BRAUN製シェーバーを修理します。ご依頼主は同型を2・3台
お持ちのようで、これまで性能劣化したバッテリーの交換作業を
何度かお引き受けしています。新たに2台が不調となり、工房へ
送られてきました。ところが、そのうち1台は以前にバッテリーを
新品に交換済みのもので、劣化するにはいささか早過ぎます。
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そうとは知らずに低品質のバッテリーを
利用していた可能性もありますけれど。
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このシェーバーは本体外装に複雑な
嵌合がなく、割と分解が容易です。
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本体中央とブレード近くの
ネジ計3本を緩めます。
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内部に入り込んだ剃り髭がこぼれ出てきます。
あまり気持ちの良いものではありませんな・・。
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本体カバーの片側を分離します。向こう側の
バッテリーは以前に工房で交換したものです。
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電圧を確認すると正常です。そうすると
バッテリーではなくモーターの故障です。
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モーター自体は固定されておらず
持ち上げると外れてきます。
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実を言いますと、このシェーバーは前回の
バッテリー交換時にモーターも修理しています。
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ブラシが組み込まれている側の軸受け
ブロック(樹脂製)を引き抜きます。
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内側に銅合金(リン青銅)製のブラシが2本取り付け
られています。対極の位置から整流子を挟みます。
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この薄いブラシは経年により
摩耗し擦り切れてしまいます。
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こちら側のブラシは先に損傷し、前回の修理時に
黄銅板を当てて補修したものです。まだ大丈夫です。
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他方のブラシが擦り切れて変形しています。前回は形が残っていたので
手を加えずそのままにしておきました。常識的に、小型モーターの微細な
ブラシなど、補修部品があれば交換することはあっても修復などしません。
普通はモーターごと交換するところでしょうが、シャフトの先端に特殊な
クランクプーリが圧入されており、その移植に難儀しそうなのでおいそれと
交換などできないのです。もはや修理不能となるところ、ご依頼主の強い
ご希望があり、ダメモト前提での修復に取り組んでいるわけです。
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もう一つ、先に修復したブラシは問題なく機能して
おり、ダメモトではないことを証明しています。
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破損した他方のブラシを修復する意味が
あるということです。ブラシを取り出します。
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ストッパーを引き抜くと、薄い銅合金製の
ブラシ部品が丸ごと外れてきます。
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ブラシ部品の延長部分は、軸受け部品
から外部に出て電源の端子となります。
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整流子に接触するブラシの先端部は
細く3分割された形状をしています。
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元は3本とも先端の長さが揃っているのですが、この
通り擦り切れています。整流子に適切に接触しません。
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先端部分の変形を修正し、小さく切り出した
黄銅片を補って新たな接触面を形成します。
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研磨した表面に半田を
薄く乗せておきます。
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ピンセットで挟んだまま熱を加え
瞬間的に半田接合します。
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何とか、まぁまぁの位置に接触面が出来ました。
半田面の凹凸や黄銅片の歪みが残っています。
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精密やすりを使い整流子接触面を整えます。かなり
乱暴な修理ですが、もしモーターが動作しなければ
あっさり諦めるだけです。そもそも無理な修理である
ことを、もちろんご依頼主にもお伝えしてあります。
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修復したブラシを軸受け部品に組み込みます。2枚のブラシが
シャフトの中心を挟んで対極に位置するよう微調整します。
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ここで、分解時の逆手順で軸受けを本体に戻すと、
折角修復したブラシが整流子に干渉し破損します。
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そこで、クランクプーリ側の軸受けを解除する
ことで、本体片側の金属カバーを外します。
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この状態にすれば、整流子の手前をかわしながらブラシを
セットできるので、破損させず正確に組み上げられます。
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この段階で通電してみます。
モーターの回転が蘇ります。
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さすがに元の繊細なブラシに比べ、回転数や
パワーが少し低下しています。少しノイズも出ます。
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でも、修理不能→廃棄とならずに済みます。
いずれはモーター交換も考えるべきでしょう。
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バッテリーはまだまだ十分に使用できます。しばらく充電すると
LEDがグリーンに変化して充電完了を知らせます。手の平に
納まる小型のシェーバーは、BRAUN以外にも数多く販売され
価格も手頃かと思います。往復の送料を負担しながら繰り返し
修理を希望されることに合理性があるのか、判断の難しいところ
ではあります。ですが、ご依頼主はこのシェーバーがとにかく
お気に入りで(剃り心地・・でしょうか)、手放せないそうです。
ご用命のある限り、打つ手のある限り、お応えして参ります。
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