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木製灯籠を作る その1(2020.8.16)


この6月の下旬に入った頃、工房のある地元けやき台のお客様から特別なご用命を
いただきました。お盆のお墓参りに供える仏具のひとつ、灯籠を作ってもらえないか
とのご依頼です。先々代のどなたかが手作りされたもので、長い年月大切に使われて
きたそうです。写真のような木製の立派な灯籠ですが、さすがに著しく老朽化が進んで
います。仏具店を始め色々なところに作り直しを問い合わせるも、最後に守谷工房を
訊ねておいでになりました。納期はもちろんお盆前です、大変なことになりました。

 

かなり以前にお仏壇を製作したことがありますが、このような縁起やしきたりを
踏まえたものづくりには、例えば仏具師や宮大工のように、修業期間を通して
身に着けた歴史や文化、伝承に関する理解が必要です。本業が家具屋である
というだけで、安易にお引き受けするには躊躇があります。しかし、他に引き
受け手が見つからないのであれば(確かにネット検索など役に立ちません)、
新たに勉強させていただく意味でも取り組んでみることにしました。

 

工房に運び込んだ灯籠の各部を注意深く
観察します。全体的な構造を把握します。
 

手前に開き障子戸があり、内部に
蝋燭を立てることが出来ます。

 

本体の老朽化に加えて、この火事の
跡も新調するきっかけのようです。

 

大きな蝋燭をお使いになったようで、
炎が屋根板まで届き焼けています。

  

櫓に組まれた台座は、スリット入りの
丸棒(支柱)が差し込まれる構造です。

 

内部構造の把握や採寸には本体の分解が必要です。
ご先祖様に申し訳なくも、ドライバーを叩き入れます。

 

全ての接合部に釘が打ち込まれています。ほど
良くサビ付いたことで十分な接合力があります。

 

長期間、崩壊もせず構造が保たれてきたのは
そのお陰です。その分、分解に難儀します。

 

建屋上物と台座を切り離します。
バールが必要になるほど強固です。

 

分離した台座の中央に、蝋燭を立てる
受け皿が取り付けられています。

 

缶詰の空き缶を流用して手作りされたものです。
蝋燭を立てる支柱は、断面が四角の和釘です。

 

空き缶製受け皿の下は、花崗岩のような石材から
作られた円形の板です。断熱のためでしょうか。

 

屋根の分解に入ります。灯籠の風貌に
迫力を持たせているのはこの大棟です。

 

頂上の稜線と接する部分(写真の陰)は、干渉を
避けるため削り込まれています(棟包?)。

 

屋根の裏側には母屋と軒桁が入れられて
います。住まいの構造に準じた作りです。

 

やはり接合は釘のみです。外側から目立たないよう
最小限の本数を配置し、かつ十分な強度を得ています。
 

ここまで分解すれば、簡単かつ正確に採寸出来ます。外観からは分からなかった
緻密な組み上げ手順が見えてきます。要所に補強材が充てられ、大小の釘が
巧みに使い分けられています。今のところ、釘の打ち損じが見当たりません。
 

本体の箱組みには当時の合板(ベニヤ板)が使われています。これだけの薄板を
単板で用意することは、当時でも難しかったと思います。風雨に晒されて表面の
化粧張りが全体的に剥がれています。劣化が進んでいて判断できませんが、
表層の化粧張りはベニヤ板にしては木目が綺麗に整っています。もしかすると
何か銘木の突板を貼り合わせたのかも知れません。耐久性が低い接着剤が
変質し、接合力を失って一斉に剥がれてきたような印象でもあります。さて新しく
製作する灯籠では、同じく本体箱組みの材料に、何を使用するべきでしょう。

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