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業務用ベーカリ本格修理3完結編(2018.2.4)


業務用ベーカリー本格修理1業務用ベーカリー本格修理2の続編で、いよいよ
完結編となります。新しいコイルフィンヒーターに交換を終え、現地へ取り付けに
出かけるのを待つベーカリーのヒーターユニットです。既存のフレームを再利用する
ため、コイルフィンヒーターおよびセラミックブッシュの選定に時間がかかりました。

 

ヒーターユニットの組み立てを終えた後、業務の予定や天候を見ながら
出かける日程を調整してきました。1月下旬から2月にかけ関東一帯にも
降雪があり、特に高速道を降りてから現地までの道路状況が心配でした。

 

雪が残っている場合はインターまで迎えに来て下さると
聞き、ちょうど2か月ぶりに3度目の片品村を訪れました。

 

道路から敷地に入ってくる部分だけ雪道でした。
この通り休業中のレストランは雪の中です。

 

工房から運び込んできたヒーターユニットです。
新品コイルフィンヒーターのシルバーが綺麗です。

 

2か月ぶりにベーカリー本体の元に戻ってきました。
取り外した逆の手順で元通り取り付けるだけです。

  

30分もあれば完了、「楽勝!」の文字が浮かびます。
セメントボードを支えるステーをいったん外します。

 

コイルフィン径が大きくなり全体重量がかなり増えています。
力を込めてヒーターユニットを持ち上げ、炉内に差し入れた時・・

 

叩きのめされるような重大な問題に気付きました、大変な事態です。
新しいコイルフィンヒーターは元のヒーターより全長が20mm長く
なっています。左右に10mmずつ伸びることになりますが、左右の
壁面まで余裕があるので、問題は起こらないと考えていました。

 

壁面ではなく、ヒーターユニットの取り付けシャフト
およびセメントボードを支えるレールに干渉します。

 

干渉するのは電極であり、すなわち3相200V
電力の短絡を意味します。事態は深刻です。

 

ご依頼主は明日にでもパン焼きを再開する予定だそうです。
何とかしなければなりません、冷静に冷静に考えます。

 

新しいヒーターは電極のネジ部が長めです。丁寧にナットを
2個、ワッシャ3枚にスプリングワッシャまで入れています。

 

これらを整理し、ワッシャを1枚省き1個のナットで
短絡板を固定します。ネジ部がさらに飛び出てきます。

 

配線側のナット・ワッシャも整理すると、ネジの飛び出し
すなわち不要な部分が左右とも10mmほどになります。

 
 
こいつをディスクグラインダで切り落としてしまいます。この加工により干渉を解消する
ことができるのか、予め測定による確認などしていません。そんな気になれません。
解消しないことが分かると、計画は全て振り出し、工房に帰るしかありません。

 

一か八か、目を閉じて(心の目)ヒーターユニットを差し入れてみます。
入りましたすんなり。こういう心臓に悪い顛末には出くわしたくありません。

 

レールの縁から水平方向に離れており、かつ垂直方向にも
上下レールの中間にあるので、接触の心配はありません。

 

左側の短絡板が取り付けられている方を確認します。
こちら側もレールから完全に離れており問題ありません。

 
 
手前側のフレームを天井にネジ固定します。新しいコイルフィンヒーター探しの件、
サイズの合うセラミックブッシュ選びの件、これだけでも非常に運が良かったのに、
加えて、ネジ部を切り詰めるだけで干渉を解消できる運にも恵まれたことになります。
感謝しながら、取り付け状態で各部の導通(抵抗値)および絶縁状態を確認します。

 

3相交流の配線R・S・T各2本ずつを、壁面
横の穴を通して制御盤内に引き込みます。

 

Y型圧着端子を取り付けておいたので、電力供給端子にネジ
止めするだけです。配線を通した穴をプラスターで塞ぎます。

 

回路形で何度も導通・絶縁の確認をしましたが、
やはり3相200Vを通電する瞬間は緊張します。

 

冷え切っていた庫内は温度上昇に時間がかかります。
中心部分の上昇が幾分早く、現在82℃を超えたところです。

 

庫内温度計が90℃になろうとしています。
目標温度260℃の設定で通電中です。

 

セメントボードの表面温度は220℃を
超えています。順調に加熱しています。

 

壁面温度を測定するため手前ドアを開けるたび、
庫内温度が下がります。160℃に近づいています。

 

この時点でセメントボードの表面温度は270℃を
超えています。下段ヒーターは従来通り順調です。

 

新品のコイルフィンヒーターが初めて通電されることで、材料や塗料が焼ける
臭いがしています。これは間もなく消えるでしょう。一度は絶望視された業務用
パン焼き機が、最初に片品村を訪れてから1年強を経て完全に復活しました。

 

まだ陽が高いうちに作業を終えることが出来ました。
外に出ると、雪の中のシャレーみのりが素敵です。

 

宿泊客にお出しするパンのストックがなく、別に販売する
分もなくなり、お客さんが残念がっておられたそうです。

 

また、地元の食品店にパンを卸しているそうで、中断
していた出荷を翌日から再開する予定とのことです。

 

それを聞いて(寒い中)冷や汗が出ました。とにかく
修理を完了することができて嬉しい限りです。

 

まだ雪のない12月に来た時と同じ道を、冬景色を楽しみながら帰ります。何枚か
片品村の冬を写真に撮ってきました。クリックすると大判の写真が開きますので
どうぞご覧下さい。ベーカリーの修理作業とともに思い出に残りそうな光景です。

 
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