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工房ビルトインマルチエアコン工事(2021.10.22)

 
かつて工房の各部屋に設備されていたビルトインマルチエアコン(の跡)です。
2015年の冬に故障し、「ビルトインマルチエアコンの故障と修理」で途中まで
修理を進めたものの、その後作業を諦めてしまいました。パナソニック以前の
ナショナル製エアコン、あまりに旧式で例えば冷媒は悪名高いR22(HCFC)
でした。思い切って入れ替えようと考え、旧ユニットを自力で撤去したものの、
色々訳があって長年放置したままです。室内機撤去後、間抜けに空いた穴に
段ボールを張り付けて冷気や熱気を塞いだものの、余計間抜けに感じます。

 

3部屋に取り付けられていたナショナル製
1方向吹き出し天カセ型ユニットです。

 

3台のうち2台は、排水ユニットが破損して
水漏れが発生。自分で修理したものです。

 

室内機は単に熱交換を行うだけなので
特に深刻な故障はありませんでした。

 

天カセタイプ室内機の型番は
「CS-BMG40RC2」、4kWです。

 

1部屋だけ壁掛け型ユニットが
取り付けられていました。

 

型番は「CS-MG40T2-W」、
こちらも4kWのユニットでした。

 

1階玄関横と2階ベランダに室外機が置かれ、
各々に室内機が2台ずつ接続されていました。

 

「CU-MG67R2」は2ポートの6.8kW室外機で、
重量76kgと最近モデルの1.6倍もあります。

  

かろうじて「CU-MG67R2」の仕様が残っています。
資料が消滅してしまわないうちに保存しておきます。

 

重量もさることながらこれだけのサイズがあります。フレア
配管は液側が径6.4(2分)、ガス側が径9.5(3分)です。

 

3階南側居室は、室内機を取り外したまま塞いでもいません。
この空洞から冬は冷気、夏は熱気が流れ込んでいました。

 

2階南側は壁掛けエアコンで凌いでいたものの、
夏冬の3階は部屋として使用できないでおりました。
 

室内機を取り外した空洞に見える隠蔽フレア配管を確認すると、
ガス側が異様に太く、径12.7(4分)が使用されています。
 

1階南の壁掛け型が取り付けられていた跡です。壁面からの
取り出しが短く、室内機への接続が簡単ではありません。

 

隠蔽配管のガス側に径12.7(4分)が使用されていた理由は、室内機側の
配管接続口が径6.4(2分)と径12.7(4分)だからです。現在ではよほど
大型のエアコンでない限り、径12.7(4分)のフレア配管は見かけません。
室外機ガス側フレア管は径9.5(3分)なので、径12.7(4分)との接続
には特殊なジョイント(異径フレアユニオン)を介在させる必要があります。
 

2016年12月に、埼玉県三郷市にある中古機械屋のような
店舗でこのダイキン製のマルチエアコンセットを見つけました。
 

2セット各々に室内機が2台ずつ付属している中古機で、
確か1セット1万円くらいだったと思います(怪しさ満点)。

 

定評のある「ダイキン社製」であることと、冷媒が最新の「R32」であること、
ほとんどそれだけで購入を決定、2回に分けて普通乗用車で工房へ運び
ました。購入後に調べてみると、何と現在も販売が続いているダイキンの
主力製品です。商品名ハウジング・マルチエアコンの現行品というわけです。
しかし、どこかの解体現場から急遽取り外してきたそうで、配管は途中で
引きちぎられ、ポンプダウンされたかどうかも定かではありません。この
時点ではあくまで自力で取り付け作業も行うつもりで、ダメモト覚悟です。
 

 

 

2台の室外機は、6.0kWの2M60RVと6.8kWの3M68RVです。ダイキン社の
システム構成によると、前者は室内機2台で合計能力7.2kWまで、、後者は3台で
10.0kWまで接続することができるそうです。3M68RVに室内機を2台だけ接続して
運転することは問題ないようです。仕様的には工房に最適です(壊れていなければ)。
 

2M60RVと3M68RVの仕様一覧です。ダイキン社の
データベースサイトからダウンロードすることが可能です。
 

フレア配管を確認すると、液側が径6.4(2分)、
ガス側が径9.5(3分)と現在の標準です。

 

現行機種なので室外機・室内機とも新品がまだ販売されて
います。システムマルチの室内機はバリエーションが豊富です。
 

壁掛けタイプも現行販売されています。
1階南側は壁掛け型で更新します。

 

購入したセットの正確な構成です。2M60RVには2.8kWの室内機
C28RCVが2台付属していました。1階南北の2部屋に設置するので
夏季の流入熱量が少ない北側にC28RCVを取り付け、南側は壁掛け
タイプなので4.0kWのC40RTVを1台新品購入します。C28RCVが
1台残りましたが、現行機種なのでオークションで一発で売れました。
 

3M68RVには5.6kWの室内機C56RCVと、2.8kWのC28RCVが
付属していました。2・3階の南側は1日中陽が入るので、夏の猛暑対策に
大きな冷房能力が必要です。屋上からの熱気を考慮し3階にC56RCV、
2階は2.8kwでは容量不足なので5.0kWのC50RCVを新規に購入。
5.6kW+5.0kW=10.6kWで、3M68RVの接続容量制限10kWを
僅かにオーバーする点が少し心配です。不要になるC28RCVはやはり
オークションで一発処分できました。とにかく安上がりに進んでいます。
 

いくらか気力が残っていたのか、壁掛け型C40RTVを壁面に掛けるところまで
作業したのが2017年の途中・・。以来、作業に取りかからねばと思いが募るも
スタートできずに月日が流れるばかり。猛暑の中次の秋には、厳寒の中次の春
には絶対取り付けるぞと誓うも、いざ春・秋になるとエアコンのことなど忘れて
しまいます。もちろん夏・冬の厳しい気候下での作業はとても体が持ちません。
何となく暑さ寒さを凌ぐうちに早や4年。フレア管の口径違い、既存隠蔽配管の
再利用には高圧窒素による洗浄が必要、そもそも中古品のユニットがまともに
作動するのか、冷媒の追加も必要なのでは・・等々、心配ばかりしていました。
 

ビルトインエアコン付きの優雅なオフィスライフが崩れてから既に5年。ある事が
きっかけで、水戸市で長く仕事をされているエアコン工事のプロフェッショナルと
ささやかな接点を持つことに。ビルや施設用の大規模エアコン設備を手掛ける
熟練技術職人の会社です。9月初めの残暑の中、小野瀬社長が直々に工房へ
おいでになり、もはや手に負えなくなったビルトインマルチエアコン工事の相談に
乗って下さいました。これまでいくつかの工事業者に問い合わせたことがあり
ますが、いずれも技術的に無理だとか法外な見積額で折り合いませんでした。
小野瀬社長の回答は「多少の問題はあるがやりましょう」。製品販売が主では
なく、多くの熟練職人を抱える技術屋社長の言葉には強い説得力があります。
繁忙期を過ぎた10月初旬、普段はお休みの土曜日に、社長以下5名の職人
集団が工房にやってきました。技術職人御用達のワンボックスカーには専門の
工具や資材が満載です。社長たちは完全に「ヤル気」、えらいことになりました。
 

プロ仕様にカスタマイズされ、走る用具・資材庫と化した
ワンボックスカー内部です。技術資料も搭載されています。
 

高圧窒素ボンベは、配管洗浄ではなく配管接続後に
圧力をかけてリークの有無確認に使用するそうです。
 

会社出発前に作業分担されているようで、
工房に到着するやいきなり作業が始まります。

 

こちらが小野瀬社長(写真左)です。昭和44年の
先代による創業以来、55年の歴史を受け継がれます。
 

室外機の設置作業から追っていきます。1階南北
2部屋用の2M60RVを定位置に移動させます。

 

玄関横の外壁に配管やケーブルが出ています。
自力で取り外した後、だらしなく放置していました。

  

元の配管を加工して、接続端を整えなければなりません。
口径の違いを解消するため異径フレアユニオンを用意します。

 

比較的年配の職人さんが淡々と作業をこなしていきます。
身の動きによどみがなく、熟練職人らしさを感じます。

  

ガス溶接機を取り出し点火します。銅パイプ
専用のロウ付け用トーチヘッドのようです。

 

ロウ付け作業が始まりました。元のガス側
4分フレア管に3分フレア管を継ぎ足すようです。

 

異径カプラーを使用せず、4分管に3分管を
差しこんだ状態でロウ付けしているようです。

 

接続部の周囲を満遍
なく加熱してから、

 

リン銅ロウ棒を溶かし付け、接続部の
周囲に均一に行き渡らせます。

 

決して広くはない限られたスペースで
道具を見事に取り回しています。

 

室外機の接続ポートに余裕をもってつなげられる
よう、液側・ガス側ともフレア配管が延長されます。
 

フレア管が露出した部分をパイプ状の断熱材に
通して覆います。この辺りの小細工もまた見事です。

 

接続ポートとの距離の取り合いを慎重に
決定し、配管の先端をフレア加工します。

 

フレア加工を終えて室外機のポートに接続して
います。2系統4本の配管が綺麗に揃います。

 

接続作業が完了すると、プリント基板の
アートワークを思わせるような光景です。

 

重量45kg前後の室外機をこの状態に設置・安定させる
だけでも大変です・・が、あっさり片付けてしまいます。

 

外壁の配管取り出し口にカバーを取り付け、周囲を
パテで覆います。この小技がまた抜群に美しい

 

2階ベランダに移動し、もう1台の室外機
3M68RVの接続作業にかかります。

 

室外機2台の設置と配管接続を担当されて
いる職人さんです。とにかく身のこなしが機敏。

 

火力の元はプロパンとブタンの混合ガスかと
思いますが、ボンベのラベルを確認できません。

 

トーチヘッドから出続ける高温の燃焼ガス、気を抜くと
火災や爆発に直結する危険を鮮やかにかわします。

 

こちらも外壁面からの配管取り出し長さが
不十分で、フレア管を継ぎ足して延長します。

 

継ぎ足し接続部をロウ付けしています。
トーチヘッドを操る安定感抜群の手技です。

 

分の配管は頑丈でほとんど曲げられませんが、職人の
手にかかるとアルミ材のように素直に形が整います。

 

狭い空間内で中腰になったり膝をついての作業は
重労働のはずです。が、へこたれる素振りも見せません。

 

取り出し長さが正確に整えられ、新しいフレア
ナットが入り完璧にフレア加工されれました。

 

室外機本体を右方向に移動すれば接続ポートに
ぴたり合致します。完璧に計算されています。

 

次に室内機の取り付け作業を追います。1階北側に2.8kW天カセユニットを
嵌め込みます。先ほどの老練な職人さんとは打って変わり、こちらはピカ一の
若手職人さんです。ナショナル製の旧ユニットとは諸元が異なるため、天井の
嵌め込み穴サイズを変更しなければなりません。正確に採寸し、ジグソーで
石膏ボードをカットします。ジグソーを操作する手元が実に安定しています。

 

1階北側は天井が高く、中型の脚立を使わないと
届きません。その脚立上で面倒な作業をこなします。

 

面倒で繊細な取り付け作業には、強靭な下半身による
安定姿勢が不可欠です。しかもこれだけの工具を装備して・・

 

高い脚立に登った先は、室外機と同じく古い
フレア配管を再利用できるようにする作業です。

 

この狭い空間に手を入れて、両腕に血液を送り込みながら
作業を続けるわけです。新しいフレアナットが付いています。

 

そして新しいユニットを担ぎ上げ、ほとんど
一人でアンカーボルトに固定してしまいます。

 

これがどれだけしんどい作業か、元のユニットを
自力で外すときに思い知らされています。

 

フレア管を接続し、電気配線、排水ホースの
取り付けと作業が淡々と進んでいきます。

 

化粧カバーを嵌め込むと作業終了です。よどみなく
作業をこなす職人さんの体力は、凄まじいばかりです。

 

2階南側、工房事務室・設計室として使用している部屋です。滅多に掃除など
しないにもかかわらず、作業前に丁寧に養生して下さいました。天井の穴を
応急で塞いでいた段ボール板は既に取り払われています。様々な作業現場を
経験されてきたのでしょう、あれを移動して、これをどかしてなど一切言われま
せん。ぎりぎりのスペースに脚立を置き、動線を確保しながら仕事を進めます。

 

こちらも若手の職人さんが担当されています。
天井開口部をサイズ変更し周辺を整えます。

 

元の配管に不足分をロウ付けします。
この狭い空間内でガスバーナーを操ります。

 

銅製のフレア管はバーナーの高熱を急速に
伝達します。濡らしたウェスで養生されています。

 

継ぎ足したフレア管の先を加熱しています。フレア加工
しやすくするために焼きなましていると思われます。

 

開口部内で液側・ガス側の両フレア配管、
排水管(ドレン)の準備が整っています。

 

工事の直前に購入したC50RCV、5.0kWの
天カセユニットです。施主支給ってことです。

 

茨城エヤコンさんはダイキン社の施工に大きな実績があり、
製品の扱いはお手の物です。社長(左)が再登場です。

 

やはり一人でユニットを担ぎ上げ取り付けてしまい
ます。慣れているとは言え、とても真似できません。

 

新しい室内機は2個口で配送され、もう
1個には化粧カバーが梱包されています。

 

化粧カバーを取り付けると
2階南の作業も完了です。

 

並行して3階南側の工事も進みます。3面窓に加え屋上からの
熱流入もあるので、5.6kwの中古室内機を取り付けます。

 

ドレン管(排水)の延長が必要だったようで、
新しい排水ホースが継ぎ足されています。

 

1階南側には元々壁掛け型が取り付けられていました。以前に自力で
壁に掛けておいただけの室内機ですが、壁面からのフレア管や排水菅の
取り出しに問題があり(やはり取り出しが短い)、その作業を行うために
いったん降ろされています。1階南北2部屋のエアコンは、露出配管に
よる接続に変更しようとして、途中まで作業したことがあります。作業の
しんどさに挫折してしまったことも、プロにお願いする大きな理由です。

 

僅かこれだけの取り出しで、よくぞ
(元の)室内機を設置できたものです。

 

ここでもフレア管の延長が必要で、とりわけ
狭い隙間の中でロウ付け作業が行われます。

 

排水管(ドレン)に至っては、ほぼ壁面内部に
埋まっている状態で取り出しに苦労しそうです。

 

しかし、この見事な仕舞をご覧下さい。ここで作業
されている職人さんははるかに手練れています。

 

延長された取り出し長さは、新しい室内機側の
配管位置にミリ単位で揃えられています。

 

フレアナットを締め込んだ状態で液側、
ガス側、排水ホースが綺麗に並びます。

 

この正確さで作業するから、スペーサーで持ち上げていた室内機本体が
取り付けパネルのツメに一発で嵌まるわけです。壁掛け型の設置作業は
自分でも何回となくやってきましたが、到底埋められない実力差を感じます。

 

室外機2台、室内機4台とも設置作業が終わり、
配管内の真空引きと冷媒ガス充填が始まります。

 

と思いきや、逆に高圧窒素を充填し
配管内の圧力が下がらないか調べます。

 

普通は配管内を真空引きして、圧力が戻ら
ないか(上昇してこないか)を調べるのですが・・

 

それはエアコンの運転状態に相反します。運転中の配管内は
正圧なので、加圧した状態でリークを調べるべきなのです。

 

フレアの接続に問題ないことが確認されると、
いよいよ配管経路内を時間をかけて真空引きします。

 

プロ御用達の2ステージ真空引きポンプです。一定の
時間真空を保つことで、配管内の水分を回収します。

 

マニホールドゲージを介して、2ポート分を同時に
真空引きしています。このような使い方があったんだ!

 

室外機のサービスポートにコントロールバルブが接続
されています。真空引きや冷媒ガス充填には必須です。

 

日が暮れかかる夕方、全ての作業を
終え社長が自らリモコンを操作します。

 

1階南側の壁掛け室内機が作動し始めました。
取りあえず何らエラーは表示されません。

 

今どきのエアコンシステムは、ほとんどのトラブルを
自己診断し対応するエラーコードを表示します。

 

1階北側の電源を入れます。同じ室外機で
2台の室内機が同時に作動しています。

 

3階南の天カセも問題なく作動しています。つまり
もう1台の室外機も正常に動作しています。

 

2・3階南側で室内機2台の同時運転も問題ありません。
僅かに接続容量を超えていますがエラーは出ません。

 

朝9時から5名のプロ集団によって進められた、室外機2台、室内機4台の
取り付け工事が夕方に終わりました。あれだけいくつもの心配事を抱えて
いたのに、職人チームによる淀みなく流れるような作業を経て、何の遜色も
ない完璧な結果が叩き出されました。自分自身はもとより、これまでに相談
してきた多くの専門業者が匙を投げ、絶望視していた技術的難題が完全に
解決された瞬間です。小野瀬社長以下、職人さんたちの持つ技術レベルと
熟練度は計り知れません。そして、難題山積の中に解決の道筋を見出し、
仕事を請け負う判断をされた小野瀬社長、その技術経験の奥深さとお人柄
にはただ頭が下がるばかりです。さすが多くの熟練職人さんたちを束ねる
だけのことがあります。他方、先のことも考えずかつて手当たり次第に集めた
中古機材が、結局ひとつも無駄にならず立派なビルトインマルチエアコンと
して蘇ったことは守谷工房的に大変幸せなことです。有難うございました。

 
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