足立区内で長年ご夫婦が営んでおられる美容室です。
シャンプー椅子が故障して久しく、何とか修理できないか
お問合せをいただきました。補修部品が無いことを理由に
製造元は頑なに修理を拒み、新品への入れ替えを勧めて
きます。特殊な専用機器とはいえ目が飛び出る値段です。
1年前にも同じ足立区内で美容室椅子を修理しています。
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油圧により座板の高さ、背もたれの
角度を自在に変更することができます。
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座面から背もたれ手前までクッションが敷かれ、
左右のフレームにフックで吊られています。
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やっとの思いでクッションを外し終わる頃、
ようやく不具合の状況が飲み込めてきます。
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座板の昇降は何とか動作するけれど、
背もたれが全く動かないそうです。
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美容室には車椅子で見えるお客さんがおられ、
シャンプー椅子の油圧が機能しないと、つまり
各部が油圧で作動しないとお客さんへの対応が
大変になるそうです。初めて扱う機械なのでとても
現地では対応し切れず、大まかに分解して車に
積み込み工房へ運び込みます。大変な重量です。
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既に足元を覆う樹脂製のカバーも取り外してあります。
上半分を覆うカバーは美容室で預かってもらっています。
本格的な油圧機器は初めてですが、モーター駆動の油圧
ポンプ、油圧オイルを蓄えるリザーバタンク、油圧を運動に
変換するシリンダ、各部を接続するチューブ、それらを制御
する電気回路から構成される程度は、観察で分かります。
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取り外した座板と背もたれです。左右の
回転軸部分で連結された構造です。
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リザーバタンクはかなりの
容量があります・・が、
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オイルの液面を確認すると
ほとんど底を突いています。
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この金属製ボックス内に制御を担う
電気回路が収められています。
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金属ボックスから幾重ものケーブルが取り出され、
コネクタ部はビニル袋で厳重に保護されています。
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背もたれを支えるステーの間に、角度を変える
シリンダがあります。なかなか強力そうです。
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背もたれのシリンダーは念入りに点検する
必要があります。手探りで分解を進めます。
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何があったのか周囲は油まみれです。
リザーバタンクの配管を抜いておきます。
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シリンダへオイルが流入(圧入)する側のコネクタと
チューブです。見かけない部品が使われています。
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シリンダーは座板を支える頑丈な金属アームに
固定され、このままではアクセスできません。
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シリンダのヘッド部を固定する鋼鉄製のピンを抜き
ます。高精度に加工されているので分解が楽です。
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これでシリンダが抜けてくるはずです。大きな力が
加わる構造なので、時間をかけて慎重に進めます。
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途中までシリンダを引き抜くとドレン(排出)側のコネクタと
チューブが現れます。低圧用の部品が使われています。
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ドレン側チューブの途中からシリンダ内の
オイルを抜いておきます、既に油まみれですが。
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部品の構造や取り付け方は、水道や
エア関係の器材に似ています。
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このシリンダ内にオイルが出入りし、油圧に
より伸び縮みして背もたれの角度を変えます。
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シリンダが固定されていたアームは、もう
1本のシリンダに連結され高さが変化します。
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これまで油圧機器やその部品をまともに扱った経験が
ありません。このシリンダにトラブルがないことを祈ります。
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ドレン側のビニル製チューブは、
各所で破れたり折れたりしています。
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電磁バルブ側の接続部近くでも、
この通り簡単に折れてしまいます。
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これだけ破れていれば油圧オイルは当然漏れ
放題で、タンク内のリザーブも底を突くはずです。
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もしビニルチューブの劣化だけが原因であれば、
交換によりシャンプー椅子を復活できるかもしれません。
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取り除いたドレン側ビニルチューブはこの通りです。
力を加えるとどこからでも折れてくる始末です。実は
最初に美容室で点検した時点で、ビニルチューブの
破れとそれに伴うオイル漏れに気づいていました。
修理できそうな一縷の望みがあり、お預かりしてきた
ようなものです(11月中頃)。年末にかけて美容室は
書き入れ時で、何とか年内にお返ししたいものです。
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さらに分解を続けます。サイドのパネルには
高さや傾きを調整するツマミが並びます。
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足元に組み込まれているボックス内の
電気回路にケーブルで接続されています。
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電気信号によりソレノイドが駆動し、オイルの
循環を制御する電磁バルブのブロックです。
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いい加減、各部品の製造元や仕様が分かりそうな
ものですが、検索しても何故か情報が見つかりません。
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電気モーターを内蔵する油圧ポンプです。
こちらもトラブルがないことを祈ります。
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切りなく流れ出てくる油と戦いながら、油圧ポンプも
取り外してみます。油圧の経路を知る必要があります。
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「油圧ポンプ」に直接触るのも初めてです。スイッチを入れた時、
モーター音が聞こえていたので多分生きていると思いますが。
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油まみれになりながらも、ようやく
システム全体の構成が見えてきました。
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もうひと系統、椅子の高さを上下させるシリンダ
です。背もたれ用よりも太く強力な感じがします。
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長期間に渡り漏れ続けた大量の油が、
ゴミや埃と混じり台座面に広がっています。
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それら汚れを少しずつ取り除いていくと、不思議なもので
綺麗になるほど構造が見えてきます。油圧チューブを交換・
整備してみて、果たして本来の動作・機能が戻るかどうか。
シリンダ、油圧ポンプ、電磁弁、制御回路・・、どれも初めて
手がける油圧機器の世界に、既に足を踏み入れています。
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