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乾電池で動作しないSONYラジオ(2019.3.17)


休業に入る直前に工房に届いたSONY製ラジオです。ご依頼主には数週間後の
休業明けまでお待ちいただくよう了解をもらっていますが、運が良ければ休業前に
お返しできるかも知れないと思い、作業に取りかかりました。多くの場合、一度
分解し始めたなら一挙に作業を進めないと、途中で下手に間が空くと元の構造が
分からなくなってしまいます(年のせいもありますが・・)。時間との勝負です。

 

SONY製、ICF-SW7600GR。以前に
ICF-SW7600を修理したことがあります。

 

今回は「バッテリーで動作しない」という比較的単純な
トラブルです。まずACアダプターを接続してみます。

 

問題なく電源がONになり、放送を受信できます。各機能をひと
通り確認します。回路の内部に手を入れる必要はなさそうです。

 

続いてバッテリーによる動作を確認します。
電圧1.2Vの蓄電池が4本内蔵されています。

 

液晶画面にバッテリー切れ(あるいは無し)の表示が出ています。
電源スイッチを操作しても全く無反応です。スーパーキャパシタが
内蔵されているので、電源無しでも液晶画面の表示は維持されます。

 

ACアダプターとバッテリーの切り替えに問題があるよう
です。不具合は単純ですが修理できるか否かは別です。

 

「⇒」印のあるネジを全て緩めると、
裏側のカバーが外れてきます。

 

右側面の化粧パネルです。表側・裏側2枚の
カバーに挟まれることで固定されます。
 

カバーと内部回路が完全に分離された設計です。
回路基板を容易に取り出すことができます。

 

2枚の回路基板による構成は以前と同様です。
手前はタクトスイッチが並ぶ制御部とPLL部です。

 

2枚の基板はフラットケーブルで接続され、分解の際に
脱着する必要があります。できれば避けたいものです。

 

フラットケーブルは繰り返し脱着に対応できず、そのうち傷んでしまいます。
低周波系回路基板の端に突き出た部分です。ここに電源の取り入れ口、
ACアダプターのソケットと、バッテリーホルダーの金具が集まっています。

 

ソケットのマイナス側端子には、プラグの差し込み時のみ
OFFになるスイッチが内蔵されています。回路計を当てると・・

 

プラグが差し込まれていなくてもOFFです。
バッテリーが使用できないのはこのためです。

 

基板全体を取り外すのは厄介なので、
一部のツメを解除し該当箇所を浮かせます。

 

半田吸い取り機を使い5か所の半田付けを取り
除きます。手前の2か所は単なる固定用です。

 

ACアダプターのソケットを取り外します。多くの汎用品が
ありますが、完全に同一のものはほぼ入手不可能です。

 

プラグを差し込まない時にONにならない、
電気接点の接触不良に違いありません。

 

もう一度ON・OFFを確認してみます。プラグ
差し込み時は導通がありません、OFFです。

 

プラグを抜きます。本来ならば導通してバッテリーからの
電力をバイパス(導通)しなければなりませんが、OFFです。

 

当時の民生用機器製造技術としては、
十分に小型で精密な部品だったのでしょう。

 

プラス側電極にカシメられた基板端子を少し
回転させ、内部の接点が見えるようにします。

 

中に可動切片が見えており、ACアダプタープラグが差し込まれていな
ければ、内部のスプリングに押されてマイナス側の基板端子に接触
しています。このため左右2枚の基板端子は導通状態となるはずです。

 

ACアダプターと同サイズの
プラグを差し込んでみます。

 

プラグの先端が、スプリングに逆らって可動
切片を押し下げ、基板端子は切り離れます。

 

可動切片と基板端子が接触不良を起こしているようです。
接点復活剤では歯が立たず、ペーパーで研磨します。

 

細長く切り出したペーパーを
切片と端子の隙間に出し入れします。

 

ペーパーの向きを変えながら、
切片側と端子側を交互に研磨します。

 

ドライバーの先を入れて可動切片の
形状を僅かに変え、接触位置を調整します。

 

プラグが差し込まれていない状態で、導通が復活
しました。差し込むと切り離れることも確認します。

 

バッテリー動作の状態で電源を入れてみます。ACアダプター動作時と何ら
変わりなくラジオ放送を受信できます。休業前に修理を完了し、ご依頼主に
お返しすることができひと安心です。電源ソケット内部の金具に、少し手を
加えるだけの簡単な修理でした。誰にでもできそうな作業ですが、SONYは
古い機種なので修理不可」だったそうです。何とかならないものでしょうか。

 
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