休業に入る直前に工房に届いたSONY製ラジオです。ご依頼主には数週間後の
休業明けまでお待ちいただくよう了解をもらっていますが、運が良ければ休業前に
お返しできるかも知れないと思い、作業に取りかかりました。多くの場合、一度
分解し始めたなら一挙に作業を進めないと、途中で下手に間が空くと元の構造が
分からなくなってしまいます(年のせいもありますが・・)。時間との勝負です。
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SONY製、ICF-SW7600GR。以前に
ICF-SW7600を修理したことがあります。
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今回は「バッテリーで動作しない」という比較的単純な
トラブルです。まずACアダプターを接続してみます。
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問題なく電源がONになり、放送を受信できます。各機能をひと
通り確認します。回路の内部に手を入れる必要はなさそうです。
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続いてバッテリーによる動作を確認します。
電圧1.2Vの蓄電池が4本内蔵されています。
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液晶画面にバッテリー切れ(あるいは無し)の表示が出ています。
電源スイッチを操作しても全く無反応です。スーパーキャパシタが
内蔵されているので、電源無しでも液晶画面の表示は維持されます。
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ACアダプターとバッテリーの切り替えに問題があるよう
です。不具合は単純ですが修理できるか否かは別です。
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「⇒」印のあるネジを全て緩めると、
裏側のカバーが外れてきます。
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右側面の化粧パネルです。表側・裏側2枚の
カバーに挟まれることで固定されます。
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カバーと内部回路が完全に分離された設計です。
回路基板を容易に取り出すことができます。
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2枚の回路基板による構成は以前と同様です。
手前はタクトスイッチが並ぶ制御部とPLL部です。
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2枚の基板はフラットケーブルで接続され、分解の際に
脱着する必要があります。できれば避けたいものです。
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フラットケーブルは繰り返し脱着に対応できず、そのうち傷んでしまいます。
低周波系回路基板の端に突き出た部分です。ここに電源の取り入れ口、
ACアダプターのソケットと、バッテリーホルダーの金具が集まっています。
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ソケットのマイナス側端子には、プラグの差し込み時のみ
OFFになるスイッチが内蔵されています。回路計を当てると・・
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プラグが差し込まれていなくてもOFFです。
バッテリーが使用できないのはこのためです。
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基板全体を取り外すのは厄介なので、
一部のツメを解除し該当箇所を浮かせます。
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半田吸い取り機を使い5か所の半田付けを取り
除きます。手前の2か所は単なる固定用です。
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ACアダプターのソケットを取り外します。多くの汎用品が
ありますが、完全に同一のものはほぼ入手不可能です。
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プラグを差し込まない時にONにならない、
電気接点の接触不良に違いありません。
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もう一度ON・OFFを確認してみます。プラグ
差し込み時は導通がありません、OFFです。
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プラグを抜きます。本来ならば導通してバッテリーからの
電力をバイパス(導通)しなければなりませんが、OFFです。
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当時の民生用機器製造技術としては、
十分に小型で精密な部品だったのでしょう。
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プラス側電極にカシメられた基板端子を少し
回転させ、内部の接点が見えるようにします。
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中に可動切片が見えており、ACアダプタープラグが差し込まれていな
ければ、内部のスプリングに押されてマイナス側の基板端子に接触
しています。このため左右2枚の基板端子は導通状態となるはずです。
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ACアダプターと同サイズの
プラグを差し込んでみます。
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プラグの先端が、スプリングに逆らって可動
切片を押し下げ、基板端子は切り離れます。
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可動切片と基板端子が接触不良を起こしているようです。
接点復活剤では歯が立たず、ペーパーで研磨します。
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細長く切り出したペーパーを
切片と端子の隙間に出し入れします。
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ペーパーの向きを変えながら、
切片側と端子側を交互に研磨します。
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ドライバーの先を入れて可動切片の
形状を僅かに変え、接触位置を調整します。
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プラグが差し込まれていない状態で、導通が復活
しました。差し込むと切り離れることも確認します。
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バッテリー動作の状態で電源を入れてみます。ACアダプター動作時と何ら
変わりなくラジオ放送を受信できます。休業前に修理を完了し、ご依頼主に
お返しすることができひと安心です。電源ソケット内部の金具に、少し手を
加えるだけの簡単な修理でした。誰にでもできそうな作業ですが、SONYは
「古い機種なので修理不可」だったそうです。何とかならないものでしょうか。
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