守谷工房のリペア5へ                守谷工房Topへ

猛暑の岐阜で宅配ボックスに敗北す(2023.7.25)


岐阜県関市郊外にあるマンションの管理組合から
宅配ボックス修理の依頼をいただき、7月中旬から
続く猛暑の中、まず新幹線で名古屋へ向かいます。

 

名古屋駅で在来線に乗り換え
さらに岐阜へ向かいます。
 

久しぶりの岐阜駅です。現役の
頃、仕事できたことがあります。
 

駅構内の各所に暑さ対策の
ミスト散布装置が稼働しています。

 

駅の外に出ると強烈な陽射しに見舞われ
ます。ここからバスで関市へ向かいます。

 

マンションの最寄り停留所まで40分以上、
路線バスにこれだけ乗車したことはありません。
 

停留所からマンションは1km弱。炎天下で
ツールボックスを下げての徒歩は苦行です。
 

目的のマンションが見えてきました。あと300mくらい
ですが、一息入れようにも日影がまるでありません。

 

修理作業よりも現地までの移動に
大半の体力を消耗してしまいます。

 

ふらふらしながらエントランスに到着。
陽が入らないだけで天国の涼しさです。

 

管理人さんに案内され挑戦相手の前へ。外側の
エントランスを回り込んだスペースに宅配ボックスが
あります。かつてのナショナル(松下電工)製で、
ポストなしのMR型、優に20年を超える製品です。

 

手前郵便受けの奥に設置され、大4台と
中4台の計8台で構成されるボックスです。

 

修理作業に合わせ、利用を見合わ
せる掲示が張り出されています。

 

内側エントランスを中に進むと、ちょうど
反対が荷物の取り出し側になっています。

 

マンションの建設時に、ホールの壁面に大きな開口部を設け設置
されています。事前に伺っておりましたが製造元では完全に修理
不能、丸ごと新規入れ替えでしか対応しないそうです。当然莫大な
費用がかかることになり、管理組合の皆さんは頭を抱えています。

 

故障したボックスは表示器にエラーが出ます。主に
E-08、稀にE-05が表示されるそうですが、

 

実際に確認するとE-06が
表示されているものもあります

 

製品の取扱説明書でエラーの内容を調べます。E-05、
E-06、E-08のいずれも電気錠の動作不良を示して
います。制御回路から解錠・施錠信号送られても電気錠が
動作しないということは、電気錠の動作機構に問題がある、
あるいは動作後に検知がされていないと解釈することが
できます。動作機構は何らかのアクチュエータ、検知には
おそらくマイクロスイッチあたりが使われているでしょう。

 

全8ボックスのうち4台故障とお聞きして
いましたが、実際には5台が故障です。

 

ボックスのドアを開け、ロックユニットが組み
込まれていると思われるカバーを外します。

 

ドアキャッチの後方にユニットが収まって
いるようです。配線の引き出しが見えます。

 

ドアキャッチの上下を固定
しているネジを緩めます。

 

ロックユニットを引き出します。ほぼ同様の
ユニットが、表の配達側にも組み込まれています。

 

ユニットの後方に制御回路からの
配線が引き込まれています。

 

引き出したロックユニットの
上カバーを開けます。

 

ユニット自体は機械的に構成された
機構で電子部品は含まれていません。

 

修理としてできること(すべきこと)は、機構各部品の動作状態の
確認です。可動部に固着がないか、逆に固定部に緩みがないか
です。ソレノイドプランジャーの固着が少なくありません。それと
2個使われているマイクロスイッチに、接触不良がないかです。

 

機構部品への潤滑処理、およびマイクロスイッチの接点回復に
より、中サイズ2台の故障が解消しエラー表示が出ていません。

 

日が暮れてしまいエントランス内での作業が
難しくなったため、作業を中断し宿に向かいます。

 

しかし、土地勘がなくタクシーも掴まらないので
暗闇と猛暑の中、宿まで徒歩で移動することに・・

 

翌日、残りを片付けるべくタクシーで
マンションに向かいます。しかし、

 

昨日と同様のロックユニット内の修理では機能が
回復しません。制御基板も取り出して点検します。

 

途方もない時間をかけて信号を追いかけますが、工房を遠く
離れた現場では装備が足りません。ようやく判明したことは、
いくつかのユニットで施錠・解錠信号が出ているのに機構が
作動しない・・原因はソレノイドの断線でした。交換部品を
調達するには少なくとも名古屋まで戻らなければならず、
仮にパーツショップが見つかったとしても適合する部品が
入手できるか分かりません・・、完全にタイムアウトです。
 

日が暮れかかり作業が難しくなる頃、故障していた大サイズ
2台のうち1台が回復。しかし、昨日修理した中サイズの1台に
再びエラー(E-02)が表示され、気が付くと新たに1台に
E-05のエラー表示が・・・結果は最悪であり敗北です。

一縷の望みを託し、管理組合の皆様の一縷の望みを背負い、
猛暑の中を2日間を戦いましたが・・、引き際も肝心です。
後日、ご依頼主には以下の作業報告を添えてお詫び状を
お送りしました。作業報告と本記事の内容に齟齬があるかも
知れませんが、記憶違いによるものですのでご容赦下さい。

 

 
1.ボックス8台の作業開始前現状について、○○開発○○様より A・C・Gの3台が動作とお聞きしましたが、実際にはA・GのみでCはエラーが出て動作不良でした。

2.ひと通り点検したところ、E・Fの2台は受け取り側のドアが何としても開かず、そもそも修理の対象とすることができませんでした。

3.B・C・D・Hの4台についてエラーコードから推測される施錠機構の不具合を徹底的に調整した結果、CとHの2台が動作を 回復しました。Bは以前に施錠ユニットに手が入れられた形跡があり、ユニット内のロック部品が付いていませんでした。

4.ボックス容量の小さいDからロック部品を取り出しBに組み込んでみましたが、それでも正常動作には至りませんでした。

5.Dの施錠ユニットを詳しく調べたところ、施錠・解錠用のアクチュエータ(ソレノイド:電磁石)が動作していないことが分かりました。コイルが断線しているようで導通がなく、よく見ると部品の表面が焼け焦げていました。長い期間中途半端な動作が続いたことで、過電流により損傷したものと考えられます。

6.ドアを開けることのできないE・Fも、アクチュエータの損傷が考えられます。またBについてもアクチュエータの動作不良が考えられます。

7.この時点でA・C・G・Hが動作するようになりましたが、今後に備えてさらに調整を加えていたところ、突然Gが作動しなく なりました。E・Fと同じ状況で、ドアを開けることができなくなり、新たにアクチュエータが損傷した可能性があります。

8.アクチュエータは汎用部品により代替可能ですので、B・E・ F・Gは部品交換により修復できる可能性があります。ロック部品を流用してしまったDも、同等部品を自製することで修理可能です。

9.ドアの開かないE・F・Gも、いくつかの工具を用意すれば開けることができます。残念ながら今回持参した工具セットでは対応できませんでした。

10.アクチュエータ、ロック部品とも用意することは可能で、今後再修理の機会があれば回復できるかも知れません。しかし、貴マンションまで数往復するか、施錠ユニットおよび関連部品を 取り外して工房に運び込む等の必要があり現実的とは言えません。
 

守谷工房のリペア5へ                守谷工房Topへ