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シェーバー再復活(2022.8.5)


BRAUN製シェーバーを修理します。ご依頼主は同型を2・3台
お持ちのようで、これまで性能劣化したバッテリーの交換作業を
何度かお引き受けしています。新たに2台が不調となり、工房へ
送られてきました。ところが、そのうち1台は以前にバッテリーを
新品に交換済みのもので、劣化するにはいささか早過ぎます。
 

そうとは知らずに低品質のバッテリーを
利用していた可能性もありますけれど。

 

このシェーバーは本体外装に複雑な
嵌合がなく、割と分解が容易です。

 

本体中央とブレード近くの
ネジ計3本を緩めます。

 

内部に入り込んだ剃り髭がこぼれ出てきます。
あまり気持ちの良いものではありませんな・・。

 

本体カバーの片側を分離します。向こう側の
バッテリーは以前に工房で交換したものです。

 

電圧を確認すると正常です。そうすると
バッテリーではなくモーターの故障です。

 

モーター自体は固定されておらず
持ち上げると外れてきます。

 

実を言いますと、このシェーバーは前回の
バッテリー交換時にモーターも修理しています。
  

ブラシが組み込まれている側の軸受け
ブロック(樹脂製)を引き抜きます。
 

内側に銅合金(リン青銅)製のブラシが2本取り付け
られています。対極の位置から整流子を挟みます。

 

この薄いブラシは経年により
摩耗し擦り切れてしまいます。
 

こちら側のブラシは先に損傷し、前回の修理時に
黄銅板を当てて補修したものです。まだ大丈夫です。

 

他方のブラシが擦り切れて変形しています。前回は形が残っていたので
手を加えずそのままにしておきました。常識的に、小型モーターの微細な
ブラシなど、補修部品があれば交換することはあっても修復などしません。
普通はモーターごと交換するところでしょうが、シャフトの先端に特殊な
クランクプーリが圧入
されており、その移植に難儀しそうなのでおいそれと
交換などできないのです。もはや修理不能となるところ、ご依頼主の強い
ご希望があり、ダメモト前提での修復に取り組んでいるわけです。
 

もう一つ、先に修復したブラシは問題なく機能して
おり、ダメモトではないことを証明しています。
 

破損した他方のブラシを修復する意味が
あるということです。ブラシを取り出します。
 

ストッパーを引き抜くと、薄い銅合金製の
ブラシ部品が丸ごと外れてきます。
 

ブラシ部品の延長部分は、軸受け部品
から外部に出て電源の端子となります。
 

整流子に接触するブラシの先端部は
細く3分割された形状をしています。
 

元は3本とも先端の長さが揃っているのですが、この
通り擦り切れています。整流子に適切に接触しません。
 

先端部分の変形を修正し、小さく切り出した
黄銅片を補って新たな接触面を形成します。
 

研磨した表面に半田を
薄く乗せておきます。
 

ピンセットで挟んだまま熱を加え
瞬間的に半田接合します。
 

何とか、まぁまぁの位置に接触面が出来ました。
半田面の凹凸や黄銅片の歪みが残っています。
 

精密やすりを使い整流子接触面を整えます。かなり
乱暴な修理ですが、もしモーターが動作しなければ
あっさり諦めるだけです。そもそも無理な修理である
ことを、もちろんご依頼主にもお伝えしてあります。
 

修復したブラシを軸受け部品に組み込みます。2枚のブラシが
シャフトの中心を挟んで対極に位置するよう微調整します。
 

ここで、分解時の逆手順で軸受けを本体に戻すと、
折角修復したブラシが整流子に干渉し破損します。
 

そこで、クランクプーリ側の軸受けを解除する
ことで、本体片側の金属カバーを外します。

 

この状態にすれば、整流子の手前をかわしながらブラシを
セットできるので、破損させず正確に組み上げられます。
 

この段階で通電してみます。
モーターの回転が蘇ります

 

さすがに元の繊細なブラシに比べ、回転数や
パワーが少し低下しています。少しノイズも出ます。
 

でも、修理不能→廃棄とならずに済みます。
いずれはモーター交換も考えるべきでしょう

 

バッテリーはまだまだ十分に使用できます。しばらく充電すると
LEDがグリーンに変化して充電完了を知らせます。手の平に
納まる小型のシェーバーは、BRAUN以外にも数多く販売され
価格も手頃かと思います。往復の送料を負担しながら繰り返し
修理を希望されることに合理性があるのか、判断の難しいところ
ではあります。ですが、ご依頼主はこのシェーバーがとにかく
お気に入りで(剃り心地・・でしょうか)、手放せないそうです。
ご用命のある限り、打つ手のある限り、お応えして参ります。

 
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