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LASER VELOCITY稼働へ 前半(2021.4.21)


工房の1階で長いことスペースを喰っているだけのレーザー加工機、
LASER VELOCITY(AQLV-400)です。中古で購入したものを
清掃・整備
し、レーザーが出力されるところまで作業を終えていました。
が、それは2017年4月のことで、以来丸4年もほったらかしでした。
工作機械用の1級部品ばかり使用した高性能機ですが、いずれ本格
稼働させたいと横目で眺めるうちに年月だけが過ぎていきます。



制御用アプリのLaserCut5.3は、取りあえずDEMO
モードで動作しています。データ保存が出来ないだけです。

 

例えば、作図機能により
正方形を描いてみます。

 

サイジング機能により1辺を
20mmに変更します。

 

まだ光軸調整も作業しておらず、レーザー
ビームのパワーも弱々しいままですが・・。

 

アプリと本体は接続できているようで、ヘッドが
動作してレーザーが走査した跡も残ります。

 

しかし、正方形のはずが縦横比1:2となり、しかも1辺
20mmではありません。初期設定が正しくないようです。

 

AQLV-400に関する情報は皆無に近く、もちろん
取扱説明書など購入時から付属していません。

 

ネット上で辛くも見つけたのが、Maker Lab Nagoyaさんに
同型機の設備があるという情報です。現役で稼働しています。
 

「市民の図工室」を謳うLabなので、アプリの設定ファイルを
参照させていただけないか、思い切って尋ねてみました。

 

ご親切にも、担当の方がいくつかの
イニシャルファイルを送って下さいました。
 

アプリに含まれるイニシャルファイル(.ini)には各レーザー加工機に固有のパラメータが
含まれているはずで、アプリが起動時に読み込むことで、機種固有の設定がされると
考えられます。例えば、テーブルのサイズやワークエリア、ヘッド移動速度の標準値や
上限、そして各軸を駆動するステッピングモーターの回転角当たりパルス数なども
含まれるのではないかと思われます。特に目を付けていたのは「LASER.ini」と
「syscfg.ini」の2つですが、いずれも300行近い膨大な設定情報を含み、結局の
ところモーターのステップ数を制御するパラメータは見つけられませんでした。正確には、
あれこれ設定値を変更してみましたが、どれもヘッドの動作には影響しませんでした。

 

LaserCut5.3を、DEMOではなくネイティブで起動すると、
このようなエラーメッセージが表示され終了してしまいます。

 

LaserCut5.3はUSBドングルによりプロテクトされて
います。ネットで販売されていますが1万円もします。
 

LaserCut5.3にドングルをシミュレート(クラック)するツールが
付属しますが、実際使い物になりません。本物を購入しました。

 

ドングルをセットすると、本来のLaserCut5.3が起動します。
これで今後不具合の原因からドングルの有無を除外できます。
 

AQLV-400の購入が2016年9月、最初の整備を終えたのが2017年4月、
Maker Lab Nagoyaさんから返答をいただいたのは2017年6月。しばらく間が
空いて、USBドングルを奮発購入したのは2020年の1月、振り返ってみると
情けなくなるほど呑気な進捗速度です。ここに来てなぜ作業を再々開したのか、
理由はメインに使用しているこちらのレーザー加工機(6040)。長年にわたり
工房の稼ぎ頭として働き続けてきましたが、やはり中国製低価格機ゆえにその
加工精度や安定性の低さが無視できなくなってきました。X・Y軸の駆動系を
高精度のリニアレールスライドに交換しようと考えています。しかし、ヘッド周りを
含む駆動系の構成に必要な様々な部品を、新たに設計・製作しなければならず、
そのためにはレーザー加工機が不可欠です。奇しくも「みらた」さんがおっしゃって
いるように、「レーザー加工機の製作に一番必要なのはレーザー加工機」なの
です。AQLV-400を実使用できるようにしないと、6040を改造できません。

 

最初に清掃・整備作業を行った時、本体の右側内部に
各軸の駆動基板が収められていることを思い出しました。

 

全く同じ回路構成が3組、それぞれX軸・Y軸・Z軸
ステッピングモータを駆動するドライバーです。

 

電源および入出力のコネクタに挟まれて
DIPスイッチが取り付けられています。

 

ドライバモジュールは「M542-05」、
ネット上に詳細なマニュアルがあります。 

8ページ目に「Selecting Microstep Resolution and Driver Output Current」の
解説があります。先ほどのDIPスイッチ、SW1~4のON・OFFにより出力電流、また
SW5~8によりステッピングモータの回転角(1.8度)当たりステップ数を変更します。

 

X・Y軸はSW5~8がOFF・ON・OFF・ON、
つまり6400steps/revに設定されています。

 

Z軸はOFF・OFF・ON・OFF、つまり
5000steps/revに設定されています。

 

X軸とY軸には完全な等方性が必要です。理由は
分かりませんが、X軸がY軸の2倍駆動されているので、

 

X軸のステップ数を2倍の12800steps/revに変更
してみます。SW5~8はON・OFF・OFF・ONです。

 

取りあえず正方形が描かれるようになりました。
Y軸のステップ数を2分の1にしても多分同じでしょう。

 

もう一つの問題は、アプリが指示する寸法と
実際に描かれる寸法が一致しないことです。

 

LaserCut5.3メニューの中に「Machine Options」の項目があります。
もう1台の「6040」で使用している「Corel Laser」よりもシンプルな構成
です。その中の「Worktable」メニュー内に、X軸・Y軸を駆動するパルス
単位数(Pulse Unit)を変更する項目があります。ここを調整してみます。

 

「Move」と「Need pulse」の数値を変更できますが、正確な意味や単位が
分かりません。「Move」はそのままにしておき、「Need pulse」を4000~
5000の範囲で変更してみます。機械的な仕様が不明なので、試行錯誤
するしかありません。「Need pulse」を変更しては、400mm×300mmと
ワークテーブル一杯の四角を描かせ、サイズを実測して修正を繰り返します。

 

実用上問題のない精度まで追い込みます。
再度20mmの正方形を描いてみます。

 

「M542-05」のDIPスイッチ変更も、「Need pulse」でカバー
出来たかも知れません。が、両者の役割がよく分かりません。

 

AQLV-400の整備が思いのほか進行し、本格的な稼働が視野に
入ってきました。こうなればレーザー管も新調して本来の出力(40W)を
取り戻したいものです。実は、しばらく前に注文しておいたレーザー管が
既に工房に届いています。1級部品で構成されたレーザー加工機が、
どのくらいの性能を見せてくれるのか楽しみです。後半に続きます。

 

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