
工房開業以来、最大規模の補修工事が舞い込んで来ました。守谷市のお隣、つくば
みらい市内の町内自治会からのご用命で、既に5か月も前の4月下旬に現調に出向き
ました。自治会では町内に5・6か所、写真のような立派なゴミ集積所を保有・管理して
おられます。蓋を開閉するボックス式ではなく、ブロック積みされた囲みに金属板製の
屋根板が葺かれ、前面はサッシの引き戸が取り付けられています(カラス対策も万全)。
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ご用命は屋根板の葺き替え(交換)との
ことですが、先に小屋の全貌を把握します。
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ブロック積みされた壁の上に、鉄骨で
屋根の基礎が組まれています。
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左右端に傾斜の付いた梁が固定され、その
上に前・中・後3本の軒桁が渡されています。
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小屋内で見上げると、中間の軒桁が見えます。
隙間はエキスパンドメタルで丁寧に塞がれています。
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屋根板には折板と呼ばれる鋼板材が使用されて
います。「おりいた」ではなく「せっぱん」と読むそうです。
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折板で葺かれた屋根の前面縁です。
部分的に形状が崩れています。
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近接して見ると、鋼板の縁がめくれています。
相当の力・衝撃が加わったように思われます。
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前縁の全体に渡り、複数
個所に損傷が確認できます。
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めくれた部分を鈑金により修復できなくもない
ですが、屋根板ごと交換した方が早いでしょう。
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ご依頼主も交換による修理を望まれています。
そこで、屋根板の固定方法を確認します。
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鉄骨製軒桁に折板形状に合わせたフレームが
取り付けられ、その上に折板が載っています。
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フレームから出ているボルトが、
折板を貫通してナット固定されます。
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修理を要するゴミ集積所は町内に4か所
あるそうです。次の現場を確認します。
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こちらも酷いめくれ方をしています。自動車が
衝突したことが原因と疑われているようです。
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自動車・・思い当たるのはゴミ収集車でしょうか?テール
ゲートを開けてバックしてくると衝突する可能性大です。
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つくばみらい市でもゴミ回収は市の委託事業
です。事実だとすればとんでもない話です。
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ですが、それは自治会の皆様の案件であり、工房が
口を挟んではいけません。3か所目を確認します。
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比較的程度が軽いとはいえ、ここにも
何かが激しく衝突した跡が確認できます。
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最後4か所目を確認します。周囲に余裕が
あるので、ここは作業がしやすそうです。
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ここも酷い有様です。しかし、どうせ折板を
全交換するので気にしないことにします。
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コロナ禍のため自治会の予算案承認が遅れ、発注をいただいたのは7月下旬に
入った頃です。工期は8月最終の土・日に開始し、9月の各週末(土・日)を使い
1か所ずつ進めていくことにします。9月最後の土日を予備日とすれば、雨天による
延期が生じても9月中に完了できる計画です。資材調達を経て予定通り8月29日
(土)に着工、9月19日(土)最後のゴミ集積所工事の様子を以下に紹介します。
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最初に元の折板を全て取り外します。本件は工房
テクニカルパートナーのO氏とK氏が担当しています。
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折板を固定しているボルトを外します。ナットから上の
突き出し部が錆び付いており、ナットが回りません。
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そこで、ハンドグラインダで突き
出した部分を切断しておきます。
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この状態でボックスレンチを掛けると
簡単にナットを緩めることが出来ます。
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2人とも屋根に上がったまま、先に
全てのナットを外してしまいます。
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折板の取り外しにかかります。下から
ハンマーで叩いてボルトから抜きます。
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K氏が反対側を持ち上げます。前方の固定が
解除されていると、割と簡単に抜けます。
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1枚目の折板を前方に引き出します。
O氏が脚立の上で受け取ります。
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脚立を降り、折板を地上まで引き下ろします。
0.5mm厚の鋼板はさほど重量がありません。
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作業や通行の邪魔にならないよう
折板を別の場所に移動します。
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ナットが外れていても折板が浮いてこない
ことがあります。バールを使って押し上げます。
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手前側のK氏と向こう側のO氏が
息を合わせて要領良く外していきます。
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外れる度に道路側に1枚
ずつ引きずりおろします。
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続けて次の1枚にかかります。
折板を持ち上げボルトから外します。
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折板を取り付けるボルトは、この
鋼板製のフレームから出ています。
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「タイトフレーム」と呼ばれる折板を
固定するための専用部品です。
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タイトフレームは軒桁の鉄骨材
(C形鋼材)に溶接されています。
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右端の2枚です。最も酷く破損していますが、
タイトフレームには影響が及んでいません。
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タイトフレームを再利用すれば
作業量も費用も節約出来るのですが、
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前述したようにナットから突き出たボルトの先に
サビが固着し、ナットを緩めることが出来ません。
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ハンドグラインダでナットから先部分を切り落とした
ため、タイトフレームは交換しなければなりません。
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タイトフレームは割と安価な部品ですし、
さらに出来上がりの見栄えも重要です。
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最後の1枚を外し終わり、屋根全体が丸裸状態です。左右横方向に
渡された3本のC形鋼製軒桁が見えています。タイトフレームと軒桁の
接合は堅牢な溶接、と言うことは・・取り外しは容易ではありません。
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撤去された元の折板です。廃品回収業者の方とコンタクトがあり、
作業後に屑鉄として引き取ってもらうことになっています。現場
まで回収に来てくれるそうで、労力も省けて大変助かります。
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新しく購入したタイトフレームです。ステンレス製は高額なので
メッキ仕上げ品です。ボルト端が剣先状に加工されています。
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元のタイトフレームを撤去する前に、
新しい部品を一度仮置きします。
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タイトフレーム1枚には3個の山と2個の谷が
含まれ、左右端は隣とフレームに連続します。
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タイトフレーム1枚につき1か所ずつ、仮固定用の
ネジ穴を開ける位置を、元のフレームにマークします。
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新しいタイトフレームは、溶接ではなく
軒桁のC形鋼にボルトで固定します。
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元のタイトフレームに開いている穴をガイドに、
8mmドリルで仮固定用の穴を開けます。
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脚立に登り、軒桁の
上からドリルを当てます。
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14.4Vや18V仕様の高トルク電動ドライバ・ドリルが
登場し、鉄骨に8mm程度の穴は簡単に開きます。
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ただし、ドリルビットの刃先はあまり長く持ちません。
切れ味が落ちてきたら新しいものに交換します。
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穴を開けただけなのでまだタイト
フレームは固定されたままです。
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次にタイトフレームと軒桁の溶接を
ハンドグラインダで切り離します。
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フレーム谷部分の両側が
軽く電気溶接されています。
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ボルト先の切断作業に次ぐ騒音が出ます。自治会
役員の方から予め町内に告知いただいております。
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溶接により肉盛りされた部分を
出来るだけ削り落とします。
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タイトフレームと軒桁の境界が露出すれば、
ハンマーで叩くことで引き剥がせます。
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同時に2台のハンドグラインダを動作させる
ため、1.9kVA仕様の発電機を使用します。
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元々保有していた発電機が途中で故障し、
急遽工房で調達することになりました。
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テクニカルパートナーK氏とO氏、2名
2台のハンドグラインダで作業します。
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ハンドグラインダには径105mmの
鉄工用切断砥石を装着しています。
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溶接部を連続して切削すると切断砥石が激しく
摩耗するので頻繁に交換していきます。
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溶接部をひと通り削り取っても、タイトフレームはまだ軒桁に付いた
ままです。ここからはレンチをかけて力尽くで引き剥がします。
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ほとんどの溶接部はフレームを
折り曲げることで剥がれてきます。
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いくつかは元の溶接が強固だったのか
外れません。バールを入れて剥がします。
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それでも外れてこない場合は
ハンマーで溶接を叩き壊します。
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剥がれたタイトフレームです。経年で
表面に錆びが広がっています。
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反対側の軒桁でも同時
進行で作業が進みます。
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溶接部分の取り残しがあるので
再度ハンドグラインダを使います。
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タイトフレーム谷部分の
両側を丁寧に削り取ります。
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再びレンチをかけて
引き剥がします。
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2本の軒桁とも最後のタイトフレームを残す
だけです。両端は山部で終わっています。
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取り外したフレームの残骸です。折板と
一緒に廃材として引き取ってもらいます。
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元のタイトフレームが全て取り払われスッキリしました。
新しいフレームを取り付ける段階ですが、まだ準備があります。
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再びハンドグラインダの出番です。
同じく切断砥石を装着します。
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フレームが固定されていた軒桁(C形鋼)の
上面に、溶接肉盛りの跡が残っています。
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そのままでは新しいタイトフレームを
取り付ける際に凹凸となって邪魔です。
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切断砥石を平らに当てて
肉盛りの凹凸を取り除きます。
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新しいタイトフレームを
必要数分運び入れます。
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タイトフレームの固定方法は
溶接からボルト締めに変更します。
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必要なボルト、ワッシャ、ナットの
セットを必要数分揃えます。
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タイトフレーム1枚に付き1か所ずつ既に
開けられている穴にボルトを入れます。
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タイトフレームの谷部分には全て
ボルト用の穴が開けられています。
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ですが、ここで固定するボルトは軒桁にも
穴が開けられている1か所のみです。
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C形鋼の手前から内側に
ボルトを入れます。
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ボルトとナットの双方にレンチを
かけてボルトを締め込みます。
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1列当たり5枚のタイトフレームが並びます。
ボルト類を入れた容器を途中に下げておきます。
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全てのタイトフレームが仮固定された状態で、
電気ドリルで残り全てのボルト穴を開けます。
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タイトフレームの谷部に開けられている
穴をガイドにドリルビットを入れます。
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O氏が考え出した作業手順で、この方法により元のタイト
フレームと寸分違わない位置に取り付けることができます。
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穴を開け終わると同時に
ボルトを入れて行きます。
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裏側からワッシャ・ナットを入れレンチで
締め込む・・、ひたすら繰り返します。
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亜鉛メッキにより銀色に輝く
新しいフレームが並びます。
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2列の軒桁でほぼ同じスピードで
順調に作業が進んで行きます。
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軒桁の端に辿り着きました。元のフレームでは
最後の山を強引に折り曲げて帳尻を合わせていました。
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それでは外観が悪く、強度的
にも十分ではありません。
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調べてみるとこのような両端専用の妻用フレームが販売されています。三角形に閉じた
構造なので(底板が無い安価な開放型もある)、部品単体としても強度が十分にあります。
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ただし、ひとつ問題があります。底板に
ボルト固定用の穴が開けられていますが、
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三角形の内側にある穴は、位置的に
軒桁の外側に出てしまいます。
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そこで、軒桁の端を飛び出ない
位置に新たに穴を開け直します。
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少々位置がずれていますが、軒桁側には
現物合わせで穴を開けるので問題ありません。
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妻用フレームを取り付け位置に
当て、ボルト穴の位置を確認します。
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8mmドリルによる穴あけ作業も
ようやく終わりが見えてきました。
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フレーム内側の穴は、位置を確認後に
フレームをずらしてドリルを入れます。
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ボルトを締め込んでみると妻用フレームが
手前のフレーム端に乗り上げています。
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穴あけ位置が微妙にずれたようです。
いったんボルトを緩め、穴を調整します。
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穴を少し大きくするだけでOKです。
修整してからボルトを締め直します。
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両端も含めてタイトフレームが綺麗に並びました。いよいよ新しい折板を取り付ける
工程へ移ることが出来ます。まだ猛暑が続く8月末の1か所目工事は、シャツに
汗染が浮き出るほど過酷な作業でしたが、9月に入ると週ごとに暑さが和らいで
来ました。途中、雨が心配される週末もあり、実際に作業中雨に見舞われた日も
ありましたが、作業を重ねる度に要領が劇的に向上し9月第3週に4か所目の
工事に至りました。折板の取り付け以降の作業は、別記事にて紹介します。
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