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業務用スチームアイロンの修理(2020.12.24)

 
過去、スチームアイロンの修理記事を2件アップしております(下記リンク)。
記事をご覧になった方から同じくスチームアイロン修理のご依頼がありました。
工房に届いてみると、異様に大きな箱に梱包されており、持ち上げると異常に
重量があります。取り出すとAriete社の製品で、本体とは別にアイロン台の
ような装置とセットになっています。業務用に使用される製品のようです。
http://techbase.biz/Repair3/Steamiron.htm
http://techbase.biz/Repair2/DelonghiIron.htm
 

製品名はStiroMatic BRAVO
画像検索で写真が何枚も出てきます。


型番はモデル4262、現行機種の
モデル2200に続く息の長い製品です。
 

アイロン本体は意外と重量がありません。
業務で長時間使用するのに適しています。
 

アイロン台を兼ねているこの装置は
スチーム発生器(ボイラー)を内蔵しています。

 

電源を入れても本体が触れる程度にしか温まらないそう
です。先にスチーム発生器(ボイラー)から点検します。

 

カバーの固定にはトルクスネジが使われていますが、
小型のマイナスドライバーで緩めることが出来ます。

 

カバーを開けると大きなボイラーが現れます。
スペックによると容量が900ccもあります。

 

アイロン側のヒーターが正常に機能していないので、
まず電力が供給されているのか確認します。

 

電源コードからボイラー側の電源スイッチを経由し、スチーム管と並行する
コードによりアイロン側に電力が供給されます。その出口部分で電源電圧
(AC100V)が確認できます。アイロンに電力が送られていることになります。

 

アイロンの内部を点検しなければなりません。
どこから分解できるのか、いつも悩みます。

 

温度調整ダイヤルとその下のカバーが一緒に
外れてきます。嵌め込まれているだけです。

 

ダイヤルの回転を内部のサーモ
スタット軸に伝達する金具です。

 

カバーの下から6角ネジが現れました。
柄の長い6角ドライバーを用意します。

 

アイロンのハンドルが邪魔になり、普通の
6角レンチでは手間がかかり過ぎます。

 

ボイラーの高温を伝わりにくくするためでしょう、
ネジにゴム製のブッシュが入れられています。

 

アイロン後方を分解します。電源
コードの奥に固定ネジがあります。

 

カバーの後方半分が分離します。
一般的なアイロンと変わりありません。

 

電源コードとスチーム管が
内部に引き込まれています。

 

狭い空間に配線と配管が要領よく収められて
います。電源コードの固定具を外します。

  

スチーム管の接続口です。2個の
クリップで固定されています。

 

ラジオペンチでクリップを解除します。金属部品の
腐食が見当たらないのでスチームの漏れはないようです。

 

ボイラーからのスチーム管
(ゴム製)を抜き取ります。
 

本体にハンドルを固定する
もう1本のネジです。
 

絶縁性を高めるため6角ネジの頭に
樹脂製のキャップが被せられています。

 

6角ドライバーを入れて
ネジを緩めます。

 

もう1本の固定ネジが外れました。こちらも
ゴム製ブッシュが入れられています。

 

本体からハンドルを引き離すため
スチーム管を内部に押し戻します。

 

ハンドルは本体上半分の金属カバーに固定
されています。金属カバーと一緒に分離します。

 

隙間が広がり内部を確認することが出来ます。
スチーム管の取り付け口とサーモスタットが見えます。

 

本体右側面に温度ヒューズが取り付けられています。これまで
アイロンの故障のほとんどが温度ヒューズのトラブルでしたが、
今回もまた・・業務用アイロンでも・・温度ヒューズでしょうか。

 

耐熱性のテフロンチューブを被せた状態で
金属製ステーにより固定されています。

 

ステーを広げて温度ヒューズを取り出します。
アイロン修理では必ず点検する部品です。

 

導通が全くありません、温度
ヒューズが完全に切れています。
 

一方、発熱体(ヒーター)の導通を確認すると20Ω
ほどの抵抗があります。発熱体は問題ありません。

 

取り出した温度ヒューズです。スチームの出ない空焚きや
連続使用時間を超えた使用により切れるようです。

 

しかし、定格温度以内でも繰り返し熱ストレスを受けることで
切れる可能性があります。240℃の温度ヒューズです。

 

工房の在庫部品に丁度
240℃のものがあります。
 

240℃に晒される可能性のある場面で
半田付けによる接続は出来ません。

 

金属環を用いて圧着により接続
します。アルミの金属環を用意します。

 

元の温度ヒューズの端子を少し残しておき
新しいヒューズ端子を重ねて圧着します。

 

このくらいぶっ潰して
おけば大丈夫でしょう。

 

温度ヒューズの両端子とも接続します。
電力が発熱体に供給される途中に入ります。

 

元の部品に使用されていたテフロン
チューブです。再利用します。

 

残念ながら金属環を通過できないので
金属ステーに挟まれる範囲に被せます。

 

金属環が露出している部分も覆うため
ひと回り太い熱収縮チューブを被せます。

 

温度ヒューズの他端は、ビニルコードを介して発熱体の端子に
金具で接続されます。外した状態でチューブを入れます。

 

テフロンチューブで保護されている
部分を金属ステーの内側に入れます。

 

金属ステーを折り曲げて
温度ヒューズを固定します。

 

上側カバーやハンドルを組み付け、
後部の配線と配管を元に戻します。

 

スチーム管を接続し固定用の
クリップを元の位置に掛けます。

 

あらためて動作を確認します。アイロンの
電源、ボイラーの電源ともONにします。

 

電源ONの状態で、シーソースイッチの
ボタンがオレンジ色に点灯します。

 

アイロン側にもパイロットランプが
あり、オレンジ色に点灯します。

 

放射温度計でアイロン底面の温度を
確認します。一挙に上昇してきます。

 

ボイラー側のこのダイヤルは
スチームの吹き出し量を調整します。

 

アイロン側のボタン操作により
ボイラーのバルブが開閉します。

 

スチームが勢いよくガンガン出てきます。アイロン本体からボイラーを切り離したことで
大容量かつ高出力のボイラーを利用できます。同時にアイロン本体は、限られた空間に
ヒーターとボイラーを無理に組み込む必要がなく、ボイラーが無い分軽量に設計できる
わけです。冒頭で「業務用の製品?」と書きましたが、修理を終えてみるとそこまで
堅牢な造りではないように思います。Ariete社の製品ラインナップからしても、やはり
一般家庭用で使用頻度や使用時間が長いユーザ向けの製品でしょうか。「分離型」に
何か別物の雰囲気を感じましたが、月並みに「温度ヒューズ切れ」が故障原因でした。
さて、疑問が一つ残ります。「電源を入れても本体が触れる程度にしか温まらない」、
逆に言えば「触れる程度に温まっていた」のは何故だったのでしょうか。ボイラーが
機能していてアイロンにスチームが送り込まれていた、と考えれば説明がつきます。

 
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