースは2カ所で
ベースにネジ固定されています。
 

ネジを外すとケースごと
浮き上がってきます。
 

ゼンマイ動力がシリンダーに伝達
される機構を確認できます。
 

ケース内部にゼンマイが収まり、ゼンマイと一緒に
回転するであろう大きなギヤとシャフトが見えます。
 

ケースの一部に切り欠きがあり、
ギヤが歯の一部分を覗かせています。
 

シリンダー側面に取り付けられたこのギヤに、
ゼンマイ側のギヤが噛み合い動力が伝達されます。
 

小さなスナップリングがシャフトの上端と
ラチェットの部品を共に固定しています。
 

スナップリングを外して、ラチェット
およびシャフトの固定を解除します。
 

シャフトを引き抜きます。
ギヤが一緒に外れてきます。
 

平歯車ではなく、回転軸方向を90度転換
する特殊な傘歯車で、こちらも樹脂製です。
 

ゼンマイが巻き上げられない原因です、歯の肩部分が一応に
欠けています。シリンダー側のギヤとしっかり噛み合うことが
できず、巻き上げ途中でトルクが加わり出すと滑るのでしょう。
そしていったん滑り始めると、勢い良く巻き戻りながら歯先が
削られ、短期間のうちにここまで損傷が進んだと考えられます。
 

シリンダ側のギヤと噛み合わせてみると
強く押さえ付けない限り・・、滑ります。
 

強く押さえ付けない限り・・を逆手に取り、
それならば押さえ付ける方法を採ります。
 

ギヤをゼンマイケースごと
少し持ち上げることにします。
 

ゼンマイケースの下にスペーサ代わりの
ワッシャを入れ、高さを調整します。
 

両側のネジを締め込みます。
ケースの下に隙間が出来ています。
 

傘歯車同士がしっかり噛み合い、
ゼンマイの回転が伝わるはずですが・・
 

結果は失敗です。シリンダー側ギヤの中心に小さな突起があり
ゼンマイケースの側面に開いている穴に差し込まれる構造です。
これではケースの高さを調整したところで、シリンダーも一緒に
位置を返るため意味がありません。ギヤを修復(製作)するのは
ハードルが高く、素直に製造元に依頼するのがよろしいのか・・

 
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