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木製灯籠を作る その6(2020.9.10)
納期が目の前まで迫って来ました、すぐその後はお盆です。
木製灯籠を作るその5
の
最後に真鍮製の丁番を加工しました。ホームセンターで額縁用品のフロアを歩いて
いる時、ブロンズ色でしかも角が丸く加工済みの丁番を見つけました。急遽真鍮製を
見合わせ、こちらを採用することに。とにかく、完成を急がなければなりません。
*記事の
アップがかなり遅れていますが、実際には7~8月の製作事例です。
丁番の取り付け位置を決定します。
丁番自身の長さ1枚分を空けます。
開き戸がスムーズに開閉するよう正確に
取り付けるため、
ひと工夫
します。
いきなり木ネジを打たず、いったん
瞬間接着剤で固定しておきます。
位置の決めにくい開き戸側を先に接着
します。正確な位置に丁番を置くだけです。
接着剤で正確な位置に仮固定し
あらためて木ネジを打ちます。
丁番ネジ穴の中心に
キリで下穴を開けます。
丁番に同色の木ネジが付属
しているので助かります。
取り付け位置が僅かに狂うだけで、丁番の
回転軸が一致せず開閉に支障が出ます。
開き戸を本体に嵌め込み、丁番
本体側のネジ位置に下穴を開けます。
こちらもブロンズ色の付属
木ネジで固定します。
開閉時の擦れは一切ありません。気持ち良く開け閉めできます。
開き戸が取り付けられると、急に完成段階が見えてきます・・が、
やはりそうは行きません。今しがた打った
木ネジの先が、本体の内側に飛び出ています。
本体箱組みは所詮4mm厚のシナ合板製です。
いったん木ネジを抜いて、先を切り詰めます。
木ネジの接合力が十分ではない可能性が
あるので、ネジ穴に接着剤を充填しておきます。
元の灯籠の姿が、一挙に
復元されてきた印象です。
開き戸には簡単な錠が必要です。
開口部の端に小さな台を用意します。
建屋の前傾に合わせて断面を平行四辺形に、
高さは開き戸の厚みに一致するよう成形します。
開き戸上下高さの中央
あたりに接着します。
錠代わりにこの簡単な
打掛
を取り付け
ます。丁番と一緒に販売されています。
実は、この打掛と同色に揃えることが出来る
ので真鍮製の丁番は見合わせることにしました。
打掛のネジ穴側が開き戸の端に
来るよう位置決めし下穴を開けます。
付属の同色木ネジで固定します。
打掛が回転するよう少し緩めます。
切り欠きが下りて来る
位置に下穴を開けます。
木ネジを締め込まず、打掛の
厚み分を残しておきます。
元の灯籠には無骨にも家具用の
掛け金が充てがわれていました。
灯籠正面開き戸の取付作業を終えました。丁番や打掛など金具の見栄えも悪くない
と思います。開き戸と箱組み外周枠のセン材、箱組みのシナ材、台座のタモ材と
樹種がバラバラではありますが、全体的に白木による統一感が保たれています。
屋根のみがレッドシダー製で、赤味を帯びた色合いに重量感・安定感を感じます。
目指していた木製灯籠がようやく姿を現し、想像以上の存在感を放ちます。元の
灯籠が製作された当時に放っていた印象は、さらに鮮烈なものだったのでしょうか。
周囲から眺め回してみます。デフォルメされた
逆四角錐の視覚的効果を味わいます。
装飾のない背面は、それ故に外界を
遮断する強固な隠蔽性を物語ります。
外観をどれだけ眺め回しても飽きませんが、
あくまでも中に火が灯っての灯籠です。
受け皿の取り付けも終わっているので
蝋燭を1本、実際に点けてみます。
屋根裏に遮熱用の金属板を取り付けて
あるので、炎が立ち昇っても安全です。
工房作業室の照明を落としてみます。
暖かみのある炎色に周囲が一変します。
元の灯籠が製作された当時はおそらく手に入らなかったであろう、しかし現在では
ありふれた工作用プラ板に映る蝋燭の炎色です(当時は強可燃性のセルロイド板が
一般的?)。和紙の障子紙に見劣りしない、暖か味のあるほんのりとした明るさです。
夕刻のお墓参りで、現世に帰ってきた
魂や参列者たちを導く、
儚い灯
です。
しばし灯籠の奥深い暖かさを味わいます。
と、蝋燭が尽きたのか火が消えます。
開き戸を開けると蝋燭はまだ残っています。
本体内部で酸素欠乏を起こしたようです。
箱組みの気密性が高過ぎて、蝋燭を燃焼させる
酸素が供給されません。台座に吸気口を設けます。
今度は蝋燭が最後まで燃え尽きます。正面と背面の上部にある横に細長い
スリットが排気口になり、内部の空気が循環します。6月にご用命があり、
7月に入り製作を開始した灯籠が、納期を目前に完成に漕ぎつけました。
週の中頃からお盆期間に入る火曜日、傷を付けないよう発泡シートで厳重に包み
ご依頼主の元へ納品に出向きました。年配の奥様は大変喜んで下さり、そこで
依頼先を見つけるまでのご苦労を話して下さいました。石灯籠も多いことから、石屋
(石材業)にまで問い合わせされたそうです。家具屋が本業の守谷工房ですが、
家具とはまるで世界が異なる創造的製作の機会を頂戴し、大変良い勉強に
なったのと同時に、月日が過ぎることを忘れるほど楽しませていただきました。
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