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勝手口サッシドアリサイズ その1(2017.8.9~21)


電話で「ドアを付け替えて欲しい」とのご依頼です。既存のドアを、網戸が付いた
通風機能のあるものに交換したいそうです。交換用のドアは既に入手されている
ようで、「同じサイズ・規格のものでしょうね」とお聞きしたところ、「多分そうだ」と
おっしゃっていました。入れ替えるだけならば、実に簡単な作業で済みます。

 
1.現地下見


ともあれ現地の下見・確認に伺います。工房から
13km、車で30分ほどの隣町常総市まで出かけます。




ありふれた化粧合板製勝手口用ドアです。間口寸法が
1943mm×750mm、正確に採寸し何度も確認します。

 

ドアとセットの間口フレームです。ネジ
固定なので簡単に取り外せるはずです。

 

クローザーも標準的なものなので
こちらも取り外しは簡単です。

 

間口の下枠と面一で間口フレームがネジ固定されて
います。フレームの材料厚分欠き取られているようです。

 

縦枠に対してはフレームを被せて固定されて
いるので、左右の縦枠間隔が間口寸法となります。

 

これが交換用のドアです。古家から取り外してきた中古品です。
一見して、先ほどの間口と寸法が違うことが分かります、大きいです。

 

外側に虫除け用ネットが張られた網戸障子が
取り付けられています。簡単に脱着できます。

 

網戸障子の内側にガラス戸が入っています。室内
側から上下にスライドさせて開閉できる構造です。

 

着色アルミ製の勝手口用サッシドアで、
軽量の割に非常に堅牢な構造をしています。

 

表面全体に泥汚れがあるものの、傷みが少なく蝶番や
ドアノブの動作も問題ありません。新品はかなり高価です。

 

しかし、大問題は寸法がまるで異なっていること
です。間口枠で2071mm×771mmもあります。

 

既存の間口に収めるには、寸法の変更
つまり、リサイズしなければなりません。

 
2.工房へ搬入


寸法的にも重量的にも乗用セダンには積載できないので、
ご依頼主にお願いして軽トラで工房まで運んでもらいました。

 

あらためて各部分の状態を確認します。同時に、リサイズのため部材を
切断可能かどうか、どこで切断するか、念入りに構造を調べます。

 

ドアを閉める方向に常に力が加わっている
ので、先にクローザーを解除、取り外します。

 

アルミ製で軽量のはずですが、それでも30kg
ほどあるのでしょうか。取り回しが大変です。

 

ドアを90度開いた状態で、蝶番固定
以外の干渉箇所がなくなります。

 

本来のドアが直立した状態で、ドアを
垂直方向に持ち上げると抜けてきます。

 

クローザーアームの固定
金具を取り外します。

 

部材を切断することで問題なくリサイズできるのか、元の
間口に一発で嵌め込むことができるのか、不安が募ります。

 
3.外枠分解


リサイズの計画を考えます。サッシドアの間口フレームは、一番手前の飛び出し部分で
2005mm(高さ)×752mm(幅)であることが分かりました。横幅方向は僅かに耳を
削り落とすことで嵌まるでしょう。高さ方向は2005mm-1943mm=62mmのサイズ
ダウン、つまりドアの縦方向の構成部材を、全て正確に切断しなければなりません。

 

ドア本体は外側フレーム(外枠)と障子フレーム
(障子枠)の2重枠により構成されています。

 

外枠から分解していきます。クローザーの
本体やドアノブを先に取り外しておきます。

 

玄関ドア用にも用いられる
しっかりしたドアロック機構です。

 

止めネジを緩めると室内
側のドアノブが外れます。

 

アーマープレートを外します。新品時の
保護シートがまだ残っています。

 

室内側の台座固定ネジを緩めると
ドアノブが外側に抜けます。

 

シリンダー錠やサムターンも、外側に
突き出て支障となるので取り外します。

 

既に固定ネジがなくなっているので
錠ケースも取り外しておきます。

 

このネジ1本で、網戸サッシを
内側から固定しています。

 

ネジを緩めると、網戸サッシが
僅かにスライドして外れてきます。

 

外枠を組み付けているネジは、側柱に開けられたこの穴を貫通し、奥側の
側面を框材に固定しています。樹脂製のキャップが嵌め込まれています。

 

樹脂製キャップを外します。
目隠しの役割もあるのでしょう。

 

貫通穴を通してドライバーを
差し込み、固定ネジを緩めます。

 

奥側側面の手前に、鉄製の
補強板が添えられています。

 

框材(外枠横方向の部材)が
垂直方向に抜けてきます。

 

これで左右の側柱も外れてくるかと思い
きや、中央部にある爪を挟みスライドして。

 

外枠が取り除かれると、互いに上下にスライド
する2枚のガラス戸を含む障子枠が残ります。

 
4.障子枠の分解とリサイズ


さらに障子枠を分解します。障子枠の
リサイズに成功しなければ始まりません。

 


外枠と同様に4隅各2本の長ネジで固定
されています。単純に外れそうですが、

 

側柱枠内にガラス戸を互いに上下させる
吊りワイヤーとプーリが仕組まれています。

 

ワイヤー端のネジ止めを外すと
側柱枠が完全に外れてきます。

 

左右2本の側柱枠、上下2本の框枠に
分解され、2枚のガラス戸が残ります。

 

側柱枠に取り付けられている蝶番を外します。サッシ
チャンネルの内側から補強材が当てられています。

 

先ほどの計算に従って、全ての縦方向部材を正確に62mm
ずつ短くする必要があります。高速切断砥石を使用します。

 

アルミ合金製なので材料は柔らかく、切断機で容易に切り離すことが
できます。切断機のマイターに固定することで正確に作業できます。

 

框材と組み付けるため側柱端には切り込み加工が
施されています。正確に再現する必要があります。

 

3枚の補強リブのうち、両側の2枚は
ハンドグラインダーで何とか切断できます。

 

中の1枚はグラインダーの刃が届かないので、
アクリルカッターで切込みを入れて折り取ります。

 

ペンチで挟み強く何度か上下
させると、何とか折れてきます。

 

ヤスリでバリを取り、仕口の
形を整えておきます。

 

切り離した元の部材を元に
ネジ穴を再現します。

 

障子枠を組み付ける直前に、新たに問題を見つけました。
ガラス戸のスライド範囲も変更しなければなりません。

 

プーリの位置が固定されているので、
上側のガラス戸が完全に閉じません。

 

吊りワイヤーをリサイズした62mm分
延長する必要があります。針金で補います。

 

吊りワイヤーを枠内に仕舞いながら
障子枠を元通りに組み付けます。

 

長ネジを打ち込んで固定します。
側柱端の仕口は上手く合っています。

 

障子枠のリサイズ作業を終えました。外見的に
問題もなく、元の強度が出ているようです。

 
5.外枠のリサイズ
   

障子枠を取り囲む外枠のリサイズ作業に入ります。先に蝶番の取り付け位置を
調整します。ネジ穴の位置決定は簡単です。全て62mm低い位置に変更します。

 
   

補強版をチャンネル内側に固定する
ためのネジ穴2個を先に開けます。

 

補強版を当てた状態で、蝶番を
固定するネジ穴位置をなぞります。

 

6個のネジ穴位置がマークされています。
穴あけの後で部材をリサイズします。

 

穴あけ位置をセンターポンチでマークします。
ポンチ先端をやや鋭く研磨してあります。

 

アルミ合金なので、金属加工は非常に
楽です。切削油も必要ありません。

 

チャンネル材内側に補強版を固定します。6個の
蝶番固定用ネジ穴が正確に開けられています。

 

さらに、外枠の左右2本の側柱に、框材と
ネジ固定するための穴を開け直します。

 

手前側は貫通させるので、ネジ頭が
通るよう大径の穴を開けておきます。

 

再び高速切断砥石により、外枠側柱の
2本を、正確に62mm切り詰めます。

 

アルミ合金が押し出しで成形された
複雑な断面形状を確認できます。

 

蝶番が取り付けられていた元の位置では、
チャンネル材の一部が欠き取られています。

 

蝶番回転部の干渉を避けるためであり、
位置変更に伴い切り欠きも拡大します。

 

やはり62mm相当を切り欠くことになり
ます。ハンドグラインダを使用します。

 

切り欠いた後、ヤスリにより
形を整えバリを取ります。

 

蝶番を取り付ける準備ができました。中央の
大きめの穴は、裏側補強板の固定ネジ用です。

 

元通りにネジを締め付け、
蝶番をしっかり固定します。

 
6.外枠組み付け


障子枠の周囲に外枠を取り付けます。
中央部にある爪を内側に滑り込ませます。

 


障子枠・外枠ともリサイズに問題あり
ません。目的の長さに揃っています。

 

切り落とした外枠端は、このように切り欠き
加工されています。再現しなければなりません。

 

リサイズした部材端に、
同等のケガキを入れます。

 

ハンドグラインダで2方向
から切り込みます。

 

加工誤差やバリはヤスリで
手加工し仕上げます。

 

框材を組み付けようとすると、さらに
加工の必要な箇所が見つかりました。

 

側柱枠内側に折り返しが残っており、
框材の組み付けを邪魔しています。

 

リサイズ相当分(62mm)をハンドグラインダで落としました。
固定ネジが通る穴が見えています。右端は元のネジ穴です。

 

框材がピタリと収まります。リサイズ作業を通して
アルミサッシ製品の合理的な設計が理解できます。

 

外枠を一挙に組み上げていきます。左右方向に
リサイズは必要ないので、精度維持が容易です。

 

長ネジを締め付けて、元通り
堅牢に組み上げます。

 

障子枠+外枠、すなわちドアの稼働側が完成しま
した。外観的にはリサイズしたことが分かりません。

 

保護ビニルシートが残ったまま
汚れ果てたアーマープレートです。

 

ビニルシートを丁寧に剥がし、錆付いた
プレート面をサンドペーパーで研磨します。

 

輝きを取り戻しました、新品同様です。
後でドアノブも綺麗にしたいものです。

 

錠ケースを元に戻し、アーマープレートを
取り付けて外枠のリサイズ作業を終えます。

 
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