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水拭きお掃除ロボット(2025.8.10)

 

iRobot社はMITの研究者が1990年米国マサチューセッツ州で
創設した世界的企業で、お掃除ロボットルンバ(Roomba)は
あまりに有名です。同社WEBで最近の製品紹介を確認すると、
「お手入れの手間なく毎日清潔に」、「広さも複雑な間取りも
任せて安心」あたりはまだしも、「最高レベルの掃除機がけ
性能」、「徹底的な清潔感を実現」などただならぬ様相を呈して
います。修理依頼があったのは、水拭き掃除をやってのける
ブラーバ(Braava)です。以前から知り及んではいましたが、
ロボットが雑巾がけを・・?、マジ?、でしかありません。

 

「ブラーバ」はブラボーから来ているそうです。ついでに
「ルンバ」はルームと音楽のルンバの造語だそうです。

 

本当に水拭きなんかできるのか、どのような
仕掛けで・・、興味の向くままに点検を進めます。

 

不具合の状況は、「水拭きしなくなった」
だそうです。お返しする言葉がありません。

 

水タンクを外し本体を裏返すと、水拭き
パッドつまり雑巾がセットされています。

  

その雑巾は簡単に脱着できます。
吸着性の良さそうなフェルト地でしょうか。
 

私のとって、拭いて濯いで絞って拭いて・・が雑巾がけの
イメージですが、このパッド1枚で大丈夫なんでしょうか。
 

そこはMIT研究者の設計を信ずると
して、本体の分解作業に進みます。
 

水拭きパッドに隠れていた底面
中央部にカバーがあります。
 

周囲の固定ネジを緩めると
このカバーが外れます。

 

本体後方にあるネジ
2本も緩めます。

 

内蔵バッテリーを
固定しています。

 

iRobotのロゴが入ったリチウム
イオンバッテリー、純正品です。

 

さらに底面の固定ネジを緩めます。
左右タイヤのすぐ内側に1本ずつ、

 

底面後方中央付近も
2本で固定されています。
  

左側タイヤの
後方に1本、

 

右側タイヤの後方に、先ほどの内蔵
バッテリー固定ネジとは別に1本、

 

底面カバーを外した内側
にも固定ネジがあります。

 

ひたすらネジを緩めて行きます。
実に厳重に固定されたる構造です。

 

最後に、奥まった溝内の
1本を緩めると、ようやく・・

 

表側の外装カバーが
丸ごと分離してきます。

 

水拭きをするお掃除ロボットがその内部を現します。
ですが、ビニルコードが這い回り昭和のラジカセを
思わせる光景です。本当にMITの設計なんでしょうか。

 

ルンバ現行機種の多くが、掃除機がけと拭き掃除の
両機能を搭載しているのに対し、ブラーバは拭き掃除
専用機です。掃除機がけつまり集塵機能がないので、
基本的な走行機構に水拭き用のミスト噴霧機能が
備わっているだけです。結果、内部は意外と閑散と
しています・・が、ビニル線何とかならんのでしょうが。

 

タンクからミスト用の水を受ける接続口です。
給水チューブが左方向に延びています。

 

給水チューブの先には、水を圧送して
ミストを作るためのポンプがあります。

 

ポンプにより圧力を高められた水が、色違いの
チューブ(耐圧性のゴム管)を通りノズルへ向かいます。

 

本体前面のバンパー中央部の穴から、
ミストの噴射口(ノズル)が見えています。

 

噴射ノズルにアクセスするには
バンパーを取り外す必要があります。
 

バンパーの周囲4か所で
ネジ固定されています。
 

噴射ノズルおよびそのマウント部品は、
バンパーの内側に組み込まれています。

 

各種センサーやそれらの配線に
囲まれる中にノズルがあります。

 

グリルに囲まれ少し奥まった面に
横方向のスリットが開いています。

 

ノズルはアセンブリごと外に
引き出すことができます。
 

引き出したノズルを詳しく観察しますが、外観
から不具合を判断することはできないようです。

 

マウントの固定もネジ1本です。
ノズルの良否は後でテストします。

 

ミストが出ない原因を探るため、
ポンプも取り外して調べてみます。

 

見た目を言えば、子供用玩具に組み込まれて
いるような簡単な装置でしかありません。

 

モーターも模型用の汎用品のようです。
すぐ横の固定ネジをもう1本緩めます。

 

ポンプユニットを取り出します。給水側・
吐水側ともチューブが付いたままです。

 

引き出したところで、先にモーターに通電して
回転の具合を確かめます。問題ありません。

 

ギヤで回転数を落とし(トルクを上げ)、反対側に
取り付けられた2個のローラーを低速で回します。

 

ローラーはバネで外周方向に押さえ付けられ、
回転しながら水が通るチューブを押し潰します。
 

ローラーがチューブをしごくことで、内部の
水が加圧されながら移動していきます。

 

給水タンク、チューブ、ポンプ、ノズルを
取り出し、水とが出ない原因を調べます。

 

給水タンクに接続口を嵌め込みます。タンク内
へのエア取り込みが十分ではないようです。

 

モーターに通電し、ポンプの動作や
チューブ内の通水を確認します。

 

ポンプから水が圧送されていますが、
ノズルのスリットから水滴が落ちるだけです。

 

高圧エアをスリットに吹き付けると、詰まりが
解消されるのか一時的に水が噴射されます。

 

ですが、間もなく元の水滴しか
出ない状態に戻ってしまいます。

 

ノズルは消耗品のようで、かつてはiRobot
から定期交換部品が出ていたようです。

 

ノズルを新しく交換するしかないようで、
前面バンパーを除き本体を組み戻します。

 

純正部品の供給は既に終了しており、
代わりに相当品がアマゾンで販売されています。

 

樹脂の色合いからして怪しい雰囲気です。
よく見るとスリットのデザインが異なっています。

 

アマゾンのレビューではまぁまぁの評価なので、
また他に選択肢がないのでこの製品を試します。

 

マウントを取り付けチューブを差し込んで
バンパー奥の開口部にセットします。

 

結果は、何とかミスト・・というより、玩具の水鉄砲
から出る弱々しい水噴射・・のような感じです。

 

水を噴射し前方の床を濡らしてから底面のパッドが
往復して拭き取る、確かに水拭きしてます・・・。

 

小型とはいえ、ローラーポンプの生成圧力はなかなかの
もので、チューブ端を指先で塞ぎ切れるものではありません。
そうすると不具合の原因はノズルのスリットにあるようで、
純正部品の精密に加工されたスリットが不可欠のようです。

 

今ひとつの修理結果ですが、ご依頼主に実際の動作を
ご覧いただいたところ、元々この程度だったということです。
水が出て拭き掃除ができるようになっているので十分と
納得して下さいました。本当にMITレベルの設計ですか?

 
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