こちらの置時計、AC100Vを電源とする同期モーターで
駆動する電気時計です。電源周波数の50/60Hzが
かなり正確なので、クォーツが普及する以前は狂いの
少ない時計として広く利用されていました。実は2019年
5月に一度修理したことのある時計で、破損したモーター
シャフトのピニオンギヤを工房で製作し交換しています。
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レザーカッターでアクリル材から切り出した
ピニオンなので、壊れた可能性があります。
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外装カバーを取り去り、内部の機構を引き出し
ます。駆動伝達部の金属カバーが見えます。
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同期モーターとは言え、マグネットを内蔵するローターが、
回転磁界を発生するステーター内に収まっているだけです。
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5年前に製作したピニオンギヤ、お久しぶりです。
歯は残っていますが摩耗が進んでいるはずです。
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もう一度ピニオンギヤを交換することにしま
しょう。ただし今回は別の方法で製作します。
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ローター内に樹脂製のスリーブを介して
差し込まれ、中心をシャフトが貫通します。
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最近、出番が増えつつある光造形(LCD)3Dプリンターを
利用します。このくらい微小な部品では、レザーカッターや
FDM3Dプリンターよりもはるかに高い精度で加工できます。
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1個あれば間に合うところ、様子を
見るため6~8個出力しておきます。
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ピンバイスにドリルを付けて
シャフトが通る穴を開けます。
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アクリル材をカットしたピニオンに比べ、
歯の1枚1枚が綺麗に刻まれています。
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ピッチ円の正確な把握はなかなか困難で、印刷
パラメータのミスマッチもありかなり大きめです。
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サイズを僅かに変更して印刷し直します。パラメータも
調整したので、歯先がさらに綺麗に成形されています。
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シャフトが通る穴も一緒に成型します。バリが
残らないようサポートを丁寧に取り除きます。
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万全を期したつもりでシャフトに戻しますが、相方の
平歯車が今一つ軽く回りません。まだ、ピッチ円を
調整する必要があるのか、あるいは歯先形状が
インボリュート曲線からかけ離れているのでしょうか。
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試しに元のアクリル製ピニオンに
戻してみると、軽く回転はするものの・・
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平歯車側に問題があります。歯先は何ヶ所か
欠けており、ここで回転が止まっています。
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ご依頼主が、「時々時計が止まる」とおっしゃっていた
原因は平歯車であり、ピニオンはまだ大丈夫そうです。
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ならば平歯車を修理することにします。
径を測定し歯数を数えます、T80です。
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修理方法は、平歯車の歯先部分だけをアクリルから切り出し
タイヤとして元の歯車に履かせることにします。平歯車の中心
には、同軸のピニオンがあり、回転方向を決める金属部品が
挟まれているなど、なかなか厄介な構造をしているからです。
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歯先をタイヤとして履かせるため、
元の歯車から歯先部分を削り取ります。
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タイヤの内径に一致するまで
周囲を削り取れば良いのですが・・
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やってしまいました、根元のピニオンを旋盤のチャックで
咥えていたのですが、少し力が加わったところで・・
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ピニオンが崩壊してしまいました。
シャフトとしても使えそうにありません。
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こうなると、平歯車側を丸ごと製作するしかありません。
調子乗って、LCDプリンターで平歯車を印刷しますが、
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最近分かってきたことは、LCDプリンターは平面的で
精緻な形状の再現は、意外と苦手であることです。
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歯先形状が厚み方向で乱れるため、モーター側のピニオンと
スムーズに噛み合いません。何度調整しても解決しないため、
レザーカッターでアクリル材を切り出してみます。ウォークマン
用の平歯車を製作したAQLV-400の登場です。中間に入り
金属レバーを留めるワッシャも一緒に製作します。歯先形状に
関しては、LCDプリンターよりもかなり綺麗に仕上がっています。
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壊れてしまった根元のピニオンギヤおよび
スリーブ部分は、LCDプリンターで製作します。
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3D形状なので2D加工のレザー
カッターでは手に負えない加工です。
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スリーブ部分にワッシャを
通し、アタッチを確認します。
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あらためて平歯車を通してみます。レザーカッターによる
パーツとLCDプリンターによるパーツが合体します。
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レザーカッターで刻まれた歯先です。
全周で形状の乱れが確認できません。
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ピニオンと平歯車の間に、回転方向を
決める金属製レバーとワッシャを入れます。
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平歯車側にスリーブが突き出る部分です。
絶妙なきつさで嵌まるので接着は不要です。
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モーター側のピニオンは、結局以前に
製作したものをそのまま使用します。
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この状態で回転はスムーズそのものです。モーター側の
ピニオンを作り直すだけのつもりが、えらく手間のかかる
作業になりました。そしてLCDプリンターの使い方には、
まだ研究や試行の余地があることが分かってきました。
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駆動伝達部を覆う
金属カバーを戻します。
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本来は両側に出ているツメを折り込むことで固定
するのですが、大事を取り接着剤で代用します。
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外径を変更したり僅かな噛み合わせを調整したり、
モーター側ピニオンの製作から始まり平歯車側の
アセンブリ製作も併せると、これだけの失敗作を経て
修理完了となりました。2次元加工のレザーカッター、
LCD3Dプリンター、FDM3Dプリンターとそれぞれ
長短があります。部品加工に合わせていかに組み
合わせるか、ハイブリッド的に考えることが重要です。
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電気時計が再び動き出しました。数字表示式ではありますが
現在のデジタル方式でもなければ、ある意味でデジタル式の
パタパタ表示でもありません。円筒が回転して周囲に印刷
された数字が変わるだけです(時・分が進む直前にカムの
働きで素早く変わる仕組みです)。2回にわたり修理を要望
されたご依頼主の、強く熱いレトロスペクティブを感じます。
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