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BOSEミニコンポDA-8・RA-8(2023.1.15)


「ミニコンポ」とBOSEが呼んでいたかどうかは分かりませんが、
かつて各社から一斉に販売されていた小型サイズのオーディオ
コンポーネントです。重厚長大指向が下火となり、限られた住居
スペースが省みられた結果でしょうか。CDプレーヤのCDA-8と
チューナー付きプリメインアンプRA-8をセットで修理します。
 

先にCDプレーヤのCDA-8を片付けます。トレイが
開閉しません、ほぼ駆動ベルトの劣化が原因です。

 

分解して部品交換により修理完了です。
何例か紹介しているので詳細は略します。

 

レシーバーRA-8はディスプレイの表示が暗いそう
です。FL管の寿命であれば修理不能となりますが。
 

電源を接続して
確認してみます。
 

「POWER/STANDBY」の
赤色LEDが点灯しています。

 

電源スイッチを押すとLEDが消灯し電源が入ります。
・・が、表示は暗いどころか何も表示されません。

 

これまでFL管表示の不具合は原則としてお断り
しています。同一部品はまず入手できません。
 

気乗りはしませんが、不具合を正確に
把握するため分解して調べます。

 

外装カバーを外すと内部の回路基板構成が分かります。
大きく上下に分かれた2枚の基板と放熱器、金属板で
シールドされた電源トランスが組み込まれています。
 

上側の基板を取り外します。
チューナーの回路基板です。
 

背面の端子パネルにも
ネジ固定されています。
 

長辺側に下の基板と信号接続
するためのコネクタがあります。
 

アンテナ端子やステー
との
干渉を避けながら持ち上げます。
 

下側のプリメインアンプ基板です。メインアンプはSANYO製
2チャンネルのパワーアンプモジュールが使用されています。
 

配線パターン側(裏側)にアクセス
するには基板を外す必要があります。
 

パワーアンプモジュールの放熱器が
少々変わった取り付けられ方をしています。
 

この意味不明な金具を外し、さらに
放熱器底部の固定ネジも緩めます。
 

前面の操作パネルも
干渉するようです。
 

音量のツマミを引き
抜いておきます。
 

その奥に制御基板を
固定するナットがあります。
 

左側に並ぶ小型の
ツマミも引き抜きます。
 

前面操作パネルは左右側面に加え
底面側にも固定ネジがあります。
 

前面操作パネルが内側の
制御基板ごと外れます。
 

FL管は制御基板と一体になっています。
数本の小さな固定ネジを全て緩めます。
 

樹脂製カバーと制御基板を分離します。
基板上にプロセッサが取り付けられています。
 

基板の表側(部品側)を確認します。
製品専用に製造されたFL管です。
 

製品の仕様に合わせて専用に設計・製造される部品なので
およそ汎用品が存在せず相応部品による代替が利きません。
ところで、FL管の動作原理については全く不勉強ですが、
双葉電子工業株式会社から提供されている極めて分かり
やすい解説資料を見つけました。資料によると正確には
VFD(Vaccume Fluorescent Display)と呼ぶそうです。
 

VFDは真空にしたガラス製容器内にフィラメント(カソード)、
グリッド、アノードを組み込んだ3極真空管に似た構造です。
アノード電極には表示に必要な蛍光体が塗り付けられます。
 

タングステン製フィラメントが印加電圧により600℃程度に
熱せられ、飛び出した熱電子はグリッド(金属製メッシュ)の
正電圧で加速されてアノードに衝突します。アノードの特定
部分に電圧がかかっていると、蛍光体が励起され発光します。
 

もしVFDガラス管内の損傷や真空の低下がなければ、
点灯不良はアノードの印加電圧が原因かも知れません。
 

フロントガラス越しに横方向に4本のフィラメントが
見えます。左端2本の外部リードが一方の端子です。
 

右端2本は他方のフィラメント端子です。フロントガラス直下に黒く
焦げたような錆びたような痕が見えますが、不具合や何かの劣化
ではありません。解説資料によるとゲッターと呼ばれるバリウムの
蒸着膜で、ガラス管内の残留ガスを吸着し真空を保つそうです。
 

左側のリードがプリント基板を貫通して
裏側のパターンに接続されています。
 

右側のリードもパターンに接続されます。
この左右2点間にアノード電圧がかかります。
 

通電状態で回路計を当ててみます。先ほどの「輝度-アノード・グリッド
電圧」の特性グラフによると、十分な視認性を得るには20~30Vp-pの
電圧が必要ですが・・、なるほど電圧がほとんど印加されていません。
電源系統に問題があるのであれば、修理できる可能性があります。
 

アノード電圧がどこから供給
されてくるのかを探ります。
 

右側リードからの配線
パターンを辿ります。
 

基板の最下端まで
降りてきました。
 

そこから横方向へ延びて
FFCソケットの端子に至ります。
 

同じように左端リード
からの配線も辿ります。
 

基板の左端から下端を通り
FFCソケットに回り込みます。
 

左右リードからの配線2本が、FFCソケットの
右端で上下2本のピンに接続されています。

 

基板表側に取り付けられた
ソケットからFFCに橋渡しされます。

  

FFCの先は途中まで取り外したプリメインアンプ基板です。
アノード電圧の供給元はこちらの基板上にあるようです。
 

基板の取り外し
作業を続けます。
 

正確にはAC電源コンセントを載せる
小さな基板がもう1枚あります。

 

メイン基板と干渉するので
いったん外します。
 

背面の端子パネルは完全に
外す必要があるようです。

 

RCA端子を固定するネジを
含め結構な本数になります。
 

ようやく背面パネルが分離します。ONKYOの
製品に造りが似ている気がするのですが。

 

電源トランスからの配線2本を
コネクタ部で抜き取ります。
 

本体後方にスライドさせて
基板を取り出します。
  

1999年にスピーカーも含めたセットAMS-1の
コンポーネントとして発売されています。パワー
アンプモジュールによる出力は30W×2です。
 

アノードからの配線の
追跡を続けます。
 

FFCソケットの右端、ピンセットで
示す上下2ピンに接続されています。

 

発熱したせいでしょう、少し黒く変色した部分の
周囲を回り、別のソケット端子に至ります。
 

部品側を確認すると電源トランスからの
配線が接続されているソケットです。

 

電源トランスから出る2本の
配線のうちこちらの1本です。
 

ならば電源トランスの出力を
確認します、カバーを外します。

 

金属製シールドカバーとは別に、電源
トランス本体もネジ固定されています。
 

脱着の容易な割と
単純な構造です。

 

電源トランスの巻き線を
取り出す接続基板です。
 

基板側のコネクタを接続し給電
できる状態で電源を入れます。

 

10本の巻き線が取り出されており、導通や抵抗値を
調べた結果、計4組のコイルが巻き付けられています。
うち2組は中間タップが引き出され、写真右端の3本は
別のコネクタで増幅用電力として送られます。左端の
3本がアノード電圧印加用に使用されています。
 

コイル両端に供給される
AC電圧を確認します。
 

AC4Vくらいです。意外と低い電圧
ですが、基板上で昇圧するのでしょう。

 

左端と中間タップで電圧を確認
します。半分のAC2Vです。
 

中間タップと右端でも確認
します。やはりAC2Vです。
 

電源トランスは問題ないようです。メイン
基板に戻り3本の配線を逆方向に辿ります。
 

両端の2本はそのままソケットへ至りますが
中間の1本を慎重に追いかけて行くと・・
 

電子部品が実装された
区域に入り込んでいます。
 

2か所目の半田ランドで
部品面を確認します。
 

1か所目も2か所目も電解コンデンサの端子です。
すぐ隣にトランジスタがあり、高圧を発生する発振
回路を構成しているようです。発熱を伴うようで
トランジスタや抵抗器の周囲が変色しています。
 

まず、トランジスタが破損し、
発振していない可能性があります。
 

使用されているのは2SA1283
低周波電力増幅用の石です。
 

取り外して破損の有無を調べます。
配線側で半田を吸い取ります。
 

コレクタ-エミッタ間電圧-60V、コレクタ
電流-1Aの頼もしいトランジスタです。
 

デバイスチェッカーに
つなぎ良否を判定します。
 

結果は・・、問題ありません。当てが
外れました、TRが原因ではありません。
 

この辺りでようやくネット情報を調べると、多くの
場合で高圧回路のコンデンサ劣化が原因だと、
 

確かに、発振を伴う電源回路では電解
コンデンサの方が耐久性に欠けます。
 

何本も並ぶコンデンサの中から
適当に1本を外して調べます。
 

最初の1本目からいきなり
220uFのはずが23uF・・
 

新しい220uFに即交換します。
なけなしの在庫を投入します。
 

隣のもう1本の220uFも交換します。コンプリに
接続されて出力をスイングさせるのでしょう。
 

そのまた隣の100uFです。
これも十分に疑わしいところです。
 

が、予想に反して85uF。まぁまぁの
状態ですが、交換しておきます。
 

大元の大容量電解コンデンサも一応
調べておきます。煤が付いています。
 

やはり容量低下が進んで
おり、1640uF弱です。
 

同じ耐圧の3300uFは在庫がなく、
やや背の高いもので交換します。
 

電源を接続してみると、赤色LEDが点灯し
スタンバイ状態で・・表示が復活しています。
 

電源スイッチを入れると表示が切り替わり
操作に対応した情報が表示されます。
 

今ひとつ輝度が足りず安定しない印象ですが
少なくともVFD管が破損していないことは確かです。
 

安定した点灯状態を得るには、オシロスコープを使用してアノード
印加電圧や発振回路の中間波形を観測しさらに調整する必要が
あるでしょう。取りあえず、レシーバーの動作状態が分かるように
なっただけでも良かったと思います。と、ところが、実際に音声
信号を接続してみると、出力が全く出てきません。SANYO製の
パワーモジュールが破損しているのか、プリ段のどこかで信号が
途絶えているのか・・。どうも中古の基板を手に入れて交換して
しまった方が早いような気がしてきます。ですが今回はVFD管に
関して非常に良い勉強になりました。これまで諦めるしかなかった
修理の中で、今後は何とかなるものが出てくるかも知れません。

 
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