過去、スチームアイロンの修理記事を2件アップしております(下記リンク)。
記事をご覧になった方から同じくスチームアイロン修理のご依頼がありました。
工房に届いてみると、異様に大きな箱に梱包されており、持ち上げると異常に
重量があります。取り出すとAriete社の製品で、本体とは別にアイロン台の
ような装置とセットになっています。業務用に使用される製品のようです。
http://techbase.biz/Repair3/Steamiron.htm
http://techbase.biz/Repair2/DelonghiIron.htm
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製品名はStiroMatic
BRAVO、
画像検索で写真が何枚も出てきます。
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型番はモデル4262、現行機種の
モデル2200に続く息の長い製品です。
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アイロン本体は意外と重量がありません。
業務で長時間使用するのに適しています。
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アイロン台を兼ねているこの装置は
スチーム発生器(ボイラー)を内蔵しています。
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電源を入れても本体が触れる程度にしか温まらないそう
です。先にスチーム発生器(ボイラー)から点検します。
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カバーの固定にはトルクスネジが使われていますが、
小型のマイナスドライバーで緩めることが出来ます。
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カバーを開けると大きなボイラーが現れます。
スペックによると容量が900ccもあります。
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アイロン側のヒーターが正常に機能していないので、
まず電力が供給されているのか確認します。
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電源コードからボイラー側の電源スイッチを経由し、スチーム管と並行する
コードによりアイロン側に電力が供給されます。その出口部分で電源電圧
(AC100V)が確認できます。アイロンに電力が送られていることになります。
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アイロンの内部を点検しなければなりません。
どこから分解できるのか、いつも悩みます。
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温度調整ダイヤルとその下のカバーが一緒に
外れてきます。嵌め込まれているだけです。
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ダイヤルの回転を内部のサーモ
スタット軸に伝達する金具です。
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カバーの下から6角ネジが現れました。
柄の長い6角ドライバーを用意します。
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アイロンのハンドルが邪魔になり、普通の
6角レンチでは手間がかかり過ぎます。
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ボイラーの高温を伝わりにくくするためでしょう、
ネジにゴム製のブッシュが入れられています。
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アイロン後方を分解します。電源
コードの奥に固定ネジがあります。
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カバーの後方半分が分離します。
一般的なアイロンと変わりありません。
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電源コードとスチーム管が
内部に引き込まれています。
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狭い空間に配線と配管が要領よく収められて
います。電源コードの固定具を外します。
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スチーム管の接続口です。2個の
クリップで固定されています。
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ラジオペンチでクリップを解除します。金属部品の
腐食が見当たらないのでスチームの漏れはないようです。
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ボイラーからのスチーム管
(ゴム製)を抜き取ります。
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本体にハンドルを固定する
もう1本のネジです。
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絶縁性を高めるため6角ネジの頭に
樹脂製のキャップが被せられています。
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6角ドライバーを入れて
ネジを緩めます。
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もう1本の固定ネジが外れました。こちらも
ゴム製ブッシュが入れられています。
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本体からハンドルを引き離すため
スチーム管を内部に押し戻します。
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ハンドルは本体上半分の金属カバーに固定
されています。金属カバーと一緒に分離します。
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隙間が広がり内部を確認することが出来ます。
スチーム管の取り付け口とサーモスタットが見えます。
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本体右側面に温度ヒューズが取り付けられています。これまで
アイロンの故障のほとんどが温度ヒューズのトラブルでしたが、
今回もまた・・業務用アイロンでも・・温度ヒューズでしょうか。
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耐熱性のテフロンチューブを被せた状態で
金属製ステーにより固定されています。
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ステーを広げて温度ヒューズを取り出します。
アイロン修理では必ず点検する部品です。
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導通が全くありません、温度
ヒューズが完全に切れています。
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一方、発熱体(ヒーター)の導通を確認すると20Ω
ほどの抵抗があります。発熱体は問題ありません。
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取り出した温度ヒューズです。スチームの出ない空焚きや
連続使用時間を超えた使用により切れるようです。
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しかし、定格温度以内でも繰り返し熱ストレスを受けることで
切れる可能性があります。240℃の温度ヒューズです。
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工房の在庫部品に丁度
240℃のものがあります。
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240℃に晒される可能性のある場面で
半田付けによる接続は出来ません。
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金属環を用いて圧着により接続
します。アルミの金属環を用意します。
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元の温度ヒューズの端子を少し残しておき
新しいヒューズ端子を重ねて圧着します。
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このくらいぶっ潰して
おけば大丈夫でしょう。
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温度ヒューズの両端子とも接続します。
電力が発熱体に供給される途中に入ります。
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元の部品に使用されていたテフロン
チューブです。再利用します。
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残念ながら金属環を通過できないので
金属ステーに挟まれる範囲に被せます。
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金属環が露出している部分も覆うため
ひと回り太い熱収縮チューブを被せます。
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温度ヒューズの他端は、ビニルコードを介して発熱体の端子に
金具で接続されます。外した状態でチューブを入れます。
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テフロンチューブで保護されている
部分を金属ステーの内側に入れます。
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金属ステーを折り曲げて
温度ヒューズを固定します。
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上側カバーやハンドルを組み付け、
後部の配線と配管を元に戻します。
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スチーム管を接続し固定用の
クリップを元の位置に掛けます。
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あらためて動作を確認します。アイロンの
電源、ボイラーの電源ともONにします。
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電源ONの状態で、シーソースイッチの
ボタンがオレンジ色に点灯します。
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アイロン側にもパイロットランプが
あり、オレンジ色に点灯します。
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放射温度計でアイロン底面の温度を
確認します。一挙に上昇してきます。
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ボイラー側のこのダイヤルは
スチームの吹き出し量を調整します。
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アイロン側のボタン操作により
ボイラーのバルブが開閉します。
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スチームが勢いよくガンガン出てきます。アイロン本体からボイラーを切り離したことで
大容量かつ高出力のボイラーを利用できます。同時にアイロン本体は、限られた空間に
ヒーターとボイラーを無理に組み込む必要がなく、ボイラーが無い分軽量に設計できる
わけです。冒頭で「業務用の製品?」と書きましたが、修理を終えてみるとそこまで
堅牢な造りではないように思います。Ariete社の製品ラインナップからしても、やはり
一般家庭用で使用頻度や使用時間が長いユーザ向けの製品でしょうか。「分離型」に
何か別物の雰囲気を感じましたが、月並みに「温度ヒューズ切れ」が故障原因でした。
さて、疑問が一つ残ります。「電源を入れても本体が触れる程度にしか温まらない」、
逆に言えば「触れる程度に温まっていた」のは何故だったのでしょうか。ボイラーが
機能していてアイロンにスチームが送り込まれていた、と考えれば説明がつきます。
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