
日ごとに暑さが厳しくなる中、隣のつくばみらい市から
冷蔵ユニットが運び込まれてきました。初めて見る装置
です。収穫した農産物を貯蔵する保冷庫をお持ちで、
庫内を冷却するために付属しているユニットです。連日
ユニットに通電・運転するも、庫内がほとんど冷えないそう
です。このままでは貯蔵している農作物が心配です。
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貯蔵庫全体は幅1.5m、高さ2m近い大きな
もので、その上部に載せて使用されるそうです。
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長手方向片面に排気口が開いています。
熱交換器の放熱フィンが見えています。
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反対側面にはスリットが広がり、
こちらは吸気口のようです。
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短手側面の一方には注意書きが貼られています。
長手側面の開口部は凝縮器への通気口です。
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短手他方の側面には、電動機や冷蔵ユニットの
仕様が記されています。冷媒はHFC-134aです。
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周囲のネジを緩めスチール製の
外装カバーを取り外します。
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冷蔵ユニットの内部が姿を現しました。短手側面のシールに
記載されている型式「CR-18LO」を調べると静岡製機社の
製品です。同社関東営業所は取手市桑原に所在し、工房の
近くです。エアコンの室外機(凝集器)と室内機(蒸発器)が
空気の流入・流出経路を分離した状態で同居し、いわば
窓取り付け用エアコンのような構造です。コンプレッサーは
家庭用冷蔵庫に組み込まれているものに似ています。
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家庭用冷蔵庫のコンプレッサーよりも
幾分大型のように見えますが。
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単相100V、50/60Hzで駆動します。
ここにも使用冷媒R134aが記されています。
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凝集器側の熱交換器です。内側のファンにより
写真手前から奥方向に送風し熱交換します。
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エアコンの室外機に相当し、高温の気化
冷媒に外気を吹き付けて液化させます。
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断熱性に富む発泡スチロール製のカバーを
取り外すと、蒸発器側の熱交換器が現れます。
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凝集器側と同じ構造です。ファンにより
写真奥から手前方向に送風します。
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ファンの直下に開口部があり、保冷庫の上に
載せた状態で天井面の開口部に合致します。
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吹き出す冷風は、発泡スチロール製カバーに
誘導され天井面の開口部から庫内に戻ります。
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コンプレッサーに隣接し本体の端に制御基板が取り付け
られています。エアコンの基板に比べると簡素なものです。
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ここまで各部を点検したところで
電源を入れて動作させてみます。
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制御基板の近くに電源スイッチがあります。電動機
消費電力は300Wくらいなので気楽なものです。
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凝集器側・蒸発器側ともファンが勢い良く回り
出します。コンプレッサーも動作しています。
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この細い銅管は液化した低温の冷媒が
蒸発器に送られる経路です・・冷たくないです。
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熱交換器内を循環する
銅管も冷えてきません。
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よく見ると、蒸発器に接続される銅管の一部(下方)に
霜が付いて白くなっています。液化した冷媒が蒸発器に
流れ込む接続口部分で、これは封入されている冷媒が
何かの原因で抜けて不足している典型的な症状です。
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冷媒不足が判明したので、要は冷媒を追加
できれば冷蔵機能が復活するはずです。
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ところが、エアコンでは当たり前のサービスポートがありま
せん。冷媒封入後に銅管を潰しロウ付けで密閉しています。
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冷媒ガス回収機がない環境では、不用意に経路を
開放するわけには行きません。散々ネットを調べた挙句、
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なるほどと唸らせる部品の存在に気付きました。
ピアシングバルブという、後付けのサービスポートです。
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入手したピアシングバルブを分解してみます。本体は
2ピースからなる構造で、銅管を挟んだ状態で3本の
ヘキサネジにより強く固定されます。片方のピースには
エアコン標準のポートに加え、略されたサービスポートの
後付けを可能にする特別な仕掛けが備わっています。
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ピースの内側に穴が開けられ、中から先の鋭いピンが出て
います。穴の周囲には密閉を保持するパッキンが見えます。
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外側の埋め込みヘキサネジを回すとピンが出入りする
仕組みで、銅管の途中に穴を開けることができます。
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ポートの取り付け位置を考えます。一般的には蒸発器から
気化した冷媒が戻る経路の途中から、冷媒を追加します。
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配管を辿ると断熱材で保護されたこの
銅管が該当します。作業性も考慮します。
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ピアシングバルブを取り付ける
部分をペーパーで研磨します。
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銅管表面を平滑にすることで
パッキンの密着性を高めます。
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銅管を挟んで2つのピースを組み
合わせ、ヘキサネジで固定します。
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ピアシングバルブには異なる銅管径に対応する
ため、内径を調整するスリーブが付属しています。
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2分銅管の場合はスリーブを
2枚とも挟んで丁度です。
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横方向に突き出ているポートのキャップを
外します。ここに冷媒ホースを接続します。
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HFC-134aはカーエアコン用にも用いられる
冷媒です。以前にもカーエアコンの修理で使用した
ことがあります。200g缶は内圧が低下しやすく、
なかなか規定量を注入できなかった記憶があります。
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冷媒の追加量を確認するため、冷媒ホースを
接続した状態で缶をスケールに載せます。
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冷媒ホースの他端をピアシング
バルブのポートに仮接続します。
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冷媒ホース内の空気を追い出すため
ハンドルを回して冷媒を少し出します。
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ポートの内側から冷媒が漏れ出したところで
仮接続した冷媒ホースを完全に締め込みします。
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埋め込まれたヘキサネジを回し、ピンを前進
させて銅管に差し込み、穴を開けます。
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ピンが押し込まれたままでは穴が塞がっているので、
逆回しによりピンを後退させ隙間を作ります。
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改めて缶のハンドルを回し、冷凍
サイクル内に冷媒を送り込みます。
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標準的な家庭用冷蔵庫の場合で、冷媒封入量は多くて
300gくらいです。100~200gの追加で調整します。
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100g追加したところで、一度電源を入れて様子を
見ます。冷媒が蒸発器に流れ込む接続口部分の霜は
既に消えて、熱交換器が全体的に冷たくなっています。
冷媒は入れ過ぎよりも不足気味の方が良いとされますが、
冷え具合を見ながらもう100gだけ追加しておきます。
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冷媒量の過不足を間接的に判断するには、コンプレッサーの
消費電力を測定する方法があります。しかし、その手順は
職人技に近く簡単には真似できません。それと以前に購入
した電力計は、あっけなく壊れてしまい使い物になりません
でした。今回初めて使用したピアシングバルブは、実はあり
ふれた器具でしかなく、冷凍機関係のエンジニアには当たり
前の道具なのでしょう。しかし、少なくともエアコン関係の
機材には登場することがなく、これまで聞いたこともありま
せんでした。さて、家庭用冷蔵庫が冷えなくなるとサービス
マンの方が修理に来ますが、冷媒回収機やガストーチなど
大がかりな機材を持ち込む様子はありません。何か簡便な
方法があるのではと見当を付け、連日のネット検索により
How to Add Freon/Refrigerant to a Refrigeratorのような
情報に行き着きました。Oversea's DIY would be
great !
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