守谷おもちゃ病院経由でお預かりしたクレーンゲームを修理します。
「きかんしゃトーマスはしる!クレーンゲーム」が正式名称で、定価12,000円
ほどの高価なおもちゃです。巧妙かつ難解な機構が組み込まれています。
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天井に取り付けられているバケットクレーンが
上下(開閉)、前後、回転の3軸方向に移動します。
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ゲーム中に機関車トーマスが炭水車を引いて走り
ます。拾い上げたボールを炭水車に落とします。
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KAWAGUCHI CO.LTD(カワグチ社)製、商品は
まだネット上にありますがほぼ売り切れのようです。
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電源スイッチを入れると賑やかなメロディが流れ続け
作業に集中できません。配線を一時的にカットします。
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主なトラブルはバケットクレーンの上下動にあり
ます。ギヤの滑る音がして上昇も下降もしません。
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クレーン機構部にアクセスするため
本体外側ケースを分解します。
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クレーンを天井に取り付けているレールを外します。
前後に移動させるラックギヤが刻まれています。
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クレーン機構部の分解に進みます。
ケースの片側を取り外します。
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クレーン上下動用のモータ(右上)に電源を接続し回転させると、マウントからモータが
浮き上がり、ウォームギヤと直下のピニオンギヤの噛み合いが離れてしまいます。
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モータをマウントに固定し直さなければなりません。
クレーン前後動用のギヤAssyを取り除いておき、
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モータ軸受とマウントの隙間に
瞬間接着剤を流して固定します。
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再度モータを回転させると、今度はリリース機構が働いて
ピニオンが軸方向にスライドし噛み合いが離れてしまいます。
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位置決め用のスリーブがずれて、ピニオンギヤ
スライド範囲の遊びが大きくなっているためです。
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ペンチで力を加えてスリーブの位置を調整しました。これで
2段目のウォームギヤまでしっかり回転が伝わってきます。
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バケットクレーンの上下動は、特殊なボビンを回転
させ、チェーンを巻き上げることで実現しています。
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2段のウォームギヤと最終段平ギヤで大きく
減速し、ボビンを適切な速度で回転させます。
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最終段平ギヤの上にもう1枚平ギヤがあり、
モータ横のバネ突起と噛み合っています。
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バネ突起との噛み合いは、ボビンの
回転を一定の力で制限しています。
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2枚の平ギヤには各々異なった
役割が与えられています。
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2個のボビンがチェーンを1本ずつ巻き取ります。また、
ボビンの内側にチェーンを取り付けるピンが出ています。
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写真右側のボビンはシャフトに固定されておらず
一定角度範囲を空回りするようになっています。
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空回りの範囲は、両ボビンの接触面に
作られたツメと切り欠きにより決定されます。
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チェーンの巻き上げ動作を確認してみます。
①バケットが開いた状態で最下点にあります。
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②片側のボビンが空回りによって一定角度回転し、片方の
チェーンを少しだけ巻き上げることで、バケットが閉じます。
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③ツメが切り欠きの終端に当たると、ボビンが2個とも
回転しチェーンを2本同時に巻き上げて上昇させます。
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④最上点でモータを逆回転させると、先にバケットが
開いて荷物を落とし、続いてバケットが降りてきます。
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ボビン軸先端のピニオンギヤは、この平ギヤと
噛み合っており、平ギヤはここを始点に・・
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ここを終点とするよう、裏側にある溝で回転が制限されています。
この機構により最下点と最上点でピニオンがリリースされます。
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一度組み上げて見ましたが、内部で何かを引っ掻いている
ような音がして、チェーンがスムーズに巻き取られません。
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ボビンにチェーンを取り付けるピンが脱落
したため、小ネジで代用されています。
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小ネジの皿部分が、平ギヤの
表面から頭を出しています。
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飛び出ている皿部分が手前のピニオンギヤと
干渉しています。これが引っ掻き音の原因です。
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飛び出しを失くさなければなりません。
いったん小ネジを抜き取ります。
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ボビンの高さに対して少し長いよう
です。丁度良い長さに調整します。
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ニッパを用いて皿部分を根元から切断し
長さを調整しつつシャフトのみにします。
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既に開けられていたネジ穴に
シャフトを差し込んで見ます。
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途中まで差し込んだところで片方の
チェーンを取り付けておきます。
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ネジの頭が無くなっているので
シャフトを掴んでねじ込みます。
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ネジの緩み止め(シャフトの脱落防止)の
ため、瞬間接着剤を入れておきます。
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飛び出しが完全に無くなり、これで
ピニオンギヤとの干渉も解決します。
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ボビン軸をケース内に納めて見ます・・が、
今一つ回転がスムーズではありません。
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ギヤの空転防止対策でしょうか、シャフトの
根元に接着剤が固着しています。
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ギヤを傷めないよう、カッターナイフで
丁寧に接着剤を削り取ります。
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綺麗に処置できました。
滑らかに回転します
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再度組み付けるも、まだリリース機構が作動します。
残る阻害要因はバネ突起によるクリック抵抗です。
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ピニオンのリリースとバネ突起のクリック抵抗との
バランスが崩れています。バネを少しいじめます。
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加えて、平ギヤの周囲にプラグリスを
塗り付けて、クリック抵抗を下げてやります。
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軽く小気味よくバネ突起と
擦り合うようになりました。
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電源を入れてレバーを操作し、クレーンを上下動させて見ます。
①最下点においてバケットが開いている状態です。
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②上昇を開始すると、先にボビンの片側が一定角度
回転してチェーンを巻き上げ、バケットを閉じます。
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③上昇を継続させると2本のチェーンが同時に
巻き取られて、バケットは最上点まで上昇します。
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④下降を開始すると、同じようにまずボビンの片側が一定
角度逆回転してチェーンを繰り出し、バケットを開けます。
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⑤下降を継続させると2本のチェーンが同時に
繰り出されて、バケットは最下点まで下降します。
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⑥最下点(または最上点)においてレバーを操作し続けても、ピニオン
ギヤのリリース機構が作動してバケットはそれ以上上昇・下降しません。
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バケットクレーン上下動の不具合が解決
したので、本体を元通りに組み上げます。
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クレーン機構部を天井裏にセットし、
前後動用ガイドレールを取り付けます。
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左右5本ずつのネジでガイドレールを固定します。クレーンを
回転させる機構は、天井パネル内に組み込まれています。
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前後動用ガイドレールの片側にのみ
ストッパー部品がネジ止めされます。
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メロディが流れないよう切断しておいた
スピーカ配線を、元通り接続します。
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電源スイッチは機関車が走行するモードと
走行しないモードの2通りでONにできます。
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左から順に、クレーンを前後動、
回転、上下動させるレバーです。
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凝った造りになっており、プラスチック製の
コインを入れるとゲームがスタートします。
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作業完了目前で新たに問題を見つけました。機関車が
ズムーズに走行せず、途中で停止してしまいます。
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底蓋を開けて走行テーブルの回転機構を
確認します・・が、特に問題ありません。
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走行テーブル側に問題がありました。本体の
ベースと擦れてかすかに溝が掘られています。
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軌道に沿ってプラグリスを
薄く塗り付けてやります。
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機関車の走行が非常に軽快になりました。
クレーンの動きも問題ありません。
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内部に景品のボール(確かガチャとかいう小さな
おもちゃの入ったプラスチック球)を入れます。
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最終的な動作確認は・・言うまでもなくしばらく遊んで見ることです。結構はまります。
機構を十分に読み取らなければ手の出せない、なかなか難易度の高い修理でした。
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