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洋菓子店からのご依頼で伊東へ(2025.4.14)


久しぶりの静岡県伊東市です。2019年2月に高校時代の友人に
頼まれ、市内のマンションにエアコンを取り付けに行って以来です。
手前の熱海市までは漢方医受診のため何度か出向いていますが。

最初下見に出かけたのは3月上旬で、温暖な伊豆半島で早咲きの
桜を楽しんできました・・が、ミッションは桜ではなく洋菓子店です。

 

伊東駅からほど近くにある昭和の風情もお洒落な
洋菓子店です。最近の旅行ブームに加え、SNSで
話題になったことで人気・知名度が上がり、とても
繁盛されてお忙しいそうです。結構なことです。
 

オーブンの不具合と聞いていましたが、パン屋さんに
設置されているベーカリーとほぼ同じ機械です。これまで
何度か修理しているので、どこか慣れた印象を受けます。

 

上下に2段の釜を備え、それぞれ上側と
下側にヒーター(電熱線)を内蔵します。

 

製造元はとっくに廃業してしており、「SEIKAIDO」の
ロゴはかつて福岡にあった「精魁堂」の商標です。

 

操作パネルに計4台の温度調整器が配置され、
各ヒーターの到達温度を管理しています。

 

これまでに何度か故障したことがあり、その都度
地元の修理業者が交換に来ていたそうです。

  

右側面のパネルを外し内部を点検します。操作パネル
上半分の真裏に温度調整器が収まるボックスがあります。
 

その下側にも同じボックスがあり、
下段釜用温度調整器が収まります。
 

制御系が比較的単純であるためか、
内部は広々として余裕があります。

 
 
奥まったところにヒーターをON・OFFする
電磁リレーが並びます。動作は快調です。
 

釜室を隔てる耐熱壁にいくつか穴が開けられ
ヒーターの端子に電力線が接続されています。

 

釜内部の温度を計測する熱電対
プルーブも取り付けられています。

 

何度か交換された結果、温度調整器の4台中2台は
見るからに綺麗で新しいもの、2台は元のままで汚れが
付き古びています。何故か取り外された1台が店内に
保管されており、見た目には割と新しいものです。修理に
来ていた地元の業者によると、この温度調整器はもう
手に入らないそうで、従って今後修理は対応できない
と言われたそうです。困り果てた父親を見て、娘さんが
ネットで守谷工房を見つけて下さった、とのことです。
 

交換されていない古い方の1台を調べます。
専門業者が「無い」と言っているのだから・・

 

パネル面上の「Shinko」のロゴと内部の
110-R/E」を手掛かりに検索すると、

 

Shinkoは「神港テクノス株式会社」の
ロゴで、計測制御機器の専門メーカーです。

 

ACN-200シリーズと製品名が変更されていますが
外観がまるで同じ製品がラインアップされています。

 

外観が新しい温度調整器を取り出してみます。以前に修理業者が
交換していったものです。製品型番は「ACN-210-R/E」、
細かな製品仕様の違いが下2桁の番号に反映されています。
110-R/E」の後継機種で互換性があるそうです。そして、
もう手に入らない
どころか現行製品として製造・販売されています。

 

内部の基板を見ると、部品構成がまるで
異なります。正に今どきの実装技術です。

 

店内に保管されていた故障したはずの1台も調べてみます。
ACN-220-R/E」と型番が僅かに異なります。

 

試しにこの「ACN-220-R/E」を
セットして、動作を確認してみます。

 

温度を300℃に設定しても、赤色のOFFランプが
点灯したままでヒーターがONになりません。
  

神港テクノス株式会社は非常に親切な企業で、シリーズの
相違を問い合わせると実に詳しい説明が返ってきました

 

会社のWEBからほぼ全製品の製品仕様や
取扱説明書をDLすることも可能です。

 

親切な回答や製品仕様書から驚くような事実を知ることに。
ACN-210-R/E」と「ACN-220-R/E」には
温度制御方式がON・OFF制御PD制御かの相違がある
そうです。精魁堂製オーブンはON・OFF制御なので、後者
220は使用できないことになります。修理業者は製品型番の
選択でミスを犯したことになります
。ところが、神港テクノスの
回答にはさらに驚く内容が・・、基板上のDIPスイッチの設定に
より、220をPD制御からON・OFF制御に変更できるとのこと。
仕様書を熟読すると変更方法がしっかり説明されています。

 

作業は簡単です、DIPスイッチの
1番をONに変更するだけです。

 

オーブンに戻し電源を入れると、
何ら問題なく正常に機能します。

 

つまり、修理業者は交換用の温度調整器の製品型番を
間違えただけでなく、実はその製品には互換性があって
流用できたにもかかわらず、その仕様を知らずに故障と
判断し修理を放棄したことになります。できることをせず、
調べれば分かることに蓋をし、ただ新品への入れ替えを
勧める・・、斜陽化する日本経済下では決して非難できる
話ではありませんが。 さて、温度調整器は何とかなった
ものの、それとは別の修理依頼があり、オーブンのドアが
開閉時に非常に重くて難儀するそうです。調べてみると
そこにはとんでもない原因が。守谷工房に相談だ!

 
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