ドクター一同が驚嘆の声を上げるおもちゃが舞い込んできました。石原裕次郎、渡哲也、
舘ひろしらが出演し、80年代前半のTVシーンを席巻したドラマ「西部警察」。その中で
大門軍団特別車両として活躍した日産車の1台がこのサファリ4WDです。おもちゃ
博物館に招かれそうなラジコンカーは、お父さん~お爺ちゃんの所有物かも知れません。
|
かつて大門軍団とともに出動し凶悪犯と闘い続けたサファリ
4WDに、40年近くを経て巡り逢うとは思っていませんでした。
|
とっくに現役を引退しゆっくり余生を楽しんでいるようですが、
最近は足腰がめっきり弱り、後進が出来ないそうです。
|
シニアがシニアのお世話をします。
固定ネジを緩め底面カバーを外します。
|
ラジコン受信部とモーター制御部が組み込まれた回路
基板です。電子部品が立っており当時を偲ばせます。
|
電源やモーターの配線を確認
するため回路基板を外します。
|
走行用モーターへの配線です。極性を
変更して前進・後進を切り替えるようです。
|
この状態で動作確認を行います。送信機レバーを
上に倒すと前進回転します。問題ありません。
|
送信機レバーを下に倒すと・・、
タイヤが回転しません。無反応です。
|
左右ステアリングも正常に動作します。ラジコンの送受信には問題ないようです。
写真左側の青・白のコードがモーターへの配線です。レバーの上下により電圧が
正逆に切り替わるか(+・-の電圧が正しく出ているか)、点検してみます。
|
レバーを上げると、回路形の針がしっかり振れます。
モーターを正回転させる電圧が正常に出ています。
|
レバーを下げると、針は全く振れません。
電圧や極性の異常以前に、電圧が出ていません。
|
モーターの配線が接続されているパターンを注意深く
眺めてみると、一定の規則性があることに気付きます。
|
部品実装側を確認すると、同規格のパワー
トランジスタが4個取り付けられています。
|
4個のトランジスタをブリッジ形に組み合わせ、対辺にあるトランジスタを組みに
して同時にON・OFFします。2組のどちらをONにするかにより、モーターへ
正逆反転した電圧が加わる回路です。バック側のON信号が前段で途絶えて
いるか、パワートランジスタのどれかが破損している可能性があります。
|
可能性の高さから、パワートランジスタ破損の
有無を先に調べます。手前から順に外します。
|
使用されているのは2SB564、Ic:1A、
Pc:1Wの古株ですが、まだ出回っています。
|
院長所有のトランジスタチェッカーで破損の有無を
調べます。B・C・E端子の配置も確認します。
|
最初の1個目は正常でした。続いて
隣に並んでいる2個目を確認します。
|
破損しています。C・E間がコンデンサ状態
です。同規格のPNPトランジスタが必要です。
|
院長所蔵のパーツ群の中に、唯一含まれていたPNP
トランジスタです。Ic・Pcともどう見ても足りなそうですが。
|
高齢のサファリを後進させるだけなら、何とか
持つでしょう。チェッカーで端子配置を調べます。
|
元の2SB564とはB(ベース)と
C(コレクタ)の配置が逆です。
|
短絡しないようB(ベース)端子に細いチューブを被せて絶縁します。
BとCの端子を交錯させて基板のパターンに合わせ、半田付けします。
|
正常に前進・後進するようになりました。
当初の問題は解決、修理完了ですが・・、
|
サファリは4WDだからこそ大門軍団特車として活躍
できたのに、前輪が回転しません。ただの2WD車です。
|
後輪を駆動しているモーターの動力は、ドライブ
シャフトを介して前輪に伝達されています。
|
前輪駆動用のクラウンギヤも正常に回転しています。
ここから先に回転が伝達されない部分があるようです。
|
減速用のピニオンと平歯車です。
ギヤの損傷もないようです。
|
回転を左右車輪に同時に伝達するシャフトが見えます。
この先は車輪軸に付く最終段の歯車となります。
|
諸々の歯車、軸受、いずれにも破損や顕著な摩耗は見当たり
ません。ギヤボックスの組み付けにガタがあるのでしょうか。
|
歯車を全て入れ直し、ギヤボックスを丁寧に組み
直してみます。結果、前輪も回転し出しました。
|
後部バンパーが脱落しています。軟質の接着剤がまとわり付き、以前に
何度か修理されたようです。接着剤の残りを完全に取り除きます。
|
破損した本体の一部を元に戻します。
アクリル用接着剤で接着し直します。
|
溶融(拡散)接着の接合力は、
ほぼ材料強度に匹敵します。
|
バンパーを取り付けるアンカー部が修復され
ました。鈑金に相当する作業のようです。
|
後部バンパーをネジ止めして
全ての作業が完了です。
|
モーターを駆動するには容量の小さなトランジスタですが、試運転の段階では
問題なく機能しています。後進はあまり頻繁に操作されないでしょうから、この
ままで実用に耐えるかも知れません。1980年当時の現役も、40年近く過ぎた
現在はとっくにシニア世代です。ゆっくり静かに子供さんの相手をしてあげて下さい。
|
|
|