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クレーンゲーム修理(2016.2.28)

守谷おもちゃ病院経由でお預かりしたクレーンゲームを修理します。
「きかんしゃトーマスはしる!クレーンゲーム」が正式名称で、定価12,000円
ほどの高価なおもちゃです。巧妙かつ難解な機構が組み込まれています。
 

天井に取り付けられているバケットクレーンが
上下(開閉)、前後、回転の3軸方向に移動します。
 

ゲーム中に機関車トーマスが炭水車を引いて走り
ます。拾い上げたボールを炭水車に落とします。
 

KAWAGUCHI CO.LTD(カワグチ社)製、商品は
まだネット上にありますがほぼ売り切れのようです。
 

電源スイッチを入れると賑やかなメロディが流れ続け
作業に集中できません。配線を一時的にカットします。
 

主なトラブルはバケットクレーンの上下動にあり
ます。ギヤの滑る音がして上昇も下降もしません。
 

クレーン機構部にアクセスするため
本体外側ケースを分解します。
 

クレーンを天井に取り付けているレールを外します。
前後に移動させるラックギヤが刻まれています。
 

クレーン機構部の分解に進みます。
ケースの片側を取り外します。
 

クレーン上下動用のモータ(右上)に電源を接続し回転させると、マウントからモータが
浮き上がり、ウォームギヤと直下のピニオンギヤの噛み合いが離れてしまいます。
 


モータをマウントに固定し直さなければなりません。
クレーン前後動用のギヤAssyを取り除いておき、
 

モータ軸受とマウントの隙間に
瞬間接着剤を流して固定します。
 

再度モータを回転させると、今度はリリース機構が働いて
ピニオンが軸方向にスライドし噛み合いが離れてしまいます。
 

位置決め用のスリーブがずれて、ピニオンギヤ
スライド範囲の遊びが大きくなっているためです。
 
 
ペンチで力を加えてスリーブの位置を調整しました。これで
2段目のウォームギヤまでしっかり回転が伝わってきます。
 

バケットクレーンの上下動は、特殊なボビンを回転
させ、チェーンを巻き上げることで実現しています。
 

2段のウォームギヤと最終段平ギヤで大きく
減速し、ボビンを適切な速度で回転させます。
 

最終段平ギヤの上にもう1枚平ギヤがあり、
モータ横のバネ突起と噛み合っています。
 

バネ突起との噛み合いは、ボビンの
回転を一定の力で制限しています。
  

2枚の平ギヤには各々異なった
役割が与えられています。
 

2個のボビンがチェーンを1本ずつ巻き取ります。また、
ボビンの内側にチェーンを取り付けるピンが出ています。
 

写真右側のボビンはシャフトに固定されておらず
一定角度範囲を空回りするようになっています。
 

空回りの範囲は、両ボビンの接触面に
作られたツメと切り欠きにより決定されます。
 

チェーンの巻き上げ動作を確認してみます。
バケットが開いた状態で最下点にあります。
 

片側のボビンが空回りによって一定角度回転し、片方の
チェーンを少しだけ巻き上げることで、バケットが閉じます。
 

ツメが切り欠きの終端に当たると、ボビンが2個とも
回転しチェーンを2本同時に巻き上げて上昇させます。
 

最上点でモータを逆回転させると、先にバケットが
開いて荷物を落とし、続いてバケットが降りてきます。
 

ボビン軸先端のピニオンギヤは、この平ギヤと
噛み合っており、平ギヤはここを始点に・・
 

ここを終点とするよう、裏側にある溝で回転が制限されています。
この機構により最下点と最上点でピニオンがリリースされます。
 

一度組み上げて見ましたが、内部で何かを引っ掻いている
ような音がして、チェーンがスムーズに巻き取られません。
 

ボビンにチェーンを取り付けるピンが脱落
したため、小ネジで代用されています。
 

小ネジの皿部分が、平ギヤの
表面から頭を出しています。
 

飛び出ている皿部分が手前のピニオンギヤと
干渉しています。これが引っ掻き音の原因です。
 

飛び出しを失くさなければなりません。
いったん小ネジを抜き取ります。
 

ボビンの高さに対して少し長いよう
です。丁度良い長さに調整します。
 

ニッパを用いて皿部分を根元から切断し
長さを調整しつつシャフトのみにします。
 

既に開けられていたネジ穴に
シャフトを差し込んで見ます。
 

途中まで差し込んだところで片方の
チェーンを取り付けておきます。
 

ネジの頭が無くなっているので
シャフトを掴んでねじ込みます。
 

ネジの緩み止め(シャフトの脱落防止)の
ため、瞬間接着剤を入れておきます。
 

飛び出しが完全に無くなり、これで
ピニオンギヤとの干渉も解決します。
 

ボビン軸をケース内に納めて見ます・・が、
今一つ回転がスムーズではありません。
 

ギヤの空転防止対策でしょうか、シャフトの
根元に接着剤が固着しています。
  

ギヤを傷めないよう、カッターナイフで
丁寧に接着剤を削り取ります。
 

綺麗に処置できました。
滑らかに回転します
 

再度組み付けるも、まだリリース機構が作動します。
残る阻害要因はバネ突起によるクリック抵抗です。
 

ピニオンのリリースとバネ突起のクリック抵抗との
バランスが崩れています。バネを少しいじめます。
 

加えて、平ギヤの周囲にプラグリスを
塗り付けて、クリック抵抗を下げてやります。
 

軽く小気味よくバネ突起と
擦り合うようになりました。
 

電源を入れてレバーを操作し、クレーンを上下動させて見ます。
最下点においてバケットが開いている状態です。
 

上昇を開始すると、先にボビンの片側が一定角度
回転してチェーンを巻き上げ、バケットを閉じます。
 

上昇を継続させると2本のチェーンが同時に
巻き取られて、バケットは最上点まで上昇します。
 

下降を開始すると、同じようにまずボビンの片側が一定
角度逆回転してチェーンを繰り出し、バケットを開けます。
 

下降を継続させると2本のチェーンが同時に
繰り出されて、バケットは最下点まで下降します。
 

最下点(または最上点)においてレバーを操作し続けても、ピニオン
ギヤのリリース機構が作動してバケットはそれ以上上昇・下降しません。
 

バケットクレーン上下動の不具合が解決
したので、本体を元通りに組み上げます。
 

クレーン機構部を天井裏にセットし、
前後動用ガイドレールを取り付けます。
 

左右5本ずつのネジでガイドレールを固定します。クレーンを
回転させる機構は、天井パネル内に組み込まれています。
 

前後動用ガイドレールの片側にのみ
ストッパー部品がネジ止めされます。
 

メロディが流れないよう切断しておいた
スピーカ配線を、元通り接続します。
 

電源スイッチは機関車が走行するモードと
走行しないモードの2通りでONにできます。
 

左から順に、クレーンを前後動、
回転、上下動させるレバーです。
 

凝った造りになっており、プラスチック製の
コインを入れるとゲームがスタートします。
 

作業完了目前で新たに問題を見つけました。機関車が
ズムーズに走行せず、途中で停止してしまいます。
 

底蓋を開けて走行テーブルの回転機構を
確認します・・が、特に問題ありません。
 

走行テーブル側に問題がありました。本体の
ベースと擦れてかすかに溝が掘られています。
 

軌道に沿ってプラグリスを
薄く塗り付けてやります。
 

機関車の走行が非常に軽快になりました。
クレーンの動きも問題ありません。
 

内部に景品のボール(確かガチャとかいう小さな
おもちゃの入ったプラスチック球)を入れます。
 

最終的な動作確認は・・言うまでもなくしばらく遊んで見ることです。結構はまります。
機構を十分に読み取らなければ手の出せない、なかなか難易度の高い修理でした。

 
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