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パイオニアPD-F1007(2023.2.2)


受験浪人で予備校生活をしていた頃、入り浸っていた喫茶店に
ジュークボックスが置いてありました。硬貨を入れて「心の旅」や
「みずいろの手紙」を聞いたものです。PD-F1007は、ジューク
ボックスのアナログレコードがCDに置き換わった製品です。何と
301枚のCDを収納し再生できる、「そこまでやるか」モノです。
 

25連装のPD-F25Aや50連装のPD-F51を修理したことは
あるのですが、その上に101連装のPD-F1005や、まして
このPD-F1007が存在したことは知りませんでした。実際に
CD301枚がディスクラックに装填されるとこのような風景になり
ます。この面倒極まりない機構が、うまく動作しないトラブルです。

https://blog.goo.ne.jp/kankanwa/e/4d970fc32b8255151bd57c08a478128f
https://twitter.com/varuttidragon/status/1481966022467162115/photo/1
より左右写真を引用させていただきました。

 

既に本体の上カバーを取り外し、
分解作業の闘いが始まっています。

 

上カバーの直下に信号処理や制御の
一切を担う回路基板が取り付けられています。

 

背面カバーへの固定分も
含めネジを全て緩めます。
 

入り組んだケーブル接続も
全て引き抜きます。
 

信号用のFFCと電流容量の大きい
リボンケーブルが併用されています。
 

リボンケーブルは差し込み口を
押し込むことで脱着できます。
 

大きな1枚基板が
ようやく移動します。
 

基板の下は、CD301枚を収納する巨大な
ディスクラックとCDドライブユニットです。

 

大きなドーナツ形の内側に
固定ネジが打ち込まれています。
 

見当を付けながらネジの
位置を探り当てていきます。
 

そうは言いましても、円周に沿って大体
バランス良く配置されているものです。
 

4本の固定ネジの
最後の1本を緩めます。
 

さぁ、でかいドーナツがドライブ
ユニットごと持ち上がってきます。
 

と、本体手前の上端に
ツメによる嵌合があります。
 

嵌合を解除するといよいよ
ラック全体が持ち上がります。
 

先ほどの嵌合部の下には、CD収納部の
スライド式開閉ドアが組み込まれています。
 

ランクが持ち上がると、金属製
筐体の底面が見えてきます。
 

まだケーブル接続が残っています。
底面から立ち上がっているようです。
 

他のリボンケーブルと一緒に
束ねているタイラップを切断します。
 

立ち上がっているケーブルは、ラックを通り
抜けて本体右手前の基板に延びています。
 

最後のリボンケーブルを引き抜き、ドーナツ形の巨大な
ディスクラックが取り出されて完全に姿を現しました。
 

中心部に開いた穴の中にドライブユニットが組み込まれています。
覗き見ることはできますが、手を入れられる状態ではありません。
 

ディスクラック上部を覆う円形部品
(センターポール)の固定ネジを緩めます。
 

CDを引き込むガイドとなるアームに
沿って、センターポールを引き抜きます。
 

ディスクラックの一角で、外周から中心に向かってアーム
ガイドが跨っています。ラックが回転してアームガイドの直下に
来たCDを、内部のアームが中心部まで引き込んでCDドライブに
セットします。恐ろしく手の込んだ複雑極まりないメカニズムです。
 

ドライブユニットには
まだ手が届きません。
 

ディスクラックとセンターポールを連結する
ディスクガードが、ドライブを取り囲んでいます。
 

固定ネジを緩めると簡単に外れます。
今度こそCDドライブユニットが露出します。
 

その直後に、何やら不自然な点に気付きます。
このスプリングの飛び出しは何でしょう。
 

CDドライブの手前に取り付けられているアームの駆動
ユニットです。ギヤとカムが複雑に組み合わされています。
 

先ほどの不自然なスプリングはこのユニットの
一部のようです。固定ネジを緩めて外します。
 

黒い樹脂製の部品がアーム本体、スプリングは
元々このアームに掛けられていたようです。
 

所定の位置から外れて、外に飛び
出したことが容易に想像できます。
 

スプリングの下端はこの突起に掛かります。
右側はアームを駆動するドライブカムです。
 

アームの内側に、いかにもスプリングの
上端が掛かりそうな突起があります。
 

アームの回転に復元力が戻り、ドライブカムにより一定の軌跡を
描いて運動します。アームが壊れた状態では、CDが正常に引き
込まれるわけがありません。これで解決すると良いのですが。
 

ところで、ギヤホルダーから出ているシャフトに
アームを差し込んだだけでは固定されません。
 

手を離すと抜けて来るので、ワイヤーを
使って簡易的に脱落を防止します。
 

アームが脱落しないまでも、少し浮いたことで
スプリングが外れたのではないでしょうか。
 

駆動プーリを手で回転させることで、
アームが正しく動作するか確認します。
 

ディスクラックの外周近くまで
伸びていたアームの先端が、
 

プーリの回転により中心に
向かって移動してきます。
 

さらに移動して、CDをドライブに
セットする位置まで到達すると、
 

CDドライブのクランパーが閉じてCDを
固定し、アームの先端がガイド内に隠れます。
 

作業する手がしばし止まるほど
精巧・絶妙なメカニズムです。
 

感心している場合ではありません。
機構が復旧できていれば良いのですが。
 

複雑な構造・部品構成を
元通りに組み上げます。
 

ディスクガイド、センターポールを
組み付けてネジ固定します。
 

ディスクラック全体を
筐体内に戻します。
 

そして、回路基板を取り付けて全てのケーブルを
接続します。何度も繰り返したくはない作業です。
 

ケーブルを元に戻してみると電源を始め無反応になること・・って結構
あるのですが。取りあえず電源が入り、ディスプレイの表示も正常に
出ています。フード(スライド式開閉ドア)内で照明が点灯しています。
 

フードの開閉ボタンを
押してみます。
 

スライダーモータが作動して
フードが右横方向に開きます。
 

適当な位置にCDを2枚
セットしてみます。
 

再び開閉ボタンを押すと、フードが
閉じてディスクラックが動き出します。
 

ディスクラックが反時計周りに回転し、セットしたCDが右方向に
移動していきます。それはもう、ただ目を見張るばかりの光景です。
 

全301枚が装填された状態での
回転は、さぞ凄まじいことでしょう。
 

2枚のCDが本体左側まで移動し、
アームガイドに近付いてきます。
 

アームガイドの真下に来たところで、何か
センサーが検知するのでしょう、停止します。
 

続いて再生ボタンを押します。修理前は
ここから先で正しく動作しませんでした。
 

アームが伸びてきてCDの上側3分の1くらいをキャッチします。
スライダーモータの回転がリンクを介してアームを巧みに動かします。
 

先ほどプーリを手で回転させ確認した時と同様に、アームが
中心に向かって移動しCDが見事に引き込まれて行きます。
 

ドライブのスピンドル位置まで引き込まれ、クランパーが閉じて
CDを挟み込みます。アームは既にガイド内に退避しています。
 

CDが回転し始めました。ピックアップに劣化がなく正常に再生
できると良いのですが。もしピックアップ交換となれば、同じ分解
作業を繰り返しドライブユニットにアクセスしなければなりません。
 

ピックアップはまだ健在です、無事CDの再生が始まり曲間の
シークも快調です。CDのチェンジも何とか動作するようですが、
ジョグダイヤルやテンキーによる高度な操作、カスタム、ランダム、
プログラム再生などてんこ盛りの機能があるため、とても検証し
切れません。さて、我が家にも死蔵されているCDが300枚弱。
本棚を数段占拠していますが、それらの保管庫になりそうです。

 
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