に
iRobot社はMITの研究者が1990年米国マサチューセッツ州で
創設した世界的企業で、お掃除ロボットルンバ(Roomba)は
あまりに有名です。同社WEBで最近の製品紹介を確認すると、
「お手入れの手間なく毎日清潔に」、「広さも複雑な間取りも
任せて安心」あたりはまだしも、「最高レベルの掃除機がけ
性能」、「徹底的な清潔感を実現」などただならぬ様相を呈して
います。修理依頼があったのは、水拭き掃除をやってのける
ブラーバ(Braava)です。以前から知り及んではいましたが、
ロボットが雑巾がけを・・?、マジ?、でしかありません。
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「ブラーバ」はブラボーから来ているそうです。ついでに
「ルンバ」はルームと音楽のルンバの造語だそうです。
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本当に水拭きなんかできるのか、どのような
仕掛けで・・、興味の向くままに点検を進めます。
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不具合の状況は、「水拭きしなくなった」
だそうです。お返しする言葉がありません。
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水タンクを外し本体を裏返すと、水拭き
パッドつまり雑巾がセットされています。
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その雑巾は簡単に脱着できます。
吸着性の良さそうなフェルト地でしょうか。
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私のとって、拭いて濯いで絞って拭いて・・が雑巾がけの
イメージですが、このパッド1枚で大丈夫なんでしょうか。
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そこはMIT研究者の設計を信ずると
して、本体の分解作業に進みます。
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水拭きパッドに隠れていた底面
中央部にカバーがあります。
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周囲の固定ネジを緩めると
このカバーが外れます。
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本体後方にあるネジ
2本も緩めます。
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内蔵バッテリーを
固定しています。
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iRobotのロゴが入ったリチウム
イオンバッテリー、純正品です。
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さらに底面の固定ネジを緩めます。
左右タイヤのすぐ内側に1本ずつ、
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底面後方中央付近も
2本で固定されています。
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左側タイヤの
後方に1本、
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右側タイヤの後方に、先ほどの内蔵
バッテリー固定ネジとは別に1本、
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底面カバーを外した内側
にも固定ネジがあります。
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ひたすらネジを緩めて行きます。
実に厳重に固定されたる構造です。
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最後に、奥まった溝内の
1本を緩めると、ようやく・・
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表側の外装カバーが
丸ごと分離してきます。
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水拭きをするお掃除ロボットがその内部を現します。
ですが、ビニルコードが這い回り昭和のラジカセを
思わせる光景です。本当にMITの設計なんでしょうか。
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ルンバ現行機種の多くが、掃除機がけと拭き掃除の
両機能を搭載しているのに対し、ブラーバは拭き掃除
専用機です。掃除機がけつまり集塵機能がないので、
基本的な走行機構に水拭き用のミスト噴霧機能が
備わっているだけです。結果、内部は意外と閑散と
しています・・が、ビニル線何とかならんのでしょうが。
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タンクからミスト用の水を受ける接続口です。
給水チューブが左方向に延びています。
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給水チューブの先には、水を圧送して
ミストを作るためのポンプがあります。
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ポンプにより圧力を高められた水が、色違いの
チューブ(耐圧性のゴム管)を通りノズルへ向かいます。
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本体前面のバンパー中央部の穴から、
ミストの噴射口(ノズル)が見えています。
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噴射ノズルにアクセスするには
バンパーを取り外す必要があります。
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バンパーの周囲4か所で
ネジ固定されています。
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噴射ノズルおよびそのマウント部品は、
バンパーの内側に組み込まれています。
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各種センサーやそれらの配線に
囲まれる中にノズルがあります。
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グリルに囲まれ少し奥まった面に
横方向のスリットが開いています。
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ノズルはアセンブリごと外に
引き出すことができます。
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引き出したノズルを詳しく観察しますが、外観
から不具合を判断することはできないようです。
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マウントの固定もネジ1本です。
ノズルの良否は後でテストします。
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ミストが出ない原因を探るため、
ポンプも取り外して調べてみます。
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見た目を言えば、子供用玩具に組み込まれて
いるような簡単な装置でしかありません。
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モーターも模型用の汎用品のようです。
すぐ横の固定ネジをもう1本緩めます。
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ポンプユニットを取り出します。給水側・
吐水側ともチューブが付いたままです。
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引き出したところで、先にモーターに通電して
回転の具合を確かめます。問題ありません。
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ギヤで回転数を落とし(トルクを上げ)、反対側に
取り付けられた2個のローラーを低速で回します。
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ローラーはバネで外周方向に押さえ付けられ、
回転しながら水が通るチューブを押し潰します。
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ローラーがチューブをしごくことで、内部の
水が加圧されながら移動していきます。
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給水タンク、チューブ、ポンプ、ノズルを
取り出し、水とが出ない原因を調べます。
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給水タンクに接続口を嵌め込みます。タンク内
へのエア取り込みが十分ではないようです。
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モーターに通電し、ポンプの動作や
チューブ内の通水を確認します。
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ポンプから水が圧送されていますが、
ノズルのスリットから水滴が落ちるだけです。
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高圧エアをスリットに吹き付けると、詰まりが
解消されるのか一時的に水が噴射されます。
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ですが、間もなく元の水滴しか
出ない状態に戻ってしまいます。
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ノズルは消耗品のようで、かつてはiRobot
から定期交換部品が出ていたようです。
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ノズルを新しく交換するしかないようで、
前面バンパーを除き本体を組み戻します。
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純正部品の供給は既に終了しており、
代わりに相当品がアマゾンで販売されています。
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樹脂の色合いからして怪しい雰囲気です。
よく見るとスリットのデザインが異なっています。
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アマゾンのレビューではまぁまぁの評価なので、
また他に選択肢がないのでこの製品を試します。
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マウントを取り付けチューブを差し込んで
バンパー奥の開口部にセットします。
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結果は、何とかミスト・・というより、玩具の水鉄砲
から出る弱々しい水噴射・・のような感じです。
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水を噴射し前方の床を濡らしてから底面のパッドが
往復して拭き取る、確かに水拭きしてます・・・。
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小型とはいえ、ローラーポンプの生成圧力はなかなかの
もので、チューブ端を指先で塞ぎ切れるものではありません。
そうすると不具合の原因はノズルのスリットにあるようで、
純正部品の精密に加工されたスリットが不可欠のようです。
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今ひとつの修理結果ですが、ご依頼主に実際の動作を
ご覧いただいたところ、元々この程度だったということです。
水が出て拭き掃除ができるようになっているので十分と
納得して下さいました。本当にMITレベルの設計ですか?
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