「ミニコンポ」とBOSEが呼んでいたかどうかは分かりませんが、
かつて各社から一斉に販売されていた小型サイズのオーディオ
コンポーネントです。重厚長大指向が下火となり、限られた住居
スペースが省みられた結果でしょうか。CDプレーヤのCDA-8と
チューナー付きプリメインアンプRA-8をセットで修理します。
|
先にCDプレーヤのCDA-8を片付けます。トレイが
開閉しません、ほぼ駆動ベルトの劣化が原因です。
|
分解して部品交換により修理完了です。
何例か紹介しているので詳細は略します。
|
レシーバーRA-8はディスプレイの表示が暗いそう
です。FL管の寿命であれば修理不能となりますが。
|
電源を接続して
確認してみます。
|
「POWER/STANDBY」の
赤色LEDが点灯しています。
|
電源スイッチを押すとLEDが消灯し電源が入ります。
・・が、表示は暗いどころか何も表示されません。
|
これまでFL管表示の不具合は原則としてお断り
しています。同一部品はまず入手できません。
|
気乗りはしませんが、不具合を正確に
把握するため分解して調べます。
|
外装カバーを外すと内部の回路基板構成が分かります。
大きく上下に分かれた2枚の基板と放熱器、金属板で
シールドされた電源トランスが組み込まれています。
|
上側の基板を取り外します。
チューナーの回路基板です。
|
背面の端子パネルにも
ネジ固定されています。
|
長辺側に下の基板と信号接続
するためのコネクタがあります。
|
アンテナ端子やステーとの
干渉を避けながら持ち上げます。
|
下側のプリメインアンプ基板です。メインアンプはSANYO製
2チャンネルのパワーアンプモジュールが使用されています。
|
配線パターン側(裏側)にアクセス
するには基板を外す必要があります。
|
パワーアンプモジュールの放熱器が
少々変わった取り付けられ方をしています。
|
この意味不明な金具を外し、さらに
放熱器底部の固定ネジも緩めます。
|
前面の操作パネルも
干渉するようです。
|
音量のツマミを引き
抜いておきます。
|
その奥に制御基板を
固定するナットがあります。
|
左側に並ぶ小型の
ツマミも引き抜きます。
|
前面操作パネルは左右側面に加え
底面側にも固定ネジがあります。
|
前面操作パネルが内側の
制御基板ごと外れます。
|
FL管は制御基板と一体になっています。
数本の小さな固定ネジを全て緩めます。
|
樹脂製カバーと制御基板を分離します。
基板上にプロセッサが取り付けられています。
|
基板の表側(部品側)を確認します。
製品専用に製造されたFL管です。
|
製品の仕様に合わせて専用に設計・製造される部品なので
およそ汎用品が存在せず相応部品による代替が利きません。
ところで、FL管の動作原理については全く不勉強ですが、
双葉電子工業株式会社から提供されている極めて分かり
やすい解説資料を見つけました。資料によると正確には
VFD(Vaccume Fluorescent Display)と呼ぶそうです。
|
VFDは真空にしたガラス製容器内にフィラメント(カソード)、
グリッド、アノードを組み込んだ3極真空管に似た構造です。
アノード電極には表示に必要な蛍光体が塗り付けられます。
|
タングステン製フィラメントが印加電圧により600℃程度に
熱せられ、飛び出した熱電子はグリッド(金属製メッシュ)の
正電圧で加速されてアノードに衝突します。アノードの特定
部分に電圧がかかっていると、蛍光体が励起され発光します。
|
もしVFDガラス管内の損傷や真空の低下がなければ、
点灯不良はアノードの印加電圧が原因かも知れません。
|
フロントガラス越しに横方向に4本のフィラメントが
見えます。左端2本の外部リードが一方の端子です。
|
右端2本は他方のフィラメント端子です。フロントガラス直下に黒く
焦げたような錆びたような痕が見えますが、不具合や何かの劣化
ではありません。解説資料によるとゲッターと呼ばれるバリウムの
蒸着膜で、ガラス管内の残留ガスを吸着し真空を保つそうです。
|
左側のリードがプリント基板を貫通して
裏側のパターンに接続されています。
|
右側のリードもパターンに接続されます。
この左右2点間にアノード電圧がかかります。
|
通電状態で回路計を当ててみます。先ほどの「輝度-アノード・グリッド
電圧」の特性グラフによると、十分な視認性を得るには20~30Vp-pの
電圧が必要ですが・・、なるほど電圧がほとんど印加されていません。
電源系統に問題があるのであれば、修理できる可能性があります。
|
アノード電圧がどこから供給
されてくるのかを探ります。
|
右側リードからの配線
パターンを辿ります。
|
基板の最下端まで
降りてきました。
|
そこから横方向へ延びて
FFCソケットの端子に至ります。
|
同じように左端リード
からの配線も辿ります。
|
基板の左端から下端を通り
FFCソケットに回り込みます。
|
左右リードからの配線2本が、FFCソケットの
右端で上下2本のピンに接続されています。
|
基板表側に取り付けられた
ソケットからFFCに橋渡しされます。
|
FFCの先は途中まで取り外したプリメインアンプ基板です。
アノード電圧の供給元はこちらの基板上にあるようです。
|
基板の取り外し
作業を続けます。
|
正確にはAC電源コンセントを載せる
小さな基板がもう1枚あります。
|
メイン基板と干渉するので
いったん外します。
|
背面の端子パネルは完全に
外す必要があるようです。
|
RCA端子を固定するネジを
含め結構な本数になります。
|
ようやく背面パネルが分離します。ONKYOの
製品に造りが似ている気がするのですが。
|
電源トランスからの配線2本を
コネクタ部で抜き取ります。
|
本体後方にスライドさせて
基板を取り出します。
|
1999年にスピーカーも含めたセットAMS-1の
コンポーネントとして発売されています。パワー
アンプモジュールによる出力は30W×2です。
|
アノードからの配線の
追跡を続けます。
|
FFCソケットの右端、ピンセットで
示す上下2ピンに接続されています。
|
発熱したせいでしょう、少し黒く変色した部分の
周囲を回り、別のソケット端子に至ります。
|
部品側を確認すると電源トランスからの
配線が接続されているソケットです。
|
電源トランスから出る2本の
配線のうちこちらの1本です。
|
ならば電源トランスの出力を
確認します、カバーを外します。
|
金属製シールドカバーとは別に、電源
トランス本体もネジ固定されています。
|
脱着の容易な割と
単純な構造です。
|
電源トランスの巻き線を
取り出す接続基板です。
|
基板側のコネクタを接続し給電
できる状態で電源を入れます。
|
10本の巻き線が取り出されており、導通や抵抗値を
調べた結果、計4組のコイルが巻き付けられています。
うち2組は中間タップが引き出され、写真右端の3本は
別のコネクタで増幅用電力として送られます。左端の
3本がアノード電圧印加用に使用されています。
|
コイル両端に供給される
AC電圧を確認します。
|
AC4Vくらいです。意外と低い電圧
ですが、基板上で昇圧するのでしょう。
|
左端と中間タップで電圧を確認
します。半分のAC2Vです。
|
中間タップと右端でも確認
します。やはりAC2Vです。
|
電源トランスは問題ないようです。メイン
基板に戻り3本の配線を逆方向に辿ります。
|
両端の2本はそのままソケットへ至りますが
中間の1本を慎重に追いかけて行くと・・
|
電子部品が実装された
区域に入り込んでいます。
|
2か所目の半田ランドで
部品面を確認します。
|
1か所目も2か所目も電解コンデンサの端子です。
すぐ隣にトランジスタがあり、高圧を発生する発振
回路を構成しているようです。発熱を伴うようで
トランジスタや抵抗器の周囲が変色しています。
|
まず、トランジスタが破損し、
発振していない可能性があります。
|
使用されているのは2SA1283、
低周波電力増幅用の石です。
|
取り外して破損の有無を調べます。
配線側で半田を吸い取ります。
|
コレクタ-エミッタ間電圧-60V、コレクタ
電流-1Aの頼もしいトランジスタです。
|
デバイスチェッカーに
つなぎ良否を判定します。
|
結果は・・、問題ありません。当てが
外れました、TRが原因ではありません。
|
この辺りでようやくネット情報を調べると、多くの
場合で高圧回路のコンデンサ劣化が原因だと、
|
確かに、発振を伴う電源回路では電解
コンデンサの方が耐久性に欠けます。
|
何本も並ぶコンデンサの中から
適当に1本を外して調べます。
|
最初の1本目からいきなり
220uFのはずが23uF・・
|
新しい220uFに即交換します。
なけなしの在庫を投入します。
|
隣のもう1本の220uFも交換します。コンプリに
接続されて出力をスイングさせるのでしょう。
|
そのまた隣の100uFです。
これも十分に疑わしいところです。
|
が、予想に反して85uF。まぁまぁの
状態ですが、交換しておきます。
|
大元の大容量電解コンデンサも一応
調べておきます。煤が付いています。
|
やはり容量低下が進んで
おり、1640uF弱です。
|
同じ耐圧の3300uFは在庫がなく、
やや背の高いもので交換します。
|
電源を接続してみると、赤色LEDが点灯し
スタンバイ状態で・・表示が復活しています。
|
電源スイッチを入れると表示が切り替わり
操作に対応した情報が表示されます。
|
今ひとつ輝度が足りず安定しない印象ですが
少なくともVFD管が破損していないことは確かです。
|
安定した点灯状態を得るには、オシロスコープを使用してアノード
印加電圧や発振回路の中間波形を観測しさらに調整する必要が
あるでしょう。取りあえず、レシーバーの動作状態が分かるように
なっただけでも良かったと思います。と、ところが、実際に音声
信号を接続してみると、出力が全く出てきません。SANYO製の
パワーモジュールが破損しているのか、プリ段のどこかで信号が
途絶えているのか・・。どうも中古の基板を手に入れて交換して
しまった方が早いような気がしてきます。ですが今回はVFD管に
関して非常に良い勉強になりました。これまで諦めるしかなかった
修理の中で、今後は何とかなるものが出てくるかも知れません。
|
|
|