守谷市おもちゃ病院での活動とは別に、守谷工房は「Toy
Hospital」を
常設しております。WEBをご覧になった方から、おもちゃ修理の依頼が
あり宅配便で修理品が送られてきました。開けてみると修理依頼書が
きちんと添えられており、故障の状況が丁寧に記入されていました。
|
神奈川にお住まいの方からのご依頼です。
往復の送料が嵩み心苦しいです。
|
セガトイズ製「アンパンマンでるでる
ハンバーガー」というおもちゃです。
|
動作を確認しようとしますが・・
遊び方が分かりません。
|
ネット動画を検索し、正しい
遊び方をしっかり勉強します。
|
配送中に商品ケース部が脱落しないよう
丁寧にテープで固定されています。
|
乾電池を確認します。新しい電池が
入れられており問題ありません。
|
操作しても商品ケースが回転せず、「ブー」と音が鳴り
商品も出てこないそうです。本体の分解に入ります。
|
底板部分を外します。乾電池ホルダーと
スピーカが取り付けられ、配線が延びています。
|
本体左側に商品ケース、その下にケースの駆動部、
右側に電力・制御用の電子回路が組み込まれています。
|
まず、動力部に不具合が見つかりました。センターシャフトを
上下させるアームの支持部品が浮き上がっています。
|
かなり大きな力が加わるようで、
固定ネジが外れかかっています。
|
いったんアーム部周りを分解し、
機構や実際の動作をよく確認します。
|
非常に強い部品で損傷はありません。固定ネジを受ける
基部の穴が広がったようです。ネジのサイズを変えます。
|
商品ケース部に取り付けられているセンサーに
問題がありそうです。取り外そうとすると・・
|
センサーへの配線長がぎりぎりで、電子回路
基板を外して配線を引き戻す必要があります。
|
本体右側のカウンター部全体を外さ
ないと基板にアクセスできません。
|
レジ引き出し下のプレートも外します。
底板はそのままで何とかなります。
|
商品ケースの頂上部にマイクロスイッチが組み込まれて
います。安全のため、蓋を被せないと回転しない構造です。
|
マイクロスイッチの取り付け基板が見えました。
紫色のコードがぎりぎりに配線されています。
|
固定ネジを緩めている途中、配線が2本とも切れてしまい
ました。ほとんど切れかかっていたものと思われます。
|
取り付け基盤をよく観察します。E・Fの部分に
コードが半田付けされているはずですが・・
|
E側のランド(銅箔)が捲り上がり、
一部は欠損しています。
|
ランドの修復は無理なので、半田付けの場所を変更する
ことにします。念のためマイクロスイッチも点検します。
|
押し加減によって導通しない部分が
あります。接点の劣化が進んでいます。
|
同形状の部品は入手困難なので
ケミカルで接点復活を試みます。
|
キャップ内側に基板を戻します。
|
蓋を被せた状態で再度導通を確認します。接点が無事復活
しています。いったん全体を組み立てて動作させてみます。
|
メニューを押すとモーターの回転音が聞こえシーケンスが
進行しているようです。しかし、商品ケースは回りません。
|
駆動部が正常に動作していま
せん。分解して原因を探ります。
|
精巧なメカニズムです。モータの回転方向により商品ケースの
回転とセンターシャフトの上下動が自動的に切り替わります。
|
切り替えを行っているのがこのピニオンカップリング。一方は
シャフトに固定され、他方はプラネタリとして周回します。
|
固定側のピニオンをよく見ると、滑り止めのシャフト突起が少し
はみ出ています。プラネタリに干渉して回転を阻害しています。
|
固定側ピニオンの位置を調整して
突起をピニオン内に収めます。
|
プラネタリ側がスムースに回転するようになりました。
これでモーターの回転が先まで伝達されるはずです。
|
再度、全体を組み立て動作確認するも、商品を落下
させるキャッチャーが動作したまま停止しません。
|
センターシャフト上下用アームを駆動するカムは
1回転ごとに突起でマイクロスイッチをONにします。
|
マイクロスイッチからの信号でキャッチャーは停止
するので、このスイッチの不具合が疑われます。
|
取り外してすぐに原因が分かりました。コードの
半田付けが、付いているようで・・取れています。
|
プラスチック部品の摩耗による劣化、ゴムベルトの伸びによる
スリップなど若干不安は残りますが、修理作業を終えました。
|
キーを右に4分の1回転させます。
電源スイッチになっています。
|
メニューボタンから商品を選びます。アンパンの声がして商品ケースが回転します。
回転ベース内の3個のマイクロスイッチにより、6種類の商品位置を特定し停止します
|
「サラダ」を注文したのでサラダのところで
商品ケースが正しく停止しています。
|
手前の取り出しボタンを押すと、モーターが逆回転しプラネタリの
反転動作によってキャッチャーの開閉動作に切り替わります。
|
キャッチャーが開いて商品が取り出し口に落下します。
その直後、上部キャッチャーが開いて商品を補充します。
|
全商品について正しく取り出されることを確認しました。しかし、
全体的な機構劣化により時折不安定な動作が残ります。
|
修理完了です。巧妙なメカニズムが組み込まれたおもちゃだけに、機構を十分に理解し慎重に
作業を進める必要があり、結果大変勉強になりました。ご依頼いただき有難うございました。
|
|
|