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業務用ベーカリ本格修理1(2017.12.3)


2017年の守谷工房は、業務用ベーカリー救出へ群馬片品行から始まりました。
様々な製作・修理に明け暮れてきた1年も、師走を迎えております。群馬県片品村に
あるレストランみのりの里、先月末に今年度の営業が終了しました。1月に応急修理
した業務用ベーカリーを、この休業期間中に本格的に修理しなければなりません。

 

あれから春、夏、秋と季節が過ぎ、再び巡ってきた冬です。
陽当たりの良い高原の日中は、12月とは思えません。

 

今シーズンの営業を終了したことを
お知らせする看板が立っています。

 

今年も多くのお客さんを迎え入れたので
しょう。厨房口の周囲もひっそりしています。
 

業務用ベーカリと再会です。懐かしさを感じ
ます、「その後、よく頑張ったそうじゃないか」。

 

応急修理のつもりでいたのですが、結局今シーズンいっぱい、
何のトラブルもなく働き続けたそうです。しかも、以前よりも
格段に調子が良く、毎日おいしいパンが焼き上がったそうです。

 

12本のヒーター全てが発熱するようになったので、
ベーカリ本来の性能に戻ったということでしょう。

 

本格的修理では、全ヒーターの新品交換を
目指します。ヒーターユニットを取り外します。

 

本体右サイドの制御ボックス内です。先に
ヒーターに電力を供給するケーブルを外します。

 

炉内に続く穴を通り、上段ヒーターの配線が制御ボックス内に
引き込まれます。穴の周囲を塞ぐ耐熱材は脱落しています。

 

この中継ターミナルから、すぐ上の穴を通して
200V3相交流が上段ヒーターへ送られます。

 

その後、分解手順を研究しておいたので
今回は手早く作業を進めることが出来ます。

 

耐火材(セメントボード)を支えるステーを、
左右で本体に固定しているネジを緩めます。

 

業務用機器なので、やはりメンテ時の作業手順も
考えられています。ヒーターは簡単に脱着出来ます。

 

ステーを解除すると、セメントボードが支えを失い下がって
きます。重量があるので落下させないよう抜き取ります。

 

上側のヒーターユニットが見えます。問題はヒーター自体
ではなく、電源ケーブルとの接続部の劣化にありました。

 

ヒーターユニットは、手前のフレームが
炉内天井部に3か所ネジ固定されています。

 

ネジを緩めてヒーターユニットを手前に引き
出し、途中で電源ケーブルを抜き取ります。

 

最初(前回)は試行錯誤で2・3時間を
要した作業が、15分ほどで片付きます。

 

発熱体に使われているシースヒーターの一種、
コイルフィンヒーターです。空気加熱用です。

 

前回に修理した部分を点検します。今シーズンは非常に調子が良かったそうで、
そうだとすれば、修理の内容や方法が的外れではなかったということでしょうか。

 

急場しのぎで、太目の針金を加工して接続ターミナルの代用にしました。
特に劣化している様子もなく、電源配線をつなぎ留めています。

 

しかし、よく見ると前回は問題なく見えた別のターミナルが、一部破断しています。
数本のヒーターが通電・発熱していなかったことになりますが、以前の状態が
かなり深刻だったのでしょう、気に留まるほどではなかったものと思われます。

 

ここまで作業してあることに気付きました。
ヒーターは下側にも組み込まれています。

 

要領が分かっているので、下側ヒーターを点検する手順も
難しくはありません。耐火材を外しヒーターを露出させます。

 

ご依頼主様によると、下側ヒーターは主に生地の
発酵に使われ、温度は130℃程度だそうです。

 

とすると、上側ヒーターのような過酷な温度環境にはなく、
実際、接続部や電源ケーブルは全く傷んでいません。

 

ヒーターの交換修理は上側のみで大丈夫です。さて、
制御ボックスカバーに取り付けられている冷却ファンです。

 

周囲を舞うパン生地材を吸い込み続け、
羽根表面に厚くこびりついています。

 

制御ボックスは炉内に隣接しており、十分に冷却されないと
大電力を制御するパワーデバイスが損傷する危険があります。
この時点で、取り外して丁寧にクリーニングしておきます。

 

取り外したヒーターユニットを、そのまま工房に持ち帰ることにします。同等のコイル
フィンヒーターが製造されていることは既に分かっているのですが、実際に発熱容量、
長さ、取り付け部の仕様など、多くの点について擦り合わせなければなりません。

*「続編」、近日中に公開の予定です。

 
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