守谷工房のリペア6へ   守谷工房Topへ

シャンプー椅子を年末までに-1(2025.1.8)


足立区内で長年ご夫婦が営んでおられる美容室です。
シャンプー椅子が故障して久しく、何とか修理できないか
お問合せをいただきました。補修部品が無いことを理由に
製造元は頑なに修理を拒み、新品への入れ替えを勧めて
きます。特殊な専用機器とはいえ目が飛び出る値段です。
1年前にも同じ足立区内で美容室椅子を修理しています。

 

油圧により座板の高さ、背もたれの
角度を自在に変更することができます。
 

座面から背もたれ手前までクッションが敷かれ、
左右のフレームにフックで吊られています。
 

やっとの思いでクッションを外し終わる頃、
ようやく不具合の状況が飲み込めてきます。

 

座板の昇降は何とか動作するけれど、
背もたれが全く動かないそうです。

 

美容室には車椅子で見えるお客さんがおられ、
シャンプー椅子の油圧が機能しないと、つまり
各部が油圧で作動しないとお客さんへの対応が
大変になるそうです。初めて扱う機械なのでとても
現地では対応し切れず、大まかに分解して車に
積み込み工房へ運び込みます。大変な重量です。

 

既に足元を覆う樹脂製のカバーも取り外してあります。
上半分を覆うカバーは美容室で預かってもらっています。
本格的な油圧機器は初めてですが、モーター駆動の油圧
ポンプ、油圧オイルを蓄えるリザーバタンク、油圧を運動に
変換するシリンダ、各部を接続するチューブ、それらを制御
する電気回路から構成される程度は、観察で分かります。

 

取り外した座板と背もたれです。左右の
回転軸部分で連結された構造です。

 

リザーバタンクはかなりの
容量があります・・が、

 

オイルの液面を確認すると
ほとんど底を突いています。

 

この金属製ボックス内に制御を担う
電気回路が収められています。

  

金属ボックスから幾重ものケーブルが取り出され、
コネクタ部はビニル袋で厳重に保護されています。

 

背もたれを支えるステーの間に、角度を変える
シリンダがあります。なかなか強力そうです。
 

背もたれのシリンダーは念入りに点検する
必要があります。手探りで分解を進めます。
 

何があったのか周囲は油まみれです。
リザーバタンクの配管を抜いておきます。
 

シリンダへオイルが流入(圧入)する側のコネクタと
チューブです。見かけない部品が使われています。

 

シリンダーは座板を支える頑丈な金属アームに
固定され、このままではアクセスできません。

 

シリンダのヘッド部を固定する鋼鉄製のピンを抜き
ます。高精度に加工されているので分解が楽です。

 

これでシリンダが抜けてくるはずです。大きな力が
加わる構造なので、時間をかけて慎重に進めます。

 

途中までシリンダを引き抜くとドレン(排出)側のコネクタと
チューブが現れます。低圧用の部品が使われています。

 

ドレン側チューブの途中からシリンダ内の
オイルを抜いておきます、既に油まみれですが。
 

部品の構造や取り付け方は、水道や
エア関係の器材に似ています。

 

このシリンダ内にオイルが出入りし、油圧に
より伸び縮みして背もたれの角度を変えます。
 

シリンダが固定されていたアームは、もう
1本のシリンダに連結され高さが変化します。

 

これまで油圧機器やその部品をまともに扱った経験が
ありません。このシリンダにトラブルがないことを祈ります。

 

ドレン側のビニル製チューブは、
各所で破れたり折れたりしています。

 

電磁バルブ側の接続部近くでも、
この通り簡単に折れてしまいます。

 

これだけ破れていれば油圧オイルは当然漏れ
放題で、タンク内のリザーブも底を突くはずです。

 

もしビニルチューブの劣化だけが原因であれば、
交換によりシャンプー椅子を復活できるかもしれません。

 

取り除いたドレン側ビニルチューブはこの通りです。
力を加えるとどこからでも折れてくる始末です。実は
最初に美容室で点検した時点で、ビニルチューブの
破れとそれに伴うオイル漏れに気づいていました。
修理できそうな一縷の望みがあり、お預かりしてきた
ようなものです(11月中頃)。年末にかけて美容室は
書き入れ時で、何とか年内にお返ししたいものです。

 

さらに分解を続けます。サイドのパネルには
高さや傾きを調整するツマミが並びます。

 

足元に組み込まれているボックス内の
電気回路にケーブルで接続されています。

 

電気信号によりソレノイドが駆動し、オイルの
循環を制御する電磁バルブのブロックです。

 

いい加減、各部品の製造元や仕様が分かりそうな
ものですが、検索しても何故か情報が見つかりません。

 

電気モーターを内蔵する油圧ポンプです。
こちらもトラブルがないことを祈ります。

 

切りなく流れ出てくる油と戦いながら、油圧ポンプも
取り外してみます。油圧の経路を知る必要があります。

 

「油圧ポンプ」に直接触るのも初めてです。スイッチを入れた時、
モーター音が聞こえていたので多分生きていると思いますが。

 

油まみれになりながらも、ようやく
システム全体の構成が見えてきました。
 

もうひと系統、椅子の高さを上下させるシリンダ
です。背もたれ用よりも太く強力な感じがします。

 

長期間に渡り漏れ続けた大量の油が、
ゴミや埃と混じり台座面に広がっています。
 

それら汚れを少しずつ取り除いていくと、不思議なもので
綺麗になるほど構造が見えてきます。油圧チューブを交換・
整備してみて、果たして本来の動作・機能が戻るかどうか。
シリンダ、油圧ポンプ、電磁弁、制御回路・・、どれも初めて
手がける油圧機器の世界に、既に足を踏み入れています。


 
守谷工房のリペア6へ               守谷工房Topへ