
近県にお住まいの方から、家庭用耕運機本田こまめF200の整備の依頼を
頂戴しました。最近エンジンが不調になり、キャブレターを交換されたいとの
ことです。ご自身で新しいキャブレターを既に入手済みです。WEBの記事を
ご覧になり腕を見込んで下さったようです。何とも有難いことです。軽トラック
(私も喉から手が出るほど欲しい)に載せて工房を訪ねておいでになりました。
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1.状況の確認 |

工房に到着直後のこまめF200です。
発売から30数年を経て年季が漂います。
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トップカバーの樹脂表面は、長年にわたり
太陽光に晒されて退色が進んでいます。
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エアクリーナーカバーの側も、荒れた
表面に汚れが入り込み年代を感じます。
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しかし、各部パーツの状態は悪くありません。
以前に工房で再生したF200よりも良い状態です。
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2.分解作業 |

分解作業を開始すると、以前に整備した
時の記憶が一挙に蘇ってきます。
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エアクリーナーカバーを取り外し、ボックス
底部を固定しているボルトも緩めます。
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トップカバーの固定ネジを緩めます。
白い樹脂がひどく汚れています。
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トップカバーを取り外します。中に
リコイルスターターが見えます。
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リコイルスターターはフライホイールカバーと
ともに3本のボルトで固定されています。
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リコイルスターターに続いてフライ
ホイールカバーを取り外します。
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交換対象となるキャブレター周りを見ています。オイル混じりの
泥汚れに覆われていますが、各部に目立った損傷は見られません。
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燃料コックの前後配管にガソリンの滲みが見られ
ます。燃料コックから僅かに漏れているようです。
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前回と同じく、燃料タンクを保持する金属ベルトの
固定ネジが固着しています。レンチを併用します。
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エアクリーナーボックスとキャブレターを固定
しているボルトです。六角ナットを緩めます。
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奥側の六角ナットにはレンチが入りません。
ラジオペンチを伸ばして少しずつ緩めます。
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エアクリーナーボックスの外側を這う
ブローバイ用配管を外しておきます。
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燃料タンクからの配管を外します。
固着しているのでニッパを利用します。
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燃料タンクからガソリンが落ちてくるので
ドライバの先を差し込んでおきます。
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キャブレターとシリンダーの接続口にあたる
マニホールドの固定フランジナットを緩めます。
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ようやくエアクリーナーボックスを
分離させることができます。
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過給燃料の戻り経路やブローバイなど
数本の配管状態を確認しながら外します。
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スロットルのガバナーロッドおよび
リターンスプリングも外します。
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ガバナースプリングも点検します。
特にヘタリ等はないようです。
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マニホールドごとキャブレターが外れてきました。マニホールドから
延びる長いボルトがキャブレターの両サイドを貫通しています。
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3.キャブレター周りの整備 |

取り外した元のキャブレターです。ガソリンのヤニ
成分を含む汚れが広がり、一部に錆も出ています。
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ご依頼主が入手された新品の
キャブレターと比べてみます。
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配管の一部に問題を見つけました。キャブレターに
燃料を供給するチューブの端が破れています。
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破損個所からガソリンが
漏れていた形跡があります。
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このチューブはストレーナを出て大きく
方向を変えてキャブレターに入ります。
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純正パーツもこの形状に作られており、
汎用品のチューブは折れてしまい使えません。
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配管の屈折を防ぐため、肉厚の
あるゴム管を代用します。
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ストレーナとキャブレターを接続しました。
うまく湾曲するか組み付け時に確認します。
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長い年月を経ているのでストレーナ
(燃料フィルタ)の状態も確認します。
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樹脂製ストレーナの内部が黒ずんで見え
ます。ゴミや汚れが溜まっているようです。
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入り口側を下にして軽く叩くとこのようにゴミが出て
きます。本来ならば新品に交換したいところです・・
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が、この小さな部品が1000円近くします。
逆方向にエアを吹いて清掃・再利用します。
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マニホールドとの接合部パッキンは、新品
キャブレターに付属してきたものを使用します。
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キャブレターとマニホールドを合体させます。
残るは元通り本体に組み付けるだけです。
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4.スリーブ製作 |

マニホールドからの長いボルトをエア
クリーナーボックスに通そうとしたところ・・
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貫通穴の中に入れられている金属製
スリーブの一方が脱落しています。
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スリーブ無しでは樹脂部品が潰れてしまう
ので、8mm径真鍮丸棒から自製します。
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スリーブの内径は5.3mmです。
真鍮丸棒に貫通穴を加工します。
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真鍮丸棒をレース盤にセットし
センタードリルで中心を決めます。
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さすがにブレや振動が全く発生しません。
静かに滑らかに穴加工が進みます。
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センタードリルを5.2mm径ドリル刃に
変えて必要な内径に加工します。
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最後にバイトにより真鍮丸棒の端面を
整えながら、スリーブ長を合わせます。
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この金属製スリーブを仲介させないと、フランジナットに十分なトルクを与えられず、
エアクリーナー・キャブレター・マニホールドの密着、つまり気密性が低下します。
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4.新キャブレターの取り付け |

自製した真鍮製スリーブを貫通穴に通し
ます。スリーブ無しでは樹脂が潰れます。
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新しいキャブレターをマニホールドと
合体させ組み付け具合を確認します。
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手が届くうちにガバナーロッドと
ガバナースプリングを取り付けます。
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マニホールドの出口側ポートを
エンジンシリンダに組み付けます。
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配管やスロットル機構が干渉していないか
確認しながら徐々に押し込んでいきます。
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交換した燃料供給用チューブも、きつい
湾曲に関わらず潰れていないようです。
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何とか元の位置に収まりました。エアクリーナボックス・キャブレターは、
エンジンシリンダに固定されたマニホールドに支えられる構造です。
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マニホールドを貫通しているボルトに
フランジナットを締め込みます。
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ブローバイ配管も元通り取り付けます。再度、
キャブレターの組み付け状態を確認します。
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5.試運転 |

キャブレター内にガソリンが充填されるまでしばらく
時間がかかります。その後スターターを引くと・・
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無事にエンジンが始動しました。キャブレター内の
ガソリンが安定するまでしばらく回転が上下します。
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次第に回転が安定してきました。やはり
新品キャブレターの調子は抜群です。
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アイドリング状態でもローターが回転しようとします。
クラッチが僅かに繋がっているので調整します。
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5.フライホイールカバー再塗装 |

依頼されたわけではないのですが、折角工房で
修理させていただいたので一部を再塗装します。
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劣化の著しいフライホイールカバーです。
先に洗剤を使って水洗いします。
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完全に乾燥させた後、プラサフを吹き付けます。
乾燥後にペーパーでざらつきを除去します。
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「ホンダレッド」を吹き付けます。
一挙に販売当時の輝きが蘇ります。
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自動車補修用の「ボカシ剤」を併用すると、吹き付けムラを最小限に
抑えることができます。この赤はこまめ現行機種でもトレードカラーです。
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エアクリーナーカバーや燃料タンクカバーは
樹脂復活剤を用いて表面を処理します。
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トップカバーも再塗装したいところですが
洗剤と研磨剤を使用した水洗いに留めます。
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6.交換作業終了・完成 |

塗装が完了したフライホイールカバーを
取り付けます。爽快な印象を放ちます。
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最後にトップカバーを取り付けると
2回目のこまめ整備作業も完了です。
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できればメインフェンダも、錆を落として白く再塗装したかった
ところです。依頼主のご意向もありますのでここまでにします。
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後部(作業者の側)から見ています。見た目も再生した
こまめで、畑での作業がより楽しくなるのではないでしょうか。
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時間をおいて再度エンジンをかけてみました。問題なく始動します。燃料
コックからの微量のガソリン漏れが気になりますが、交換用純正パーツは
税抜きで1500円もします。ご依頼主にお考えを聞いてからにします。
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