県内石岡市にある介護老人保健施設にお邪魔します。工房のある
守谷市からゆうに50km以上の距離、常磐道利用でも1時間近く
かかります。車椅子用の体重計が故障しているとのご連絡です。
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高齢者の方々が車椅子に乗ったまま、車椅子ごと体重を
測定することができる特殊な体重計です。以前にも他の
施設で修理したことがあります。どのような修理をしたか
既に忘れてしまいましたが、その構造は覚えています。
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職員の方から不具合の
状況について説明を受けます。
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電源スイッチを押すと、「88888」と
全セグメントが点灯し無反応になります。
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かなり長い時間が過ぎると「-----」に
表示が変わり、以後完全にフリーズします。
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故障原因を探るべく、取りあえず
体重計本体のカバーを外してみます。
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今回の修理は、現場対応で何とか完了させたいものです。
片道50kmを超える距離は、何度も往復するには大変です。
また、工房に引き取って修理しようにも、この体重計では大きさ・
重量とも非常に困難です。しかし、およそ工房に舞い込む仕事の
多くは、実際に確認してみないと修理の可否など分かりません。
結果、「何とか直す」という意気込みくらいしか用意できません。
昨年10月の松山行を思い出します。カバーを開けた体重計の
内部は、歪ゲージを内蔵させたアルミ製ブロックを中心に、4方向
からの荷重を伝達させる分厚い鉄板のアームが延びています。
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カバーを外すまでもなく気づいていましたが
センサーの接続コードが酷い状態です。
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センサーから出る配線に、コネクタを
介してコードがつながっています。
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手前の金属製フレームをくぐるところで、
タイラップによりコードが固定されています。
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いずれにしても繰り返し過大な力がコードに加わり、
深刻な損傷を受けていることは明らかです。
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他方のコード配線先である
制御計測装置を点検します。
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背面側にカバーを固定
するネジがあります。
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と、その前に乾電池を抜いておきます。
乾電池ボックスのカバーを取ります。
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UM-2乾電池6本を内蔵します。15年ほど前の製品
だそうで、アダプターや充電には対応していないようです。
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背面カバーの取り付けネジ位置に
このようなシールが貼られています。
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シールを「はがさなくても」修理しない・・、
だから守谷工房に依頼が来るのでしょう。
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背面側の固定ネジが外れると、実際には
表側のカバー(パネル)が分離してきます。
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液晶表示器への信号線が
FFCで接続されています。
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センサーからの信号線は、この
コネクタにより基板に接続されます。
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センサー側のコネクタを持ち上げて並べます。最も
単純な原因として、接続コードの内部断線を調べます
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赤・白・黒・緑・黄5本の両端間での導通を順に調べて
いきます・・が、いきなり最初の赤で導通がありません。
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可能性としては、センサー側コネクタの
近くで断線している確率が高そうです。
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接続を調べようとしてコネクタを軽く引っ張った途端、何と短い配線を
残して被覆内から抜けてきてしまいました。基板側に出ていた黄色の
配線は外被シールド線のアース接続なので、実際には赤・白・黒・緑の
4本です。その全てが見事に切れています。ほぼ不具合の原因でしょう。
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4本をつなぎ直すことは難しい作業ではありませんが、
ズタズタになった外被も何とかしなければなりません。
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途中から切り離れてしまったビニル製
保護外被をいったん取り出します。
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外被表面にカッターナイフで長さ方向の
切り込みを入れると、簡単に外れます。
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保護外被を取り去ると、その下から
金属製のスパイラルチューブが現れます。
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強い引っ張り力が加わり、スパイラルが
破断・分離して伸び切っています。
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伸びた部分はもはや使用できない
ので、切り離して取り除きます。
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強い曲げや引っ張りに耐える外被を伴った
特殊なコードのようです。初めて見ます。
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スパイラルを取り除いた区間は
強度的に無防備な状態です。
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残っているスパイラルチューブを移動させて
元のチューブ位置まで引き寄せます。
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出来るだけ隙間が残らない
よう密着させておいて、
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接続部分に瞬間接着剤を
注し込んで固定します。
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接続部分の前後を覆うように熱収縮
チューブを被せ、加熱して密着させます。
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芯線の接続作業に移ります。コネクターのピンが
抜けそうにないので、残っているコードを利用します。
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配線コード側も長さを整え、
各色ごとにつなぎ合わせます。
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芯線を数mm剥き出して
半田上げしておきます。
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双方とも芯線の準備を整えます。
確実で綺麗な作業を心がけます。
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芯線同士の撚り合わせは見送り、
半田付けのみで接続します。
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芯線間での短絡を防ぐため
熱収縮チューブを被せます。
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接続作業完了です。メーカによる修理ならば、専用の
加工済み接続コードにそっくり交換するところでしょう。
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まだ外被の保護処理など終わっていませんが、
ここで取り合えず動作テストをしてみます。
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大丈夫です、電源スイッチを入れるとシステムの初期化動作の後、
「0.00」が表示されてスタンバイ状態になります。そういえば、
「線はひっぱり過ぎないように注意!」なんてシールが貼られて
いるではありませんか。でも、ここに貼ってもコードのどこを引っ張ら
ないようになのか?分からなくないですか・・余計なことでした。
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外被保護の作業に戻ります。先ほど取り
外しておいたビニル製保護外被を戻します。
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ビニル外被は長さを切り詰めたわけでは
ないので、ほぼコードの先端まで届きます。
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長さ方向に入っている切り込みを閉じながら
ビニルテープを2重にしっかり巻き付けます。
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金属フレームの穴を通るところで
タイラップで厳重に固定します。
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これだけの措置をしても、ガツンと力が
加わればいずれ再び切れることでしょう。
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その時はまた守谷工房が駆け付ける
までです。本体のカバーを元に戻します。
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組み上がったところで再度
動作確認を行います。
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初期化動作中「88888」が表示され
その後「0.00」となりスタンバイします。
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試しに私自身が載ってみます。断じて71.4kgなんかありゃ
しませんので! 着衣状態で手に道具も持った状態ですから。
ま、体重計としては正常に機能しているようなのでOKですが。
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修理作業を終え、職員の方に報告し確認していただきます。
事務部長さんが直って良かったと胸を撫で下ろしています。
TANITA社の製品で、新しく入れ替えると現行製品でも
20万円以上するそうです。ともあれ、幸いにも現場修理で
完了でき、持ち帰ることも再訪問の必要もなくなりました。
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