ミシンの修理は2台目になります。しかし、1台目はおもちゃのミシンでしたので
初めて手掛けることになります。恥ずかしながら修理以前に使い方を知りません。
小学校の家庭科で少し習ったきりで、最後まで使えるようになりませんでした。
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修理の前にミシンの使い方を理解しなければ
なりません。一度自宅に持って帰ります。
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奥さんに使い方を教わります。上糸・下糸、
ボビン・中がま、天秤・糸調子・・大変です。
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お預かりしたミシンは、ジャノメ製BONHEUR
(ボヌール)5700EX、電子ミシンと呼ばれます。
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型式761型、ご依頼主様がかなり古いと
言っていましたが、詳しくは分かりません。
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ジャノメのWEBから説明書(コピー)を
ダウンロードすることができます。
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ダイヤル操作でジグザク縫いや
ボタンかがりが簡単にできます。
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電子制御によりパターンを変えるようです。
マイクロプロセッサを搭載しているのでしょうか。
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奥さんの手ほどきに従って
自分で試運転してみます。
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目の前にある「動/止」ボタンを押すと
モーターが回り針が上下に往復します。
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さすがジャノメ製のミシンです、
静かでほとんど振動もありません。
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不具合は「返し縫いができない」と伺っております。このレバーを
操作すると、布送りが反転し逆方向に重ね縫いされるはずです。
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レバーを下げても布送りの方向は変わらず、
同じ方向に縫い続けます。機能していません。
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最初は「返し縫い」とは何のことかも分からず、奥さんの手ほどきが大変役に立ちます。
不具合の原因を探るべく分解にかかります。が、おもちゃを除いてミシンは初めての挑戦です。
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現在一般的な水平全回転釜方式です。
針・押え・角板を外しボビンを取り出します。
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針板も取り外し釜の内部を点検します。どこかに
布送りを反転させる機構があるはずです。
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電動ミシンなのでモーターを逆回転させているのかも知れ
ません。修理以前に構造を知るための分解が必要です。
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内部を観察するには、少なくとも外側の
パネルを外し露わにしなければなりません。
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パネル固定用と思われるネジを順に緩めていきます。
元に戻せるよう全て写真に記録しておきます。
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プーリー側の側面パネルが外れました。
その中に新たに固定ネジが見つかります。
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奥側のパネルを固定しているネジです。内部の
フレームが見えてきました。ダイキャスト製です。
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糸巻きの陰に頭部パネルを固定
するネジが隠れていました。
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奥側パネルを内部フレームに固定するネジ
です。長さがあり深くねじ込まれています。
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面板カバーを開けた中に、さらに1本
頭部パネル固定用のネジがあります。
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頭部パネルが外れました。上面と側面の
2方向からでも内部の様子が観察できます。
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ここに手前側パネルの固定ネジがあります。
ステーを介してフレームに固定されています。
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面板カバーを開けた内部の
手前側にもネジがあります。
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これはパネル固定ネジではなく、バネのような
フックのような金属部品を固定しています。
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ベッド裏側のカバーを外します。塩ビの
やや柔らかい材質(他はABS)です。
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ベッド内部が露わになりました。布送りや
中がま駆動用の機構が密集しています。
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手前側・奥側のパネルがここまで
一体成型されてベッドを覆っています。
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内部に両パネルを各々固定する
ネジが隠れています。緩めます。
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内外に見えるネジは全て外しました。手前側・奥側2枚のパネルは、残るところ
中心部分の篏合によって組み付けられていると思われます。ドライバの先をこじ
入れて爪を開放しますが・・分離しません。まだネジが残っていないか探します。
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努力の甲斐なくパネルは外れませんでした。しかし、お断り
する理由を考えていた時、DIYによる修理事例を見つけました。
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もし同様の不具合であれば、大がかりな
分解などせず修理することが可能です。
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布送り方向を反転させる機構はここにありました。本体内部を伝ってきた
リンケージが偏心カムをスライドさせます。内蔵されたマイクロスイッチや
タクトスイッチの不良を疑っていましたが、何ら電気的ではありません。
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通常はバネの張力で偏心カムが右側に寄って
います。布を前進させるよう送り歯を駆動します。
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返し縫いレバーが下げられると、リンケージに押されて
偏心カムが左にスライドし、布を後退させるよう駆動します。
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偏心カムのスライドがスムーズではない・・どころか
固くなっています。左右に往復させるのに力が要ります。
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潤滑のため充填されていたグリスが固着しています。
作業しているうちに何やら黒いものが落ちてきました。
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固着した部分から落下したようです。
残っている固着物を全て取り除きます。
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潤滑剤をクリーナ代わりにして、ゴミや付着物を
完全に落としスムーズに往復するようにします。
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何とか外側パネルを取り外そうとして費やした
時間・・のことは忘れて、元通りに組み上げます。
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布が逆方向に送られ無事に返し縫いができます。堅牢で
精密な機構がもたらす、振動のない静かな動作音です。
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パネルが開いていればもっと深く内部まで勉強できたで
しょう。しかし、お客さんの問題を解決することが先決です。
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長年のご使用でパネルに傷や汚れが広がっています。
樹脂用コンパウンドで全体をクリーニングします。
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クリーニング後の模様選択ダイヤルです。
溝に入り込んだ汚れも完全に取り除きます。
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パネル表面だけでなく、パネル同士の
合わせ目(篏合部)の汚れも落とします。
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表面に刻印された文字・図も、狭い隙間に
汚れが入り込み美観を損ねています。
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手前に見える糸調子調整用ダイヤルの
目盛りの刻み内も綺麗になりました。
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表面全体を磨き上げ細部に入り込んだ汚れも落とすと、
全体に光沢が戻り、新品時の風合いが蘇ります。
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ミシンの歴史は古く長い年月を経て改良が
重ねられ、その技術は完成域にあります。
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複雑を極める機構の集合体ですが、完成度の高い堅牢な
部品が、性能・機能の再現性・復元性を高く保っています。
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ミシン修理の専門店があり、多くの熟練した修理技術者が活躍しています。
その世界を垣間見る良い機会になりました。最後に外に被せるカバーも磨きます。
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番外編 全ての作業を終えてから気づきました。
よく見るとベッド下のカバーに点検口があります。
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キャップがはめ込まれており、ドライバの
先などでこじって取り外すことができます。
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不具合・修理箇所のスライド式偏心カムの部分に、ここから注油することができます。
ダウンロードした使用説明書には、他の部分も含めて注油の方法など記載はありません。
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