
PanasonicVHSデッキNV-HC1を納品に伺ったところ、続いて
高級CDプレーヤ修理のご依頼をいただきました。PIONEER製
PD-7050、1987年発売で定価6万円以上もする高級機です。
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重厚感のあるブラック塗装に、軽くヘア
ラインを入れメタル感を出しています。
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とても覚えきれない多くの機能が搭載され、
前面パネルに操作ボタンがひしめきます。
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ピンジャックによるアナログ出力の他、デジタル
出力を備えます(オプティカルではありません)。
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背面に型番が印刷されています。故障してから長い
年月保管されていたそうで、全体的に埃まみれです。
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30年前のオーディオ機器とあって、PIONEER社WEBに
製品情報はありません。個人のWEBに残っていました。
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その一方で、英語版のサービスマニュアルが閲覧できます。
ピックアップのサーボ機構なども詳しく解説されています。
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CDを再生できない、とだけ聞いており、
あらためて動作確認を行います。
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電源を入れると、前面パネルのディスプレイに
トラック情報やカウンタが表示されます。
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CDトレイのオープン・クローズボタンを
操作します。何の反応もありません
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本体の分解に入ります。まず左右
側面各2本の固定ネジを緩めます。
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背面の上部にさらに2本
固定ネジがあります。
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磁気シールドや放熱・振動対策のため、当時は
筐体材料に全面的に金属板が使用されていました。
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PIONEER社の高級オーディオ機器へのこだわりでしょう、
底部筐体には鮮やかに銅メッキされた鋼板が使用されています。
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CDトレイが出入りしない
原因を先に調べます。
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外側からの目視では不具合個所を特定でき
ません。CDドライブユニットを取り外します。
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ユニットを筐体に固定していると
思われるネジを緩めていきます。
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トレイのロックが解除されて、外に出てきました。
トレイのローディング機構は下部にあるようです。
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やはり前面パネルが障害になります。
固定ネジを緩め取り外すことにします。
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CDトレイの化粧パネルが前面パネルの
枠に干渉します。スライドさせて外します。
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前面パネルが外れました。ケーブル類を引き
ずりますが、CDユニットにアクセスできます。
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前面パネルがない状態でCDユニット
手前部分を覗き込んで見ると・・
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トレイが出入りできない原因が分かりました。トレイを前後にスライドさせる
プーリからゴムベルトが脱落しています。手前の駆動モータから、回転軸の
方向を90度ひねりながらベルトが掛かる構造です。モータは正常に回ります。
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ネットを検索してみると、まったく同様の
不具合、および修理事例が見つかります。
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こちらのサイトでもトレイ駆動ベルトの
劣化が原因として指摘されています。
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ゴムベルトを取り外して点検します。
伸び切った状態で固化、変形しています。
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工房の在庫からサイズの
合う1本を選び出します。
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方向変換用の中間プーリを介して
モータプーリと駆動プーリに掛けます。
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この時点で、いったん
動作確認を行います。
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CDトレイがスムーズに出てきました。再度
ボタンを操作すると、静かにトレイが引き込みます。
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年月が経過しているプレーヤで最も心配な
点は、光学ピックアップの劣化です。
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トラッキングゲインやレーザーレベルがずれたり、
レーザー出力が低下していることも少なくありません。
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ですが、音楽CDを入れてみると、間もなく
ピックアップのシーク音が聞こえてきます。
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ディスプレイにはCDのトラック情報が
表示され、カウンタが進んでいきます。
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よもやと思い、ヘッドホンを接続してみると
何の問題もなく音楽が再生されています。
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1本のゴムベルト交換で修理完了です。
コンパウンドを使い長年の汚れを落とします。
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往時の輝きが戻ってきました。
精悍なブラックフェイスです。
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カバーを取り付け、さらに全体を
クリーニングして作業完了・・のはずが、
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CDの再生を繰り返していると、TOCの読み出しやトラック間の移動にやや時間が
かかることがあります。再度分解してみると、もう1本ベルトの劣化を見つけました。
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ピックアップ位置をCDにトレースさせるモータです。
プーリに掛かるゴムベルトが伸びて固化しています。
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20mm径ほどの小さなベルトで、
あいにく補修部品の在庫がありません。
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補修用ベルトを入手するまでの措置として
輪ゴムから同サイズのものを作成します。
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輪ゴムを適切な長さに切断し、その
断面に少量の瞬間接着剤を付けます。
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家庭用の輪ゴムでカーボンが含まれて
おらず、ほとんど耐久性はありません。
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ベルトを再度交換する際に、トラッキングや
レーザーのゲインも調整し直すことにします。
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このベルトが劣化したままでは、TOC読み取りやトラック間移動に問題が生じる
はずです。他の修理事例では、ピックアップをリニアに移動させるウォームギヤ
部分でグリスの固着が報告されていますが、このプレーヤでは問題ないようです。
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やはり、TOC読み取りやトラック間移動のレスポンスが改善されました。折角の
ダブルオーバーサンプリングデジタルフィルターも、ベルトの劣化ごときで台無しです。
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