
昨年10月Topics25に那須オルゴール美術館の紹介記事を掲載
しました。その中に日本電産サンキョーオルゴール株式会社への
リンクがあります。同社が誇る高級オルゴールオルフェウス修理の
ご依頼です。当初、市内のおもちゃ病院に持ち込まれたようですが
職人技による精密機械は「おもちゃ修理」の領域には入りません。
|

オルフェウスシリーズには30弁、50弁、72弁、
100弁のモデルがあり、こちらは50弁の1台です。
|

シリンダーが左右にシフトすることで「四季」と
「主よ人の望みの喜びよ」の2曲を再生します。
|

工房とて、これだけの精密機械に手を
出すことは無謀と言えなくもありません。
|

ところで、日本電産サンキョーオルゴール株式会社はその後
社名が変わり、現在はニデックインスツルメンツ株式会社です。
|

ムーブメントにアクセスするため、オルゴールを
収める工芸品的に仕上げられた木箱を分解します。
|

左端の仕切り板を引き抜くと
ガラス板が横方向にスライドします。
|

間近に見るオルフェウス50弁のムーブメントです。澄んだ音色を
発する櫛歯を中心に、洗練された金属部品で構成されています。
|

シリンダー表面に打ち込まれたピンです。
櫛歯先端と絶妙なクリアランスに調整されます。
|

シリンダを駆動(回転)するギヤと調速用
ガバナーです。ガバナー風車は樹脂製です。
|

シリンダー駆動の動力となるゼンマイを収めた金属ケース
です。上面に巻き上げ時のラチェットが付いています。
|

木箱からムーブメントを取り出します。
底面に固定ネジがあります。
|

先にゼンマイ巻き上げ用のハンドルを外し
ます。巻き上げ反対方向にネジを緩めます。
|

ゼンマイのシャフトが
底板を貫通しています。
|

ムーブメントのダイキャスト製ベースが
3本のネジで底板に固定されています。
|

ネジを緩めるとムーブメントが
持ち上がってきます。
|

さて、このオルゴールの不具合は・・、ゼンマイを
途中までしか巻き上げることができないそうです。
|

巻き上げ途中で、ギヤが外れるような音が
してゼンマイが元に戻ってしまうそうです。
|

ゼンマイのケースは2カ所で
ベースにネジ固定されています。
|

ネジを外すとケースごと
浮き上がってきます。
|

ゼンマイ動力がシリンダーに伝達
される機構を確認できます。
|

ケース内部にゼンマイが収まり、ゼンマイと一緒に
回転するであろう大きなギヤとシャフトが見えます。
|

ケースの一部に切り欠きがあり、
ギヤが歯の一部分を覗かせています。
|

シリンダー側面に取り付けられたこのギヤに、
ゼンマイ側のギヤが噛み合い動力が伝達されます。
|

小さなスナップリングがシャフトの上端と
ラチェットの部品を共に固定しています。
|

スナップリングを外して、ラチェット
およびシャフトの固定を解除します。
|

シャフトを引き抜きます。
ギヤが一緒に外れてきます。
|

平歯車ではなく、回転軸方向を90度転換
する特殊な傘歯車で、こちらも樹脂製です。
|

ゼンマイが巻き上げられない原因です、歯の肩部分が一応に
欠けています。シリンダー側のギヤとしっかり噛み合うことが
できず、巻き上げ途中でトルクが加わり出すと滑るのでしょう。
そしていったん滑り始めると、勢い良く巻き戻りながら歯先が
削られ、短期間のうちにここまで損傷が進んだと考えられます。
|

シリンダ側のギヤと噛み合わせてみると
強く押さえ付けない限り・・、滑ります。
|

強く押さえ付けない限り・・を逆手に取り、
それならば押さえ付ける方法を採ります。
|

ギヤをゼンマイケースごと
少し持ち上げることにします。
|

ゼンマイケースの下にスペーサ代わりの
ワッシャを入れ、高さを調整します。
|

両側のネジを締め込みます。
ケースの下に隙間が出来ています。
|

傘歯車同士がしっかり噛み合い、
ゼンマイの回転が伝わるはずですが・・
|

結果は失敗です。シリンダー側ギヤの中心に小さな突起があり
ゼンマイケースの側面に開いている穴に差し込まれる構造です。
これではケースの高さを調整したところで、シリンダーも一緒に
位置を返るため意味がありません。ギヤを修復(製作)するのは
ハードルが高く、素直に製造元に依頼するのがよろしいのか・・
|
|
|