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リビングチェア張り替え2(2024.4.14)


リビングチェア張り替え1では、座板と背板の古いクロスとクッションを
取り除き、新しいクッション(ウレタンシート)を張り付けるところまで
作業しました。続けて新しいクロス(レザーシート)を張り付ける作業を
進めます。フレームが堅牢でデザインもよろしいので、買い替えでは
なくレストアをお勧めして良かったのでは・・上手く行けばの話ですが。

 

張り替えに使用する合成レザーシートです。実際の
色合いを確認するためホームセンターで調達します。

 

生地見本でもあれば別ですが、印刷物や
ディスプレイを見て注文するのは危険です。
 

背板から作業します。前後両面に張り付けるため
半分に折り返して背板を覆うように採寸します。

 

ファミリー向けに赤みがかった明るいブラウンも
提案しましたが、このシニアテイストをご希望です。
 

切り分けたクロスを2脚の椅子に掛けてみます。
落ち着いた感じで悪くありません。フレームに
収まってみないと本来の印象は分かりませんが。

 

クッションを張り終えた
背板を用意します。

 

クロスは背板の上下方向に
2倍+αの長さでカットしてあります。
 

背板の下端側で折り返します。前後で
均等の長さになる位置を決めます。

 

位置を保ったままいったん
折り返し部分を戻します。
 

背板の後ろ側、ウレタンシートを
切り欠いた部分に接着剤を塗ります。

 

折り返してクロスを接着材を
塗った位置に押し付けます。
 

クロス側にも接着剤の一部が乗り移ります。
接着面の両面に接着剤が塗られた状態です。

 

この状態で接着剤がべとつかなく
なるまで5分ほど乾燥させます。
 

再びクロスを折り返し、接着
部分を強く押し付けます。

 

ゴム系接着剤はこの手順によりほとんど
瞬間接着剤のような使い方ができます。
 

背板2枚分(2脚分)を同時に作業していきます。少し
作業が進むたびにフレームに戻して様子を見ます。

 

開いている3辺を固定していきます。
タッカー(ホチキス)を使用します。

 

先に背板の上端側を閉じます。後ろ側の
クロスをテンションをかけながら引いてきます。
 

ウレタンシートを切り欠いた
部分にタッカーを打ちます。

 

間隔を空けて大雑把に
4~5か所を留めます。
 

先に打ったタッカーの間にさらに打ち込み
ます。面全体から皺が消えて行きます。

 

タッカーがほぼ連続するまで
間隔を詰めて打ち込みます。
 

反転させた状態でクロスの
はみ出し部分を切り取ります。

 

鋏でカットするのが
手っ取り早いです。
 

次に、後ろ側クロスの左右サイドを固定します。上下方向に
テンションを加えたことで表面の皺はほとんど消えています。

 

左右方向にはほとんど引き寄せる
必要がなく、接着剤で固定します。
 

背板合板の木端面に接着剤を
塗り、軽く押さえ付けます。

 

クロス側にも接着剤が付着します。
このまましばらく乾燥させます。
 

同じ作業を反対側も進めます。指先で触れても
接着剤がべとつ付かなくなるまで待ちます。

 

クロスを左右方向に軽く引き
寄せながら貼り付けます。
 

接着力を発揮させるには圧着が不可欠
です。左右同時に押さえ付けます。

 

背板後ろ側は背中が擦れることもない
ので、強いテンションは必要ありません。
 

皺やヨレがなく面全体が均一に張り付けられていれば
十分でしょう。クロスの風合いが少し出てきたようです。

 

接着により固定した先の部分を、
カッターナイフで切り離します。

 

内部に余分を残しておくと
クロス表面に跡が出ます。
 

表側のクロスは、この木端部分に
重ねて固定することにします。

 

背板合板の表側には厚手の
ウレタンシートが貼られています。
 

ウレタンシートを強く圧縮しながら
クロスにテンションをかけます。

 

クロスを強く引き寄せた状態で背板上端
(合板の木口)に1か所タッカーを打ちます。
 

背板表側のクロスは、上下・左右
両方向同時にテンションを加えます。

 

左右均一に引き寄せた状態で
それぞれ1か所ずつタッカーを打ちます。
 

4方向にバランスよくテンションが
加わることで皺やヨレが消えて行きます。

 

上端でタッカーを打ち増します。均一に引き
寄せては木口を外さないように打ちます。
 

上端、左右端ともタッカーを5本ほど打ち
込んだ時点で、クロスは既に平らです。

 

間隔を空けて打ち込んだタッカーと
タッカーの間を埋めて行きます。
 

既に表面から皺やヨレが無くなっています。表側は凹面
なのでクロスが浮く心配がありますが、4方向に程良く
テンションがかかり内側のウレタンに密着しています。

 

左右サイドにもタッカーを追加します。後ろ
側から張り付けたクロスの上に重ねます。

 

表側から張り付けたクロスの端が、
3辺で後ろ側にはみ出ています。
 

背板上端のはみ出しをカットします。
カーブしているので鋏が入ります。

 

クロスの切り口やタッカーが外から見えて
いますが、フレームの溝内に入り隠れます。
 

左右サイドのはみ出しには鋏が使えません。
下に当て木を入れカッターナイフでカットします。

 

左右サイドもフレームの内側に入るので
切り口やタッカーは目立たないはずです。
 

4隅の耳を処理して背板のクロス張りを終えます。曲木による
湾曲面なのでクロスが浮かないか心配でしたが、厚手のウレタン
シートが高低差を吸収し面全体が吸い付いたような仕上がりです。

 

フレームに戻してみます。当たり前ですがピタリ
納まります。柔らかい膨らみが、いい感じです。

 

後ろ側の納まりを見ます。内部のウレタン
シートが薄いのですっきりした印象です。
 

木ネジで下端の2か所を固定します。錆び
付いているので新しい木ネジに交換します。

 

下端両サイドでクロスの耳が波打っていま
すが、座板で隠れるので問題ありません。

 

2脚分の背板クロス張り完了です。薄いブラウン色を
選んで(お勧めして)正解です。濃いブラウン色の
フレームと良くマッチし、落ち着いた質感が漂います。

 

なかなかの出来に気を良くして、
座板のクロス張りにかかります。

 

4辺とも裏側に折り返す余分を
持たせてカットしてあります。

 

座板をクロスの中心に置き、
裏返してクロスを引き込みます。

 

背板よりも面積が大きいものの、
これまで何度か作業しています。

 

片面(表面)にだけ張り付ける
作業はさほど難しくありません。

 

対辺同士で、テンションを加えてクロスを
引き込みタッカーを打って固定します。

 

中心を1・2か所固定しただけでは
このようにかなりヨレが出ています。

 

最初のタッカーの左右に間隔を
空けてタッカーを追加します。

 

3か所くらいタッカーを打たないと、テンションが
集中してクロスが破れてくることがあります。

 

向きを変えて左右方向にクロスを張ります。
左右均一にテンションをかけ引き込みます。

 

取りあえず片側の1か所にタッカーを
打ち込み、クロスの位置を決めます。

 

反対側も見込み通りにクロスを
引き込み、タッカーを打ちます。

 

まだ十分なテンションがかかって
ないので、表面にヨレが残っています。

 

タッカーを1本ずつしか打てないので、クロスを
順に引き込みながら固定するしかありません。

 

間隔を空けてタッカーを追加しながら、
皺やヨレのないクロス位置を決めます。

 

まだヨレが残っていますが、クロスを
引き込む余地もまた残っています。

 

4隅に近づきつつ、クロスを均一に
引き込んではタッカーを追加します。

 

座板も表側(上面)が軽く凹面に成形されて
います。そのせいでなかなかヨレが消えません。

 

4隅部分に差しかかり、クロスをほぼ対角線方向に
強く引き込みながら最後のタッカーを打ちます。

 

4隅ではクロスの折り重なりが、
大きな耳となって残ります。

 

しかし、表側に返してみると、ヨレが完全に消えクロスが
ウレタンシートに吸い付いているかのような見栄えです。

 

残っている大きな耳を、段々折りしながら
その都度タッカーでこまめに固定します。

 

間隔の開いているところにタッカーを
打ち込み、ほぼ連続した状態にします。

 

常にクロスを引き込み続け、表側
全面に均一なテンションを加えます。

 

根気良くタッカーを打ち込み続ける
ことで表側の張りが一段と向上します。

 

裏側に残る大きな耳を含め、余分なクロスを処理しなければ
なりません。折角ここまで順調に進んできているので、この
ような付随的な作業段階で台無しにしたくはありません。

 

タッカーを打った位置から15mmほどの
ところで余分なクロスを切り離します。

 

カットの途中で、4隅の耳もざっくり落とし
ます。カッターナイフを慎重に運びます。

 

耳部分の重なりがまだ残っていますが
クロスの折り返し・固定作業完了です。

 

折り返しの調整がまだ必要かどうか、
実際にフレームに当てて確認します。

 

前脚の当たりを避けるため、座板の
前方両サイドは少し変形しています。

 

何の問題もなくすんなり納まります。
耳部分の重なりも影響ありません。

 

最後の仕上げ段階に入ります。
座板裏面に化粧張りを施します。

 

省略されていることも少なくありませんが、
このレベルの椅子には必要でしょう。

 

薄手の裏地用布を用意し、少し余裕を
見込んで(縁を折り返すため)裁断します。

 

全体がブラウン系なので、フレームと
ほぼ同色の濃いブラウンを選びます。

 

縁を10mmほど折り込み、座板周囲
から15mmほど手前に固定します。

 

クロスと同じくタッカーを打って固定します。黒色の
ホチキス針を使用すべきところ用意できませんでした。

 

クロスほどではありませんが、軽く引き
寄せて皺を取り除きながら打ち付けます。

 

曲線部分に差しかかり、余分を裁断し
綺麗に織り込みながら固定します。

 

4隅を残し全周にわたり
固定位置が定まります。

 

クロスが折り重なる4隅を
できるだけ綺麗に隠します。

 

間隔の開いているところにタッカーを追加し全体を満遍なく
固定します。皺やヨレもなくまぁまぁの出来上がりです。

 

フレームに固定する
作業を残すのみです。

 

元の固定位置に木ネジを打ち込みます。
前方はフレーム前縁材から斜めに入ります。

 

左右2本で固定します。座板側の
ネジ穴はまだ再利用可能です。

 

奥側のネジ固定は、斜めに入って
いる補強材を通して打ち込みます。
 

座板がしっかり固定されると、風格が一段増した
ような気がします。クロス張り替えの作業が完了し
かつて廃棄される瀬戸際にあったみすぼらしい
リビングチェアが、息を吹き返し完全に蘇ります。

 

クロスのテンションとウレタンシートの反発により、
皺もヨレも無いどころか、膨らみを伴いながら座板・
背板が滑らかに覆われています。もっちり感?の
漂う座板に腰を下ろしてみたくなりませんか。

 

完成状態をご覧になったご依頼主は、驚きと喜びが掛け合わされた
ような反応をされておられました。そりゃ元が酷過ぎたから・・(失礼)、
ここまで改善するとは想像できなかったでしょう。実は作業した私自身
もかなり驚いています。やはりフレームにほとんど傷みがない、つまり
使いやすくかつ堅牢に作られたフレームと、修復により美しさを取り
戻し得る優れたデザインが、このような結果をもたらしたのでしょう。
買い替えをお勧めしなくて本当に良かった・・のですが、ご依頼主は
当然残りの2脚をお持ちになるでしょう。リビングチェア張り替え1・2
の作業を、最初から最後までもう1回繰り返さなければなりません。

 

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