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農産物保冷庫用冷蔵ユニット(2025.7.5)

 

日ごとに暑さが厳しくなる中、隣のつくばみらい市から
冷蔵ユニットが運び込まれてきました。初めて見る装置
です。収穫した農産物を貯蔵する保冷庫をお持ちで、
庫内を冷却するために付属しているユニットです。連日
ユニットに通電・運転するも、庫内がほとんど冷えないそう
です。このままでは貯蔵している農作物が心配です。

 

貯蔵庫全体は幅1.5m、高さ2m近い大きな
もので、その上部に載せて使用されるそうです。

 

長手方向片面に排気口が開いています。
熱交換器の放熱フィンが見えています。

 

反対側面にはスリットが広がり、
こちらは吸気口のようです。

 

短手側面の一方には注意書きが貼られています。
長手側面の開口部は凝縮器への通気口です。

  

短手他方の側面には、電動機や冷蔵ユニットの
仕様が記されています。冷媒はHFC-134aです。
 

周囲のネジを緩めスチール製の
外装カバーを取り外します。
 

冷蔵ユニットの内部が姿を現しました。短手側面のシールに
記載されている型式「CR-18LO」を調べると静岡製機社
製品です。同社関東営業所は取手市桑原に所在し、工房の
近くです。エアコンの室外機(凝集器)と室内機(蒸発器)が
空気の流入・流出経路を分離した状態で同居し、いわば
窓取り付け用エアコンのような構造です。コンプレッサーは
家庭用冷蔵庫に組み込まれているものに似ています。
 

家庭用冷蔵庫のコンプレッサーよりも
幾分大型のように見えますが。

 

単相100V、50/60Hzで駆動します。
ここにも使用冷媒R134aが記されています。

 

凝集器側の熱交換器です。内側のファンにより
写真手前から奥方向に送風し熱交換します。

 

エアコンの室外機に相当し、高温の気化
冷媒に外気を吹き付けて液化させます。

 

断熱性に富む発泡スチロール製のカバーを
取り外すと、蒸発器側の熱交換器が現れます。

 

凝集器側と同じ構造です。ファンにより
写真奥から手前方向に送風します。
  

ファンの直下に開口部があり、保冷庫の上に
載せた状態で天井面の開口部に合致します。

 

吹き出す冷風は、発泡スチロール製カバーに
誘導され天井面の開口部から庫内に戻ります。

 

コンプレッサーに隣接し本体の端に制御基板が取り付け
られています。エアコンの基板に比べると簡素なものです。

 

ここまで各部を点検したところで
電源を入れて動作させてみます。

 

制御基板の近くに電源スイッチがあります。電動機
消費電力は300Wくらいなので気楽なものです。

 

凝集器側・蒸発器側ともファンが勢い良く回り
出します。コンプレッサーも動作しています。

 

この細い銅管は液化した低温の冷媒が
蒸発器に送られる経路です・・冷たくないです。

 

熱交換器内を循環する
銅管も冷えてきません。

 

よく見ると、蒸発器に接続される銅管の一部(下方)に
霜が付いて白くなっています。液化した冷媒が蒸発器に
流れ込む接続口部分で、これは封入されている冷媒が
何かの原因で抜けて不足している典型的な症状です。

 

冷媒不足が判明したので、要は冷媒を追加
できれば冷蔵機能が復活するはずです。

 

ところが、エアコンでは当たり前のサービスポートがありま
せん。冷媒封入後に銅管を潰しロウ付けで密閉しています。

 

冷媒ガス回収機がない環境では、不用意に経路を
開放するわけには行きません。散々ネットを調べた挙句、

 

なるほどと唸らせる部品の存在に気付きました。
ピアシングバルブという、後付けのサービスポートです。

 

入手したピアシングバルブを分解してみます。本体は
2ピースからなる構造で、銅管を挟んだ状態で3本の
ヘキサネジにより強く固定されます。片方のピースには
エアコン標準のポートに加え、略されたサービスポートの
後付けを可能にする特別な仕掛けが備わっています。
 

ピースの内側に穴が開けられ、中から先の鋭いピンが出て
います。穴の周囲には密閉を保持するパッキンが見えます。

 

外側の埋め込みヘキサネジを回すとピンが出入りする
仕組みで、銅管の途中に穴を開けることができます。

 

ポートの取り付け位置を考えます。一般的には蒸発器から
気化した冷媒が戻る経路の途中から、冷媒を追加します。

 
 
配管を辿ると断熱材で保護されたこの
銅管が該当します。作業性も考慮します。
 

ピアシングバルブを取り付ける
部分をペーパーで研磨します。

 

銅管表面を平滑にすることで
パッキンの密着性を高めます。

 

銅管を挟んで2つのピースを組み
合わせ、ヘキサネジで固定します。

 

ピアシングバルブには異なる銅管径に対応する
ため、内径を調整するスリーブが付属しています。

 

2分銅管の場合はスリーブを
2枚とも挟んで丁度です。

 

横方向に突き出ているポートのキャップを
外します。ここに冷媒ホースを接続します。

 

HFC-134aはカーエアコン用にも用いられる
冷媒です。以前にもカーエアコンの修理で使用した
ことがあります。200g缶は内圧が低下しやすく、
なかなか規定量を注入できなかった記憶があります。

 

冷媒の追加量を確認するため、冷媒ホースを
接続した状態で缶をスケールに載せます。

 

冷媒ホースの他端をピアシング
バルブのポートに仮接続します。

 

冷媒ホース内の空気を追い出すため
ハンドルを回して冷媒を少し出します。

 

ポートの内側から冷媒が漏れ出したところで
仮接続した冷媒ホースを完全に締め込みします。

 

埋め込まれたヘキサネジを回し、ピンを前進
させて銅管に差し込み、穴を開けます。

 

ピンが押し込まれたままでは穴が塞がっているので、
逆回しによりピンを後退させ隙間を作ります。

 

改めて缶のハンドルを回し、冷凍
サイクル内に冷媒を送り込みます。

 

標準的な家庭用冷蔵庫の場合で、冷媒封入量は多くて
300gくらいです。100~200gの追加で調整します。

 

100g追加したところで、一度電源を入れて様子を
見ます。冷媒が蒸発器に流れ込む接続口部分の霜は
既に消えて、熱交換器が全体的に冷たくなっています。
冷媒は入れ過ぎよりも不足気味の方が良いとされますが、
冷え具合を見ながらもう100gだけ追加しておきます。

 

冷媒量の過不足を間接的に判断するには、コンプレッサーの
消費電力を測定する方法があります。しかし、その手順は
職人技に近く簡単には真似できません。それと以前に購入
した電力計は、あっけなく壊れてしまい使い物になりません
でした。今回初めて使用したピアシングバルブは、実はあり
ふれた器具でしかなく、冷凍機関係のエンジニアには当たり
前の道具なのでしょう。しかし、少なくともエアコン関係の
機材には登場することがなく、これまで聞いたこともありま
せんでした。さて、家庭用冷蔵庫が冷えなくなるとサービス
マンの方が修理に来ますが、冷媒回収機やガストーチなど
大がかりな機材を持ち込む様子はありません。何か簡便な
方法があるのではと見当を付け、連日のネット検索により
How to Add Freon/Refrigerant to a Refrigeratorのような
情報に行き着きました。Oversea's DIY would be great !

 
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