Electrolux製パネルヒーターの修理依頼を再びいただきました。昨年10月にアップした
「遠赤外線パネルヒーター電源スイッチ交換」をご覧になりお問い合わせ下さいました。
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前回のパネルヒーターEPH812とは異なる製品です。
手前のメッシュ板やツマミのデザインが違います。
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型式はEPH303、定格消費電量が
EPH812と同じ1200Wです。
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本体右側面に電源スイッチと
温度調節ダイヤルがあります。
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電源を入れても全く暖まってきません。
伺っていた通りです。故障原因を探します。
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左右側面には縦長ボックス状のカバーが嵌め
込まれています。背面側に固定ネジがあります。
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Y字溝の特殊ネジが使われています。危険防止のため
家庭内では簡単に開けられない工夫?でしょう。
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(スマホではなく)携帯電話用の
精密ドライバービットを使用します。
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先に脚部を外す必要があります。
キャスターごと取り外します。
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脚部を取り外した内側にも
固定ネジがあります。
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このネジは普通の
+溝ネジです。
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カバーの中ほどに化粧キャップが
嵌め込まれています。外してみると、
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ここにも固定ネジが
あります。緩めます。
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先に左側のカバーを外します。メッシュ板の
左右端はカバー内側に仕舞われています。
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右側のカバーにも、中ほどに化粧
キャップと固定ネジがあります。
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カバーを外すと内側にヒーターの
操作部が組み込まれています。
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温度調節器(サーモスタット)の不具合も
考えられるので、操作部を取り外します。
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操作部を外さないとメッシュ板を外せず、さらに
発熱パネルにアクセスすることも出来ません。
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メッシュ板は金属製のインナーフレームに
ビスとナットで固定されています。
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4本のビスを外し、メッシュ板を本体上下にある
縁折り内を移動させます。かなりきつく嵌まっています。
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メッシュ板の表面が大きめに取られているからで、
装着時に表面に凹凸が出来ないようにしています。
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メッシュ板を取り除くと、発熱パネルの奥に
温度スイッチ(サーモスタット)が見えます。
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本体の穴を通り背面側にツマミが出ています。
手動復帰型の温度スイッチが使われています。
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発熱パネルを固定しているネジと
セラミックブッシュを外します。
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発熱パネルを持ち上げてみると、2個の温度
スイッチが左右に取り付けられています。
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温度スイッチは直列に接続されており、2か所の
どちらで温度異常が生じても回路が切断される設計です。
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その片方が手動復帰型温度スイッチ
です。順に取り外して点検します。
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温度スイッチは2枚の樹脂製プレートからなるホルダーに収められ、ホルダー内で
配線に接続されています。プレートを分離すると、内部はこの状態です! 温度
スイッチの端子と配線の接続部分が過熱しており、燻った跡が色濃く残り火花が
飛んでいた可能性もあります。サーモスタットの動作が不安定になり、配線に
過電流が流れたことが原因でしょう。接続部分の僅かな接触抵抗も疑われます。
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温度スイッチの導通を調べてみます。
完全に絶縁状態、壊れています。
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他方の温度スイッチも分解します。
外観的には問題なさそうです。
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内部に焦げ跡など皆無です。温度
特性は手動復帰型と同じものです。
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こちらは常温下で
完全に導通します。
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手動復帰型温度スイッチへの配線を短絡し、
通電して他の部分に不具合がないか確認します。
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電源スイッチを入れます。
パイロットランプが点灯します。
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温度調節ダイヤルで温度設定を少し上げ
ます。発熱パネルに通電が始まります。
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パネル面の温度が一挙に上昇していきます。
問題ありません。1200Wの発熱は強烈です。
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この時点で温度スイッチ以外に不具合はないと
判断します。温度スイッチを新しく交換します。
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温度スイッチの規格を確認します。「L90C」は設定温度
90℃の意味です。許容電流は部品の大きさで判断します。
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電熱器具関係の部品調達では坂口電熱に
度々お世話になっています。在庫があります。
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通販の扱いがないので秋葉原
店頭まで出向いて入手します。
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破損した元の温度スイッチ(写真上)と、購入した新しい部品(写真下)です。径が
若干大きく固定用のブラケット付きですが、接続端子の形状などはほぼ同等です。
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ブラケットは不要なので取り去ります。
ニッパで途中を切り離します。
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内部のバイメタルに正確な動作温度が設定されているので、
不用意に衝撃などを与えないよう慎重に作業します。
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接続端子に配線を取り付けます。接触抵抗を
排除するため配線金具を少しカシメておきます。
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下側の樹脂製プレートに当てます。焼け
焦げた部分はそのまま使用します。
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上側のプレートを被せ、ツメを噛み合わ
せてホルダーとして一体化させます。
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手動復帰用のシャフトを穴から背面に
通し、ネジで本体に固定します。
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温度スイッチの交換を終え、発熱パネル以下、各部を元通りに組み上げます。
ひたすら元の組み立て状態に戻すことに徹します。不用意にアセンブリを
変更することは、特に電熱器具類では製造元も想定しない危険を招きます。
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工房内でしばらく試験運転します。寒さの厳しい折、暖かくて嬉しい確認作業です。
温度スイッチ1個が原因の故障でしたが、高性能の発熱パネルを廃棄せずに済み
ました。温度スイッチの専業製造元では、メーカー品の修理目的には部品を販売
しない場合があります。メーカー間で了解する安全基準を維持できないからです。
坂口電熱で部品が買えるからといって、安直な修理をお勧めするものではありません。
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