Topics25のスタート時に、カフェに据え置く年代物ステレオセットについて
簡単に紹介しました。元はと言えばある女性の持ち物で、この方はカフェの
常連のお客さんです。学生時代に購入され長い年月保管されていたものを、
カフェのお客さんたちがレコードを楽しむために寄贈されたそうです。レコード
プレーヤのゴムベルトが傷んでおり、新品に交換して差し上げたのですが
その後、レコードの回転がおかしいとの連絡があり、取りあえずカフェまで
出向くことに。守谷から都内までは往復するだけで半日、ひと仕事です。
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ベルト交換を終えた時点では
問題なく動作していたのですが。
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いくつか基本的な点検事項を
確認し、潰していきます。
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ピックアップの信号端子です。修理時に
接触不良があり、接点を回復させました。
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念のためもう一度
クリーニングします。
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問題なく再生できます。回転が
遅くなるような気配はありません。
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カフェのオーナーや複数のお客さんが確認
しているので、間違いないのでしょうけれど。
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現場でできる作業は限られますが、
駆動系を確認してみます。
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以前に交換したゴムベルトです。新しいままの
状態で、キャプスタンに正確に当たっています。
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電源を入れて回転させてみるも、
安定しています。全く正常です。
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修理時に固着していたターンテーブルの
シャフトです。再度注油しておきます。
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回転数を変えるため、ゴムベルトがキャプスタンに当たる
位置を上下させるアームです。既に調整済みですが。
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回転数切り替えレバーに連動して
正しく作動します。問題ありません。
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そうすると、本体内部に組み込まれているモーターが怪しくなります。
40年は経過しているので、機械部品であるモーターが劣化してない
はずはありません。もちろん前回修理時にはオーバーホールに近い
整備を行っており、納品時まで全く正常に回転していたものです。
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カフェ内でお客さん用のテーブルを借り
プレーヤーの底板を取り外します。
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ターンテーブル駆動用、昔懐かしい
隈取りモーター(2コイル、4極)です。
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ゴム製ダンパーを介し3か所で
ネジ固定されています。
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外観的には何も問題なさそうで、この単純なモーターの
回転が何故不安定になるのか、見当が付きません。
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強いて言えば、キャプスタン軸側の軸受けが心配です。メタル製の
すべり球面軸受けが組み込まれています。オイルレスメタルのはず
ですが、修理前は腐食により頑強に固着していました。十分に清掃
してから、オイルが切れないようハウジングの隙間にスポンジ片を
差し込み、機械油を浸み込ませておいたものです。再度オイルを
追加するくらいしか、この場(カフェ内)で打つ手はありません。
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以下、工房での再修理の様子ですが、作業終了後に撮影
しているため作業の経緯となりませんことをご了解下さい。
写真に背景が写り込んでいるように、ここは工房内です。カフェへ
応急修理に伺ったのが5月初め、それから半月もしないうちに
連絡が入り、やはり調子が悪いとのことです。プレーヤーを工房
まで宅配で送るとおっしゃるも、配送中に破損する心配があり、
そのうち引き取りに出向くつもりでいました。しばらく間が空いた
6月下旬、セットの元持ち主とカフェのオーナーが何と工房まで
運んできて下さることになりました。プレーヤーの修理が目的
ですが、理由があってステレオセット一式を運んでもらいました。
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あらためてプレーヤーの型番を確認します。背面には
電源コード、RCAジャック、アース端子が出ています。
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TRIO製SS-72Xとありますが、ステレオセットに
組み込まれていたコンポーネントのようです。
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ターンテーブルを外し、トーンアームを
固定してから本体をひっくり返します。
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オーバーホールでも性能が安定しない旧式の
隈取りモーターを、新しいモーターに交換します。
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元々取り付けられていた隈取りモーターです。
軸受けの劣化・ガタはもはや修復不能です。
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安定した回転と正確な回転数で、かつては
レコードプレーヤー用に広く使われたものです。
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長年にわたる金属の摩耗や腐食の
進行は、どうしても防ぎ切れません。
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代わりに取り付けた、今どきのオーディオ機器用DC
モーターです。取付用ステーを専用に設計しました。
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元の隈取りモーターのジオメトリから新しいモーターの
取付位置を割り出し、ネジ穴を含むステー形状を設計し
アクリル材から切り出しました。CADが活躍します。
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この類のDCモーターは簡単に入手できます。規定電圧当たりの
回転数(rpm)は似たり寄ったりで、印加電圧の調整により一定
範囲内で変化させられます。問題はターンテーブルの径に対して
適切なキャプスタン径を選ぶ必要があり、制御回路の設計と合わ
せて製品を選ばなければなりません。4mm径が適合します。
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キャプスタンの位置を機械的に変える機構に代わり、
モーターを電気的に制御する回路を組み込みます。
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DCモーターを駆動するため専用の電源回路(DC12V)を
組み込み、本体に引き込まれているAC100Vに接続します。
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トーンアームの回転軸でマイクロスイッチを
ON・OFFさせ、モーターの電源を制御します。
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マイクロスイッチから電源回路まで
スイッチ配線を引き回します。
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製品に付属するモーター回転数の制御回路です。ターンテーブル径が
想定されていないので、このままでは使用できません。標準でほぼ33・
45回転となるよう、それぞれの回路に抵抗器を挿入します。また33・45
回転とも可変抵抗器を併用することで、回転数を微調整できるようにします。
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ゴムベルトがキャプスタンに当る位置を変更する
レバー連動部品は不要となります・・取り去ります。
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代わって、レバーの回転軸でマイクロスイッチを
ON・OFFさせ33・45回転を切り替えます。
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回転数微調整用の可変
抵抗器を取り付けます。
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可変抵抗器のシャフトを本体の外に出し
それぞれに色の違うツマミを取り付けます。
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ターンテーブルの回転で動作するオートリターン
機構はそのまま利用します。再度、動作を確認します。
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ターンテーブルの内側にゴムベルトをセットします。
ターンテーブル径とはこの部分の外径を指します。
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ターンテーブルを元に戻します。当時としては
重量のある高性能プレーヤーだったようです。
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DCモーターのキャプスタンにゴムベルトを
掛けます。元のベルト長で丁度良く適合します。
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回転数調整のためネットからストロボシートをダウン
ロードし、プリンタで印刷し切り抜いて作成しました。
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33.3または45回転に合わせて
可変抵抗器のツマミを調整します。
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外側から2番目のスリットに同期し、
50Hz、45回転に合っています。
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50Hz、33.3回転に合っています。ストロボシートは
点滅する照明器具でしか使用できず、LEDではだめです。
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ブラシレスのDCモーターが簡単に故障することはまぁないでしょう。
仮に調子が悪くなっても交換は簡単で費用も大してかかりません。
レコードプレーヤーがほぼ完全に復活した(生まれ変わった)わけ
ですが、先ほどの「ステレオセット一式を運んでもらった」理由とは、
「どうせなら非力なレシーバ(アンプ)もスピーカーも何とかしたい」
ということなのです。実は元の所有者もカフェのオーナーも既に
了解済みで、全てお任せするとのお話しをいただいております。
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