
近隣にお住いのご夫婦が、BOSEプレーヤーの修理においでになりました。
不具合は明解そのもの、「CDが全く再生されない」そうです。前面からの
スロットインローディング方式ですが、そもそもCDが吸い込まれて行きません。
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背面を確認します。最小限の外部端子が
並びます。型番が見当たりません。
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底面に型番シールが貼られています。
Wave Music System:AWRCCCです。
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長くお使いになっているそうで、もし直ら
なければ廃棄する予定だったそうです。
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CDプレーヤーのトラブルは、ほとんど
CDドライブ(ピックアップ)に原因があります。
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底面から4本のネジを緩めると、
上側の本体カバーが潔く外れます。
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内側の大部分はスピーカーシステムです。
BOSE独特の共鳴管が組み込まれています。
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CDスロットの化粧カバーが
片方剥がれかけています。
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先に補修します。取りあえず瞬間接着剤で、
後で両面テープでしっかり貼り直します。
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2005年頃の製品なので、13年ほど
経っています。内部の埃を吸い取ります。
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立派な電源トランスと、内部形状に
巧妙に合わせたヒートシンクが見えます。
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外部端子の周囲は埃だらけです。カバーの
隙間に近く、埃が侵入しやすいのでしょう。
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回路基板はスピーカーシステムを避けて
底面に張り付くように配置されています。
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電源、スピーカー出力など
数本のケーブルを引き抜きます。
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日本製品に見られる不必要に複雑な篏合
など皆無です。実に素直に分離してきます。
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もう1本、CDドライブユニットの下から
伸びるフラットケーブルがあります。
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本体前面に取り付けられている、LCD
ディスプレイの信号接続ケーブルです。
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CDドライブユニットを取り外します。軟質ゴム製の
インシュレーターを介して置かれているだけです。
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ドライブユニットの下面で、フラットケーブルが
2枚接続されています。慎重に引き抜きます。
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CDドライブユニットを取り外した後、
狭い空間にも埃が入り込んでいます。
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放置しておくと保温効果を発揮し、電子部品の
劣化を早めます。掃除機で吸い取ります。
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CDピックアップは事実上消耗品と考えるべきです。通常の使用環境に対して、
レーザー発光部やレンズのサーボ機構はデリケート過ぎる設計です。レーザー
出力の調整により復旧する場合もありますが、感覚に頼る手作業は感心しません。
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CDドライブユニット、できればピックアップユニットを
補修部品により交換します。部品型番を確認します。
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BOSE社純正部品は高額ですが、
Amazonに互換部品があります。
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根強い人気があり愛用されている → しかし故障が多い → 補修部品の需要がある
→ 低価格の互換部品が販売される → Amazonnで簡単に入手できる、ということです。
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入手した補修用ピックアップを元のユニットと
比較します。ごく細部に相違がみられます。
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ピックアップユニットを交換するには、
ドライブユニットを分解する必要があります。
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固定ネジ(1本)を緩め、上側の
金属フレーム(カバー)を外します。
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上側フレームを外した内側は2層構造になって
おり、固定ネジ1本で組み付けられています。
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中間にある金属フレームは、CDディスクの
ローディングと位置決め機構を含みます。
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CDディスクの位置決め(固定)を電磁式に行う
ため、底面側からケーブルが配線されています。
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中間フレームが外れ、ようやくピックアップ
ユニットにアクセスできる状態になりました。
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ピックアップユニットから出る制御信号用フラットケーブルは
既に抜かれています。モーター駆動用のケーブルも抜きます。
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底面金属フレームからピックアップユニットを
外します。特殊なネジで固定されています。
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振動を吸収するインシュレーターを介し、底面
フレームに柔らかく取り付けられています。
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インシュレーターを通る受けネジは
底面フレームに圧着されています。
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CDピックアップユニットが分離しました。
製造技術の粋ではありますが、用済みです。
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交換用ユニットを用意します。新品では静電破壊防止の
ためフラットケーブルの一部が半田で短絡されています。
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取り付ける前に、短絡を
解除しておく必要があります。
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半田ごてを当て、溶けた
瞬間に半田を吸い取ります。
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補修用部品にインシュレーターや固定ネジは
付属してこないので、元の部品を再利用します。
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新しいユニットにインシュレーターをはめ込みます。
ピックアップの周辺に手を触れないよう留意します。
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底面フレームに取り付けます。インシュレーターが
ユニットを固定し、かつ振動を絶妙に低減させます。
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元のネジで3か所を固定します。ネジ頭が
インシュレーターを均等に押さえ付けます。
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ここでCDディスクローディングの不具合を修理します。
このテーパー付きゴムローラーがディスクを引き込みます。
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長年にわたり繰り返し動作してきたことで、ローラーの表面に
汚れが付着し、材質のゴムが劣化して粘着性を失っています。
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ゴム用ケミカルで表面の汚れを
落とし、材質の復活を試みます。
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煤のような汚れが落ちて
表面がしっとりしてきます。
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かなり汚れが付着しています。ローラーを
回転させる機構には問題ないようです。
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中間フレームを元に戻します。
正確に組み合わせます。
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1か所だけ隅にあるネジを固定します。ディスク
ローディング用のマイクロモーターが見えます。
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底面フレームの裏側で、ディスク固定用と
ピックアップ移動用のケーブルを接続します。
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上側フレームを取り付けます。ほとんど
何の問題もなく順調に作業が進みます。
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上側フレームも1か所のみ
ネジにより固定されます。
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CDドライブユニットは、さらに4か所のインシュレーターを介して本体下側筐体に、
単に載せられているだけです。安定した音質を追及する設計の結果なのでしょう。
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2枚のフラットケーブルを
元通りに接続します。
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LCDディスプレイへ伸びる
フラットケーブルも接続します。
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スピーカーシステムを元に戻し、電源および
スピーカー出力ケーブルを接続します。
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ここでCDの再生テストを行います。問題なければ
その後で本体カバーを取り付けることにします。
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ディスクがスムーズに吸い込まれ
トラック情報を読み取っています。
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間もなく再生が開始されます。
トラックの選択も問題ありません。
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独特のバックロードホーンを備えたスピーカーシステムから、BOSEらしい上質の
サウンドが再生されます。決して物理的な帯域特性に優れているわけでも、出力
歪が飛び抜けて小さいわけでもありません。Tivoli
Audioに共通する、人の耳に
心地良い楽器的な要素が考慮されているのではないかと思います。修理完了です。
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