この4月にデッキ部分を修理(ベルト交換)したPIONEERカセットデッキT-700Sです。
思わぬ難題に直面し、4月以来作業を(ご依頼主にお断りの上)中断したままでした。
ひょんなことから問題解決の道が開け、ご依頼主の期待に沿うべく作業を再開します。
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ご依頼は経年劣化によりペースト状と化したゴム
ベルトを交換することで、無事成功しております。
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デッキ部は復旧したものの、その後回路基板に
問題があり信号が再生されないことが分かりました。
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平素は弊社製品のご愛顧を賜りまして、誠にありがとうございます。この度お問合せ頂いた件につきまして、返信申し上げます。
> 商品型番:T-700S
> ご購入:ご購入後
> ご購入年月:年 月
> ご質問件名:回路図について
> ご質問内容:
> 御社製かつての高級カセットテープデッキT-700Sにつきまして、当工房に修理のご依頼がありました。
お客様は既に御社に問い合わせされたそうで、古い機種のため修理不能との回答だったそうです。
ベルト交換等により駆動部の修復を完了しましたが、回路基板にも不具合が あるようで信号が再生されません。
もし可能でしたら当該機の回路図をご提供いただけないでしょうか。
修理に関する全ての責任は当工房が負い、回路図は修理の目的以外には一切使用しません。
お客様のたってのご希望ですので、何卒お力添え下さいますようお願い申し上げます。
お問い合わせいただき、ありがとうございます。
大変申し訳ございませんが、お問い合わせいただいております商品につきましては2015年10月1日より別会社でありますONKYO様のグループ会社
のオンキヨー&パイオニア株式会社様の窓口で相談を承っております。
お手数をおかけいたしますが、下記窓口よりお問い合わせいただきますよう お願い申し上げます。
●オンキヨー&パイオニアイ株式会社お問い合わせ窓口
メール問い合わせフォーム
https://www2.jp.onkyo.com/customer/inquiry.asp?id=11
電話 050-3388-9425
受付時間 月曜~金曜 9:30-18:00(祝日、窓口休日を除く)
大変お手数をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。パイオニア カスタマ-サポ-トセンタ- **
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当時の高級カセットデッキに相応しく、電子部品
満載の回路基板は手の出しようがありません。
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市川 様
いつもお世話になっております。
この度はお問い合わせいただき誠にありがとうございます。
誠に申し訳ございませんが、製品の回路図は社外秘情報となりますので
提供はお断りせざるを得ません。
この度はお力になれず大変申し訳ございませんが、
何卒ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。
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■休業日のお知らせ
誠に勝手ながら、下記期間は会社休業日のためお休みを頂きます。
休業日: 2018年4月27日(土) ~
2018年5月6日(月)
休業期間中のメールは、2018年5月7日(火)以降順次回答いたします。
お預かりさせていただいた製品は休業明け順次ご返却となります。 お客様にはご不便をお掛けしいたしますが、
何卒ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。
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パイオニアホームオーディオコールセンター 担当 **
TEL:050-3388-9425
受付時間: 平日 9:30~18:00
(土・日・祝祭日・弊社指定日を除く)
> 使用、または検討中の機種: PIONEER
T-700S
> ご質問の種別:その他
>
具体的な質問内容:パイオニア製かつての高級カセットテープデッキT-700Sにつきまして、当工房に修理のご依頼がありました。お客様は既に製造元に問い合わせされたそうで、古い機種のため修理不能との回答だったそうです。
ベルト交換等により駆動部の修復を完了しましたが、回路基板にも不具合があるようで信号が再生されません。もし御社で当該機の回路図を保有されておりましたら、その写しをご提供いただけないでしょうか。修理に関する全ての責任は当工房が負い、回路図は修理の目的以外には一切使用しません。
お客様のたってのご希望ですので、何卒お力添え下さいますようお願い申し上げます。
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解析には回路図が必須と製造元に問い合わせるも
何ともつれない返答で、完全に手詰まり状態です。
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せめて再生回路(Playback系)だけでも修理出来れば、ご依頼主には
これまで録り溜めたカセットテープを楽しんでいただけるのですが。
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基板面のシルク印刷も意味がよく分かりません。回路図無しで
まるで手探りですが、電源の電圧くらいは確認してみます。
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どうしたことか電源と思しきポイント、その他の
ポイントいずれも電圧が全くかかっていません。
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ベルト交換の記事をアップした後、思わぬ事が起こりました。
WEBをご覧になった北海道の方から連絡を頂戴しました。
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T-700S相当の海外向け製品で、ネット上に
サービスマニュアルが存在するという有難い情報です。
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海外向け製品は製品型番が異なることを忘れておりました。
前面パネルの説明図から同型であることが分かります。
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全27ページに及ぶ英語版マニュアルには、製品の分解図とパーツリスト、ブロック
ダイアグラム、録音・再生系全回路図、ドルビーエンコーダ・デコーダ全回路図、基板
表裏両面見取り図、液晶表示器・操作ボタン系回路図、基板上の電子部品リスト、
各部の調整方法と基準値、前面パネルの説明、性能・仕様一覧と至り尽くせりです。
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カセットデッキ部の詳細分解図です。前回ベルト交換の際にこの
図面があれば、より的確な作業を要領よく行うことが出来たはずです。
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ブロックダイアグラムと全ての回路図をプリントアウトしました。A3用紙2枚に
印刷してようやく判読できる細かさです。オリジナルのマニュアルをスキャナで
取り込んでおり、PDFファイルとはいえ文字のかすれや画像の歪みがあります。
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先にブロックダイアグラムを確認します。空恐ろしく
思えた広大な回路も、すんなりと把握できます。
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再生系だけでも何とか復旧させたいものです。続いて回路図を
覗き込みます。L・Rチャンネルの電子部品が整然と並びます。
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この辺りはダイオード、電解コンデンサ、レギュレータ
デバイスと並び、電源回路を構成しています。
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再生回路の各部に電圧がかかっていませんでしたが・・
念のため電源回路の出口部分で電圧を確認します。
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電圧が検出されません。もしかすると
電源回路が機能していないのでは・・
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厳重に電磁シールドされた電源トランスから、2次巻線が
引き出され電源回路の入り口部分に接続されています。
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電源トランスの出力=電源回路の入力部で交流電圧を
確認します。電圧が出ています、問題ありません。
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直後に接続されている整流用ダイオードです。
右側の4本はブリッジを構成しています。
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ダイオードブリッジの出口に電圧が出ています。
電源が途切れている個所が絞り込まれてきました。
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回路計を当てているのは、回路図8ページ目のこの
辺りです。各部に電源を供給する大元になります。
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回路図を詳しく調べると、ダイオードブリッジを出たところ、ボルテージレギュレータ用の
NPNパワートランジスタ(型番不明)のコレクタとの間に、見慣れない部品があります。
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基板に部品名が印刷されています。
部品番号IC551、ICP-N20です。
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ICP-N20はRohm社製、容量
800mAのセラミックヒューズです。
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セラミックヒューズの入力側にDC
22Vの電圧が加わっていますが、
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出力側では電圧が検出されません。
セラミックヒューズの溶断?でしょうか。
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基板見取り図(11ページ)で、セラミック
ヒューズ周りの配線パターンを確認します。
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+電源側、-電源側それぞれに
ヒューズが挿入されています。
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基板上のどこを調べても電圧が検出されないのは、
電源が機能していないから・・当然の状況です。
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基板を取り外し裏返して、切れた
セラミックヒューズを交換します。
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これだけの高級機ですからガラス管ヒューズなど
「ダサイ」部品は採用されなかったのでしょうか。
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昨今、リユーザブルではないセラミックヒューズなど
見かけません。無難にポリスイッチで代替します。
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ヒューズ類の許容電流はかなりアバウトです。
定格900mA、遮断1800mAを使用します。
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+側・-側ともポリスイッチへの交換を
終えました。各部に電源が戻るでしょうか。
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横着ではありますが、いきなり電源を
入れてテープを再生してみます。
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???!何と言うことでしょう、レベル
メーターが元気に動作しています。
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慌てて各部の電圧を確認します。回路図に
VCAの表示があるポイント、指示通り9.0Vです。
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VEAの表示があるポイント、
回路図の指示通りー9.0Vです。
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再生系の回路で同じくVCA・VEAを確認します。+9.0Vと-9.0Vが
測定されます。信号処理系統への電源供給が止まっていたようです。
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背面のパネルを取り付け、ほぼ
元通りの組み付け状態にします。
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レベルメーターはそのまま
しっかり動作し続けています。
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レベルメーターが動いていても、音声が出力されていなければ
意味がありません。遅ればせながらヘッドホンを接続します。
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大口径フライホイール・デュアルキャプスタンによる
ワウフラッター(音揺れ)の少ない澄んだ音質です。
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結局、切れたセラミックヒューズを2個交換する修理となりました。めげずに頑張れば
回路図無しでも何とかなったかも・・、いいえそんなことはありません。モノづくりの基本は
設計図、その電気版が回路図です。設計図という地図無しでは、漕ぎ出す気力が得られ
ません。回路図を教えて下さった北海道のO様、有難うございました感謝申し上げます。
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正直申し上げると、回路図を入手できたものの実際に作業を再開するまで、2か月ほど
間を空けていました。その間、分解されたままのT-700Sは、他の業務が忙しいことを
理由に工房の隅に追いやられていたのです。回路図を何度も眺めるうちに、面白いもので
当初は眩暈がするような回路が、少しずつ解(ほど)けていくような気がします。気力を
十分に蓄えて作業を再開したところ、短期決戦で決着が着いたようなものです・・何より
です。痺れを切らさず、3か月半も修理を待って下さったご依頼主にもお礼申し上げます。
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