都内の美容室からのご依頼で、ヘアアイロンの本体に不具合があります。
工房に到着してみると、以前にコントローラーを製作した製品に似ています。
温度制御機能には問題ないので、修理のハードルは高くなさそうです。
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上下2枚のコテ面が密着しないと伺っており
ます。実際に手に取って確かめてみます。
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密着するのは手元に近い部分のみで、
先を含む大部分は確かに隙間があります。
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長年使用した結果、本体材料が疲労し
変形が生じたものと考えていましたが、
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実際にはそうではありません。発熱体の
根元部分にクラックが確認できます。
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コテ先で髪を挟むたびに繰り返し力が加わり、根元部分に応力が集中した結果
材料が耐え切れず破断したようです。コテ先を閉じ力を加えると隙間が生じます。
さらに力を加えると隙間が広がり、根元部分で本体が折れ曲がっていきます。
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破断部分を何らかの方法で修復する
必要があります。破断側を分解します。
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発熱体や制御回路を、2枚のカバーで
左右から挟み込み内蔵させる構造です。
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分解後にカバーの片側を再度点検します。
材料が完全に破断し分離しています。
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反対側のカバーから発熱体や
制御回路を取り出します。
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こちら側も完全に破断が生じています。この
ままでは表側まで破断が進むところでした。
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接着により破断を修復します。そのため
接着用の足掛かりを加工します。
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破断部に直接接着剤を入れても、母材との喰い
付きに限度があり十分な接合力が得られません。
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ダイヤモンドビットを付けたリューターで
破断部にV字型の溝を入れます。
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V字型の溝に接着剤が十分入り、また
破断面全体に接着剤が行き渡ります。
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溝が出来ていますが、切削面が荒れています。
これでは接着剤の浸入を妨げそうです。
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カッターナイフを入れて
切削面を仕上げます。
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強制的に変形を矯正するため、
僅かに隙間を作ります。
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隙間を密着させた状態で、
コテ先がほぼ直線になります。
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折れ曲がった部分にヒートガンを当て、
変形を矯正し内部の歪を解放します。
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コテ先を閉じると、これまでとは逆に先端が密着し根元部分に
隙間が生じます。この状態で接着により破断部分を固定します。
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取りあえず瞬間接着剤により補修することにします。
瞬間接着剤と本体母材との接着性を確認します。
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瞬間接着剤が固化した後、ドライバーの先で
こそぎ落としてみます。強固に密着しています。
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まず溝の奥部分に重点的に
接着剤を送り込みます。
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硬化促進剤を吹き付け、瞬間
接着剤を完全に固化させます。
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2・3回に分けて接着剤を追加し、その都度
硬化促進剤を吹いて強度を高めていきます。
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表面に多少の肉盛りがある方が強度的に有利です。が、
余分に付着・固化した接着剤はリューターで削り落とします。
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反対側のカバーも溝に接着剤を
送り込み、同様に補修します。
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一度に大量の接着剤を流し込むと内部まで
固化が進まず、十分な接合力が得られません。
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V字型に成型した溝内に、少しずつ数回に分けて
接着剤を送り込み固化させることで強固に接合します。
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少量の瞬間接着剤を送り込むたびに硬化促進剤を
吹き付け、接着剤全体を完全に固化させます。
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ある程度肉盛りしたいところですが、
盛り過ぎると外観を著しく損ないます。
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リューターを使い外観を整えます。
かなりの強度が出ているはずですが・・
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発熱体や制御回路を、配線を噛まない
よう本体内部に丁寧に戻します。
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2枚のカバーを合体させます。組み付けは
修理前と変わらず問題ありません。
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先端が密着し、根元部分に僅かに隙間が生じる状態で接合されました。少し力を
加えると全体が密着しますが、それはやはり本体が変形するためです。コテ先で
髪を挟み力を加えると、根元部分に応力が集中することに変わりはありません。
果たして瞬間接着剤による補修が強度的に十分だったか、少々不安が残ります。
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しかし、十分な強度を確保するには、根元部分の形状・構造が適切とは言えません。
この設計では曲げ応力が集中的に加わることは自明で、破断するべくして破断したと
言えるでしょう。また、本体全体が樹脂製であることにも無理があると思います。
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