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ゴミ集積所屋根葺き替え工事1(2020.9.29)

 
工房開業以来、最大規模の補修工事が舞い込んで来ました。守谷市のお隣、つくば
みらい市内の町内自治会からのご用命で、既に5か月も前の4月下旬に現調に出向き
ました。自治会では町内に5・6か所、写真のような立派なゴミ集積所を保有・管理して
おられます。蓋を開閉するボックス式ではなく、ブロック積みされた囲みに金属板製の
屋根板が葺かれ、前面はサッシの引き戸が取り付けられています(カラス対策も万全)。
 

ご用命は屋根板の葺き替え(交換)との
ことですが、先に小屋の全貌を把握します。


ブロック積みされた壁の上に、鉄骨で
屋根の基礎が組まれています。

 

左右端に傾斜の付いた梁が固定され、その
上に前・中・後3本の軒桁が渡されています。

 

小屋内で見上げると、中間の軒桁が見えます。
隙間はエキスパンドメタルで丁寧に塞がれています。

 

屋根板には折板と呼ばれる鋼板材が使用されて
います。「おりいた」ではなく「せっぱん」と読むそうです。

 

折板で葺かれた屋根の前面縁です。
部分的に形状が崩れています。

 

近接して見ると、鋼板の縁がめくれています。
相当の力・衝撃が加わったように思われます。

 

前縁の全体に渡り、複数
個所に損傷が確認できます。

 

めくれた部分を鈑金により修復できなくもない
ですが、屋根板ごと交換した方が早いでしょう。

 

ご依頼主も交換による修理を望まれています。
そこで、屋根板の固定方法を確認します。

 

鉄骨製軒桁に折板形状に合わせたフレームが
取り付けられ、その上に折板が載っています。

 

フレームから出ているボルトが、
折板を貫通してナット固定されます。

 

修理を要するゴミ集積所は町内に4か所
あるそうです。次の現場を確認します。

 

こちらも酷いめくれ方をしています。自動車が
衝突したことが原因と疑われているようです。

 

自動車・・思い当たるのはゴミ収集車でしょうか?テール
ゲートを開けてバックしてくると衝突する可能性です。
 

つくばみらい市でもゴミ回収は市の委託事業
です。事実だとすればとんでもない話です。
 

ですが、それは自治会の皆様の案件であり、工房が
口を挟んではいけません。3か所目を確認します。

 

比較的程度が軽いとはいえ、ここにも
何かが激しく衝突した跡が確認できます。

 

最後4か所目を確認します。周囲に余裕が
あるので、ここは作業がしやすそうです。

 

ここも酷い有様です。しかし、どうせ折板を
全交換するので気にしないことにします。

 

コロナ禍のため自治会の予算案承認が遅れ、発注をいただいたのは7月下旬に
入った頃です。工期は8月最終の土・日に開始し、9月の各週末(土・日)を使い
1か所ずつ進めていくことにします。9月最後の土日を予備日とすれば、雨天による
延期が生じても9月中に完了できる計画です。資材調達を経て予定通り8月29日
(土)に着工、9月19日(土)最後のゴミ集積所工事の様子を以下に紹介します。

 

最初に元の折板を全て取り外します。本件は工房
テクニカルパートナーのO氏とK氏が担当しています。
 

折板を固定しているボルトを外します。ナットから上の
突き出し部が錆び付いており、ナットが回りません。
 

そこで、ハンドグラインダで突き
出した部分を切断しておきます。

 

この状態でボックスレンチを掛けると
簡単にナットを緩めることが出来ます。

 

2人とも屋根に上がったまま、先に
全てのナットを外してしまいます。
 

折板の取り外しにかかります。下から
ハンマーで叩いてボルトから抜きます。

 

K氏が反対側を持ち上げます。前方の固定が
解除されていると、割と簡単に抜けます。

 

1枚目の折板を前方に引き出します。
O氏が脚立の上で受け取ります。

 

脚立を降り、折板を地上まで引き下ろします。
0.5mm厚の鋼板はさほど重量がありません。

 

作業や通行の邪魔にならないよう
折板を別の場所に移動します。

 

ナットが外れていても折板が浮いてこない
ことがあります。バールを使って押し上げます。

 

手前側のK氏と向こう側のO氏が
息を合わせて要領良く外していきます。

 

外れる度に道路側に1枚
ずつ引きずりおろします。

 

続けて次の1枚にかかります。
折板を持ち上げボルトから外します。

 

折板を取り付けるボルトは、この
鋼板製のフレームから出ています。

 

「タイトフレーム」と呼ばれる折板を
固定するための専用部品です。

 

タイトフレームは軒桁の鉄骨材
(C形鋼材)に溶接されています。

 

右端の2枚です。最も酷く破損していますが、
タイトフレームには影響が及んでいません。

 

タイトフレームを再利用すれば
作業量も費用も節約出来るのですが、

 

前述したようにナットから突き出たボルトの先に
サビが固着し、ナットを緩めることが出来ません。

 

ハンドグラインダでナットから先部分を切り落とした
ため、タイトフレームは交換しなければなりません。

 

タイトフレームは割と安価な部品ですし、
さらに出来上がりの見栄えも重要です。

 

最後の1枚を外し終わり、屋根全体が丸裸状態です。左右横方向に
渡された3本のC形鋼製軒桁が見えています。タイトフレームと軒桁の
接合は堅牢な溶接、と言うことは・・取り外しは容易ではありません。

 

撤去された元の折板です。廃品回収業者の方とコンタクトがあり、
作業後に屑鉄として引き取ってもらうことになっています。現場
まで回収に来てくれるそうで、労力も省けて大変助かります。

 

新しく購入したタイトフレームです。ステンレス製は高額なので
メッキ仕上げ品です。ボルト端が剣先状に加工されています。

 

元のタイトフレームを撤去する前に、
新しい部品を一度仮置きします。

 

タイトフレーム1枚には3個の山と2個の谷が
含まれ、左右端は隣とフレームに連続します。

 

タイトフレーム1枚につき1か所ずつ、仮固定用の
ネジ穴を開ける位置を、元のフレームにマークします。

 

新しいタイトフレームは、溶接ではなく
軒桁のC形鋼にボルトで固定します。

 

元のタイトフレームに開いている穴をガイドに、
8mmドリルで仮固定用の穴を開けます。

 

脚立に登り、軒桁の
上からドリルを当てます。

 

14.4Vや18V仕様の高トルク電動ドライバ・ドリルが
登場し、鉄骨に8mm程度の穴は簡単に開きます。

 

ただし、ドリルビットの刃先はあまり長く持ちません。
切れ味が落ちてきたら新しいものに交換します。

 

穴を開けただけなのでまだタイト
フレームは固定されたままです。

 

次にタイトフレームと軒桁の溶接を
ハンドグラインダで切り離します。

 

フレーム谷部分の両側が
軽く電気溶接されています。

 

ボルト先の切断作業に次ぐ騒音が出ます。自治会
役員の方から予め町内に告知いただいております。

 

溶接により肉盛りされた部分を
出来るだけ削り落とします。

 

タイトフレームと軒桁の境界が露出すれば、
ハンマーで叩くことで引き剥がせます。

 

同時に2台のハンドグラインダを動作させる
ため、1.9kVA仕様の発電機を使用します。

 

元々保有していた発電機が途中で故障し、
急遽工房で調達することになりました。

 

テクニカルパートナーK氏とO氏、2名
2台のハンドグラインダで作業します。

 

ハンドグラインダには径105mmの
鉄工用切断砥石を装着しています。

 

溶接部を連続して切削すると切断砥石が激しく
摩耗するので頻繁に交換していきます。

 

溶接部をひと通り削り取っても、タイトフレームはまだ軒桁に付いた
ままです。ここからはレンチをかけて力尽くで引き剥がします。

 

ほとんどの溶接部はフレームを
折り曲げることで剥がれてきます。

 

いくつかは元の溶接が強固だったのか
外れません。バールを入れて剥がします。

 

それでも外れてこない場合は
ハンマーで溶接を叩き壊します。

 

剥がれたタイトフレームです。経年で
表面に錆びが広がっています。

 

反対側の軒桁でも同時
進行で作業が進みます。

 

溶接部分の取り残しがあるので
再度ハンドグラインダを使います。

 

タイトフレーム谷部分の
両側を丁寧に削り取ります。

 

再びレンチをかけて
引き剥がします。

 

2本の軒桁とも最後のタイトフレームを残す
だけです。両端は山部で終わっています。

 

取り外したフレームの残骸です。折板と
一緒に廃材として引き取ってもらいます。

 

元のタイトフレームが全て取り払われスッキリしました。
新しいフレームを取り付ける段階ですが、まだ準備があります。

 

再びハンドグラインダの出番です。
同じく切断砥石を装着します。

 

フレームが固定されていた軒桁(C形鋼)の
上面に、溶接肉盛りの跡が残っています。

 

そのままでは新しいタイトフレームを
取り付ける際に凹凸となって邪魔です。

 

切断砥石を平らに当てて
肉盛りの凹凸を取り除きます。

 

新しいタイトフレームを
必要数分運び入れます。

 

タイトフレームの固定方法は
溶接からボルト締めに変更します。

 

必要なボルト、ワッシャ、ナットの
セットを必要数分揃えます。

 

タイトフレーム1枚に付き1か所ずつ既に
開けられている穴にボルトを入れます。

 

タイトフレームの谷部分には全て
ボルト用の穴が開けられています。

 

ですが、ここで固定するボルトは軒桁にも
穴が開けられている1か所のみです。

 

C形鋼の手前から内側に
ボルトを入れます。

 

ボルトとナットの双方にレンチを
かけてボルトを締め込みます。

 

1列当たり5枚のタイトフレームが並びます。
ボルト類を入れた容器を途中に下げておきます。

 

全てのタイトフレームが仮固定された状態で、
電気ドリルで残り全てのボルト穴を開けます。

 

タイトフレームの谷部に開けられている
穴をガイドにドリルビットを入れます。

 

O氏が考え出した作業手順で、この方法により元のタイト
フレームと寸分違わない位置に取り付けることができます。

 

穴を開け終わると同時に
ボルトを入れて行きます。

 

裏側からワッシャ・ナットを入れレンチで
締め込む・・、ひたすら繰り返します。

 

亜鉛メッキにより銀色に輝く
新しいフレームが並びます。

 

2列の軒桁でほぼ同じスピードで
順調に作業が進んで行きます。

 

軒桁の端に辿り着きました。元のフレームでは
最後の山を強引に折り曲げて帳尻を合わせていました。

 

それでは外観が悪く、強度的
にも十分ではありません。

 

調べてみるとこのような両端専用の妻用フレームが販売されています。三角形に閉じた
構造なので(底板が無い安価な開放型もある)、部品単体としても強度が十分にあります。

 

ただし、ひとつ問題があります。底板に
ボルト固定用の穴が開けられていますが、

 

三角形の内側にある穴は、位置的に
軒桁の外側に出てしまいます。

 

そこで、軒桁の端を飛び出ない
位置に新たに穴を開け直します。

 

少々位置がずれていますが、軒桁側には
現物合わせで穴を開けるので問題ありません。

 

妻用フレームを取り付け位置に
当て、ボルト穴の位置を確認します。

 

8mmドリルによる穴あけ作業も
ようやく終わりが見えてきました。

 

フレーム内側の穴は、位置を確認後に
フレームをずらしてドリルを入れます。

 

ボルトを締め込んでみると妻用フレームが
手前のフレーム端に乗り上げています。

 

穴あけ位置が微妙にずれたようです。
いったんボルトを緩め、穴を調整します。

 

穴を少し大きくするだけでOKです。
修整してからボルトを締め直します。

 

両端も含めてタイトフレームが綺麗に並びました。いよいよ新しい折板を取り付ける
工程へ移ることが出来ます。まだ猛暑が続く8月末の1か所目工事は、シャツに
汗染が浮き出るほど過酷な作業でしたが、9月に入ると週ごとに暑さが和らいで
来ました。途中、雨が心配される週末もあり、実際に作業中雨に見舞われた日も
ありましたが、作業を重ねる度に要領が劇的に向上し9月第3週に4か所目の
工事に至りました。折板の取り付け以降の作業は、別記事にて紹介します。

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