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メルセデス・ベンツ走行できず(2024.11.30)

とは言いましても、守谷工房は自動車整備の資格を
持ち合わせませんので、実車ではなく子供用の乗用
玩具です。走行不能に陥り、電気に詳しい方が一度
修理されたそうですが再び故障。メルセデスジャパン
・・ではなく、テックベース守谷に修理のご依頼です。
 

他界されたお爺さんからお孫さんに
プレゼントされた大切な1台だそうです。
 

実車の精悍さを十分に残した
優れたフォルムデザインです。
 

運転席周りもオモチャの域ではありません。
配置されているスイッチ類は全て機能します。
 

イグニッションキーも実車のまま。自動車を
運転するお父さんを、子供は見ているでしょう。
 

キーを回すと、電子回路で合成
されたエンジン音が聞こえます。
 

ですが動作はそこまでで、床面のアクセル
ペダルを踏んでもベンツは走り出しません。
 

運転席シートを外すと内部に
バッテリーが収納されています。
 

回路計を当てるとしっかり電圧が出ています。
充放電も含めてバッテリーは問題ないようです。
 

電力制御を経てモーターに
接続されるケーブルです。
 

バッテリーの配線も外し電力系
配線の点検に取りかかります。
 

バッテリーやモーターを出たケーブルは、ボデーの右側
サイドシル内を配線されています。固定ネジを緩めます。
 

オモチャとはいえ必要十分な強度と
防水構造が考えられています。
 

運転席周りでケーブルに接続
されているスイッチ類を外します。
 

前進・後進・パーキングを切り替える
シフトノブです。どこまでも本物志向。
 

右側ドアパネル内部でスイッチとケーブルが
コネクタ接続されているので、抜いておきます。
 

アクセルぺダルの配線は
裏側(底側)に出ています。
 

アクセルペダルは床面に嵌め込まれて
おり、少しスライドさせると外れてきます。
 

ケーブルを抜き取ります。踏み込みペダル、
スイッチ、ベースプレートで構成されています。
 

速度を増減させるアクセルですが、
実際は単投のON・OFFスイッチです。
 

さして複雑な配線ではありませんが、実装状態が
ひどく雑でケーブルの接続関係が理解できません。
 

あまりに面倒なので本体から
ハーネスごと外して確認します。
 

詳しく調べるため作業場所をデスク上に変えます。製造時は
もちろん正常に動作したのでしょうが、ハーネスの組み立てが
下手くそ過ぎます。同じ行き先同士で長さが異なり、ケーブル
端が揃わず、同時に行き先が異なるケーブルが不用意に
交差しています。メンテのしやすさから最も遠い状態です。
 

双極性スイッチの場合、コネクタとの差し
込み方向を間違えないよう合印を付けます。
 

支離滅裂なケーブルの交差を先に解消
します。故障原因の捜索はその後です。
 

ケーブルがでたらめに交差した状態で
コネクタに打ち込まれているので厄介です。
 

ピン抜きを差し込み交差を解消
したいケーブルを引き抜きます。
 

全体的に無理がなく外観的に分かりやすい
交差に変更し、再びピンをコネクタに戻します。
 

他のコネクタ・ケーブルも同じように解消します。
そうこうしていると配線構成の全貌が見えてきます。
 

理解を完全にするためハーネス
構成(配線図)を作成します。
 

これまた雑ではありますが、
自身が理解するには十分です。
 

自分だけ理解できるとするのも身勝手なので、清書しておきます。
いよいよ簡単な配線に過ぎないのに、あそこまで分かりにくい実装も
いかがなものでしょう。まずイグニッションキーは電源(バッテリー)の
メインスイッチです。2組の2回路双投スイッチを中心に回路が構成
されています。図中右側は前進・ニュートラル(停止)・後進を切り
替えます。左側は運転者による直接操作(マニュアル)と、ラジオ
コントロール(RC)によるリモート操作を切り替えます。アクセル
ペダルの単投スイッチはマニュアル時のみに機能し、モーターの
トルクが小さく加速も弱いのでON・OFFで十分なのです。RCに
切り替えると、アクセル・前進・後進の各スイッチが別基板上の
リレーに置き換えられ、ラジオコントロールでリモート操作できます。
 

バッテリーの電力がスイッチ回路を経由し
モーターに戻る配線を点検します。
 

アクセルスイッチを入れると・・、
電圧が正常に出ています。
 

全く走行しないわけではないようですが、
そうこうしているうちに電圧が出なくなります。
 

前進・後進を切り替えるとタイミングに
より電圧が出たり出なかったりします。
 

コネクタから双投スイッチを
抜き取り、分解して点検します。
 

乗用玩具もベンツクラスになると
シフトノブが装備されています。
 

既存の電気スイッチに部品を追加し
それらしさを醸し出しています。
 

スイッチのこの部分、操作ツマミが
特殊形状で見たことがありません。
 

つまり、元の部品を修復できないと
代替手段がなく後で苦労しそうです。
 

内部の接点・切片を点検します。
案の定、接点が変色し切っています。
 

ドライバーの先で接点表面を削ります。
こんなものでしょう、綺麗になりました。
 

可能切片上の接点はさほど劣化していません。
が、繰り返し荷重により大きく変形しています。
 

変形を修正(平らに)しスイッチを組み戻し
ます。電気的接触に問題はありませんが、
 

前進・後進それぞれでアクセル
スイッチを入れてみます。
 

前進・後進を繰り返し切り替えても、接触不良は起こりません。
モーターおよび右側後方タイヤがスムーズに回転します。
 

ラジコンによるリモート操作も動作
確認します。RC側に切り替えます。
 

送信機には2本のスティックがあり、左側が
前後進、右側がステアリングを操作します。
 

ハーネスの一部が右側前輪タイヤハウスの
隙間からボンネット内に入り込みます。
 

ボンネットカバーを取り外すと、引き込まれた
ハーネス(ソケット)と制御基板が現れます。
 

制御基板上には、ラジオコントロール受信部とモーターを
駆動するリレーが組み込まれています。リレーの一部は
ステアリング制御用で、ベンツのハンドルは別モーターで
駆動される何とパワーステアリング仕様になっています。
 

動作確認の結果は、前後進とも反応があり
ません。ステアリング操作は正常に動作します。
 

消耗品であるリレー、および回路基板の
状態を点検しますが特に異常は見当たりません。
 

受信側だけでなく送信側も点検しておきます。
カバーを開ける前から内部でカラカラ音がします。
 

送信機内部にこのような樹脂片が
落ちています。何か部品の破片のような。
 

前後進スティックの内側可動部に
部品が折損したような断面があります。
 

先ほどの破片と断面が一致します。
この突起がどこかで折れたようです。
 

接合面が小さく部品長があるので、十分な強度を
伴う復元は簡単ではありません。工房が得意とする
2種類の接着剤を併用する方法で接合します。元の
材料強度と同じくらいの強度が出ているはずです。
 

この突起がレバーとなり基板上の金属製電気切片を
切り替えます。結果は前後進とも完全に操作できます。
 

先の電力系ハーネスも酷いものでしたが、
ボンネット内の配線もこの通りです。
 

2度と関わることはないと思いますが、
良識として整理・整頓し直します。
 

その前にボンネット内に入り込んだ
埃を掃除機で吸い取っておきます。
 

配線を束ね直し新しいインシュロックで固定していき
ます。元の保護チューブはできるだけ再利用します。
 

これが製品レベルのアートワークでしょう・・そうでも
ないですか。せめてこのくらいに仕上がっていれば、
メンテする意欲も萎えずに済むってぇものでしょう。
 

サイドシル内のハーネスも
小奇麗に整えて収めます。
 

アクセルペダル(スイッチ)を元に戻します。
単投のモメンタリースイッチをベースに組み込み、
 

アクセルペダルを上に被せます。
ベンツらしく妥協がありません。
 

ここまで組み上がった状態で、フロアの
開口部にスライドさせて嵌め込みます。
 

リモート切り替えスイッチやシフトスイッチを
元の位置に戻し、ハーネスを最終的に整えます。
 
 
サイドシルを取り付け
ネジで固定します。
 

ボンネット内の基板には制御チップが搭載されていて、このPICには
色々な面白付加機能が書き込まれています。イグニッションキーを
回すとエンジンの始動音が響き、ハンドル上のボタンでクラクションを
始め、様々な擬態音や音楽も流れます。勿論ヘッドライトが点灯し、
その光源は既にLED化されています。ご依頼主ご使用の自家用車も
きっとベンツ・・なのでしょうね。最後に、全体的にくすんでしまった
ボディをバフ研磨し、コンパウンドで軽く傷を取り除きます。ワックス
代わりにシリコン液を塗り広げると新車の輝きが復活、納車します。

 
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