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BOSEプレーヤーSMDキャパシタの不良1(2019.3.13)


BOSE社WAVE MUSIC SYSTEM(AWRCCC)の修理依頼が、このところ
立て続けに舞い込み、工房には修理待ちが4台も溜まっております。同型機は
以前にピックアップユニットを交換したことがあり、同等品のユニットに交換した
だけであっさり直ってしまいました。同じように簡単に片付くものと思い込み次々
安請け合いをしてしまい、発注した交換用ユニットの到着を待っておりました。

 

交換用ピックアップユニットが到着しました、以前に
分解経験があるので作業はなんの苦労もありません。

 

本体外側、スピーカーユニットを取り外し、
CDドライブユニットの分解に進みます。

 

CDドライブはわずか2本の
ネジで組み上げられています。
 

左上のネジを緩めると、ドライブ
外側の金属製カバーが外れます。

 

その下はCDローディング機構を含むフレーム
です。右上のネジ1本で固定されています。

 

配線が接続されたままフレーム全体を
裏返すようにして取り外します。

 

ピックアップユニットはインシュレーターを
介し3本の特殊ネジで固定されています。

 

新しいピックアップユニットに交換します。
インシュレーターや固定ネジは再利用します。
 

実に簡単な作業です。フレームを
元に戻し、動作確認を行います。

 

何とか再生するようになりましたが・・不安定です。
トラッキングエラーが頻発しシーク音が鳴り止みません。

 

新品のピックアップユニットにもかかわらず何故安定
しないのでしょう。レーザー出力を調整してみます。

 

出力調整用トリマーの溝が極端に浅いので、調整
ドライバーの先を加工して溝形状に合わせます。

 

奥まった位置を覗き込みながら
トリマーを左右に回してみます。

 

再びCDを再生してみます。多少安定性が改善されたように
見えますが、FM・AM・CD・AUXを切り替えようとすると・・

 

目的のモードには切り替わらず、いったん電源がOFFになり、その後電源が再びONになり
-PLEASE WAIT-
の表示が3回点滅します。最初に電源をONにした時の表示です。
再度モードを切り替えようとすると、電源がリセットされるようです。どうやら問題は深刻です。

 

何故か音量調整は正常に機能します。まれにCD再生
モードに切り替わるものの、すぐに電源がリセットされます。

 

アラームの設定も正常に機能するようです。
リモコンによる操作自体に不具合があります。

 

オークションに出品されている故障品の多くが「リモコン操作
不良」となっています。どうやらこの状況に陥っているようです。

 

チップ部品やSMD(表面実装デバイス)が多用された
高密度基板は、手を入れられる範囲が限定的です。

 

電源投入後しばらく時間をおいて操作すると正常に動作することがあります。電源周りの
大容量コンデンサにリークやドリフトがあるのか、データ保持用のスーパーキャパシタを
交換してみるも変化はありません。高密度実装基板を前に途方に暮れつつあったその時、
修理を待っている同型機が何台もあることを思い出しました。3枚の基板を相互に入れ替え、
不具合を含む基板を割り出します(守谷工房的問題解決)。その結論は、CDドライブ制御や
モード切替制御を含むCPU基板(本体底面に固定されている2枚のうち手前側の基板)に
動作不良があります。ピックアップユニットの動作不安定も、これが原因かもしれません。

 

既にBOSEプレーヤーの修理に関する情報は探し尽くしています。ほとんどがピックアップ
ユニットを交換するだけの記事です。日本語サイト内の検索に見切りをつけ、海外のサイトに
検索範囲を広げてみます。「BOSE REPAIR」の検索でようやく辿り着いたのがこのサイトです。

その冒頭には以下のように謳われています。
全てのAC電源仕様のWave Music System、Wave Music System II、Wave Music System IIIに
当てはまります。 2000年代に製造されたこれらの特定のバージョンは米国内で設計されて
いますが、中国から供給された低品質の部品が問題の原因です。 それらの品質は米国内で
製造された初期の品質をはるかに下回っています。フロントローディング式CDプレーヤーを搭載
するBOSE WMSは、その回路図やサービスマニュアルの公開を拒否しています。しかし、経験
豊富で良心的な技術者が回路をリバースエンジニアリングし、それをBOSEよりも高い水準で
修理・修復することは何ら問題ではありません。この文書を読んで理解すれば、優れたはんだ
付け技術を持つ専門的な愛好家または技術者は、高い確率でBOSEを修理することができます。

 

記事に示されている修理前のメイン基板です。該当する
基板番号が示されているので厳密な照合が可能です。

 
The normal symptom of this series is weak sound or no sound. Generally, they are able to be switched on, and the display responds to the commands of the Remote Control.
The cause of the problem is massive and widespread failure of all the Chinese SMD capacitors – around 40 of them. For example, 1uF capacitors showing ESR of 20-30 Ω, 10uF capacitors showing ESR of 10-17Ω . The consequence is that the associated IC’s current becomes unstable, and causes the TDA7376 output amplifier and / or associated copper traces around the IC’s, to burn.
There is NO quick and cheap fix, and simply replacing ONLY the burnt TDA7376 (which many technicians of dubious ethics do) is another timebomb waiting to explode, because it is still subject to damaging unstable current and will overheat and fail again in a short time, IF all the capacitors are NOT replaced simultaneously.
 このシリーズの一般的な症状は、弱い音または無音です。電源をオンにすることができ、ディスプレイはリモートコントロールのコマンドに反応します。問題の原因は全て中国製SMDコンデンサの大規模かつ広範囲な故障です-約40個です。 たとえば、ESRが20~30Ωの1µFコンデンサ、ESRが10~17Ωの10µFコンデンサなどです。 結果、関連するICの電流が不安定になりTDA7376の出力アンプや関連するIC周囲の銅配線が焼けてしまいます。
 迅速で安価な修正方法はありません。焼けたTDA7376を単に置き換えるだけでは、時限爆弾が爆発するのを待っているようなものです(全てのコンデンサが同時に交換されていない場合)。
 

同じく記事に示されている修理後のメイン基板です。
大量のSMDコンデンサが全て交換されています。

 
These modifications apply to the Wave Music System units with the Front-Loading CD. The applicable PCB numbers (all very similar with minor differences only) are as follows:
283027-001 Main PCB
291619-001 Main PCB
342507-006 Main PCB
269837-001 CD Processor PCB
345156-005 CD Processor PCB
To be certain, open your own radio, and compare your circuit board to those shown below. If it is identical, you can repair/modify your radio with confidence.
免責事項
 あなた自身の責任で修理して下さい。あなたが被るかも知れないどのような損害も、私は一切責任を負いません。

 この修理は、フロントローディング式CDプレーヤーを搭載するWave Music Systemユニットに適用されます。 該当する基板番号は次の通りです。
283027-001メイン基板
291619-001メイン基板
342507-006メイン基板
269837-001 CDプロセッサPCB
345156-005 CDプロセッサPCB

 BOSEを分解し回路基板を以下と比較してください。同一であれば、あなたは自信を持って修理することができます。


The repair/modifications comprise 4 stages.

1. Removal of all Chinese SMD capacitors – absolutely essential, no matter what symptoms you are experiencing

2. Replacement of all capacitors with Nichicon and Panasonic 105°C Low-ESR electrolytic, and Wima high-precision Film TTH (not  SMD) capacitors

3. Diagnosis and repair of sound problem – requires DMM voltmeter and oscilloscope

4. Replacement of the TDA7376 Output amplifier (if still no sound, after making all repairs)

Removal of all SMD capacitors

It is a given that ALL these low-quality Chinese capacitors are defective. There is no quick or cheap way to solve this. ALL of them must be removed. The DC electrical current in the machine is completely unstable, and all the semiconductors are highly stressed. One or more semiconductors have already failed. No wishful thinking will make the problem go away.

The large heatsink at the rear of the machine must be removed, to provide access to all the capacitors.

Every technician has his own favorite method of removing SMD capacitors.

My favorite method is to grip the capacitor from above with a pair of pliers, push DOWN, and simultaneously firmly twist the capacitor in the horizontal plane, about 120-180°.

NEVER pull the capacitor in an upwards direction. The correct horizontal twisting action will break the capacitor leads at their weak point, and the capacitor will separate from the PCB.

If this method is done correctly, it will never cause damage to the solder pads on the PCB.

After the capacitor has been removed, you should apply the soldering iron (about 290°C) onto the pads, in order to remove the residual part of the SMD capacitor leads, which are still attached to each pad.


・修復/修正は4段階

1.どのような症状が発生しても、全ての中国のSMDコンデンサを取り外すことが不可欠です。

2.すべてのコンデンサをニチコンとパナソニックの105℃低ESR電解コンデンサ、およびWima高精度フィルムTTH(SMDではない)コンデンサに交換

3.音の問題の診断と修理-DMM電圧計とオシロスコープが必要

4.TDA7376出力アンプの交換(それでも音が聞こえない場合は、すべての修理を行った後)


・全てのSMDコンデンサの取り外し

 これらの低品質の中国製コンデンサは全て不良品です。 これを解決するための迅速で安価な方法はありません。 それらすべてを削除する必要があります。 機械内のDC電流は完全に不安定であり、すべての半導体には大きなストレスがかかります。 1つ以上の半導体がすでに故障しています。 希望的な考えが問題を解決することはありません。
 全てのコンデンサに手が届くようにするには、機械の背面にある大きなヒートシンクを取り外す必要があります。
 全ての技術者は、SMDコンデンサを取り外すための独自の方法を持っています。
 私のお気に入りの方法は、ペンチで上からコンデンサをつかみ、下に押し、同時にコンデンサを水平面内で約120~180°しっかりとひねることです。
 コンデンサを上向きに引っ張らないでください。 水平方向に正しくねじると、コンデンサのリード線が弱い位置で破損し、コンデンサがPCBから外れます。
 この方法が正しく行われると、PCB上のはんだパッドに損傷を与えることはありません。
 コンデンサを取り外した後は、各パッドにまだ取り付けられているSMDコンデンサのリード線の残りの部分を除去するために、パッドにはんだごて(約290℃)を当てる必要があります。


・新しいコンデンサの設置

 最優先事項は、全ての回路でDC電流の通常の安定性を回復することです。 したがって、はるかに高品質のコンデンサを使用することが不可欠です。
 トラブルシューティングを試みる前にコンデンサの交換を行ってください。 多くの場合(ただしこれではありません)、コンデンサを交換することで全ての問題が解決され、それ以上のトラブルシューティングは不要です。
 私は交換のために新しいSMDコンデンサを使うことを拒否します。 現在の技術のSMDコンデンサは、従来のTTH(スルーザホール)コンデンサよりもはるかに信頼性が低く、はるかに故障しやすい。
 それぞれの新しいTTHコンデンサは、元のSMDはんだパッドに取り付けるための準備が必要です。 これらのはんだパッドは、3~5mmのリードピッチのコンデンサに適しています。 (限られた垂直方向の隙間のために)水平に取り付けられなければならないコンデンサに対しては、創造性が必要とされる。 前の大きな写真に示されている取り付け位置に注意してください。 垂直に取り付けるコンデンサの場合は、この写真のように新しいリード線を曲げて切断します。

 


記事に示されているSMDコンデンサ(40個?)を
全て交換するのは作業的に危険を伴います。

 

また、手前のCPU基板に不具合があることが分かって
いるので、そこに含まれるSMDを交換してみます。

 

記事に示されていた「SMDコンデンサの取り
外し」に従い、簡単そうなものから作業します。
 

ペンチで引きちぎる方法は全く意外でした。
説明通り、ペンチで掴み水平にひねります。

 

SMDコンデンサのアルミ製端子が簡単に引きちぎれ、基板の配線パターンを全く
傷付けることなく取り外すことができます。下手に半田ごてを当てると・・当てようにも
半田面が部品の下に隠れて当てることができません。素晴らしいテクニックです。

 

あらためて配線パターンに半田ごてを当て、引き
ちぎれて残っている端子の破片を取り除きます。

 

同時に配線パターンの
半田面を綺麗に整えます。

 

新しい10µFのケミコンを付け直します。
記事の指示通りSMDは使用しません。

 

最近ケミコンのサイズも劇的に小さく
なっており、高さも問題ありません。

 

次に基板右端に取り付けられて
いる220µF16Vを交換します。

 

引きちぎった後、半田ごてを軽く当てる
だけで半田面が綺麗に整います。

 

基板中央左側の、ピックアップユニット制御用IC周りのSMDコンデンサを交換
します。部品が込み入っているので半田ごてを慎重に当てなければなりません。

 

据え置き型プレーヤーなので内部空間には比較的
余裕があります。ひと通りSMDを交換しました。

 

取り外したSMDコンデンサです。ほぼ根元で
端子が切れているので、部品の点検は無理です。

 

この段階で一度動作を確認してみます。
電源を入れリモコンを操作すると・・、

 

不具合はまだ解消されていません。いったん電源が
切れ、再びONになる動作(再起動)を繰り返します。

 

このシールドケースの内部をまだ点検もしていません。記事はこの中のSMDコンデンサも
全て交換するよう求めています。正直なところ、この先へ進むべきか躊躇してしまいます。

 
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