ゼンマイケースを少し持ち上げることで、ゼンマイ側・シリンダ側
ギヤの噛み合わせを回復させる試みは、あっけなく失敗に終わり
ました。シリンダのシャフト端がゼンマイケースの穴に通り、位置が
決められていることに気付いていませんでした。やはり歯が削れて
しまったギヤを修復、あるいは作り直すしか方法がないようです。
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このギヤは単なるギヤではありません。
シャフト途中のスナップリングを外すと、
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ギヤがシャフトから抜けてきます。その
下に3本のツメを伴う金具があります。
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ギヤの裏側に、溝の刻まれた
金属板が嵌め込まれています。
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金属板の溝にツメの先が入り込み、
一方向にのみギヤを回転させます。
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ギヤの歯数・径・ピッチを計測し、CAD上に再現します。
溝の付いた金属板相当の円盤も用意しなければなりません。
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精密な切断加工が必要なので
こちらのレーザー加工機を使用します。
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ギヤ自体は3mm厚の
アクリル板から作ります。
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レーザー出力と切断速度を
調整し、データを送り込みます。
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稼働開始以来、快調に働き
続けているLaserVelocityです。
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ギヤの切断加工が
終わりました。
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最終的に傘歯車にしたいのですが
この段階では単なる平歯車です。
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次に、ツメが入り込む溝を
伴った円盤を作ります。
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金具のツメが掛かれば良いだけなので
1mm厚のアクリル板を使用します。
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中心部の穴に突起があるのは、
シャフトのキーを通すためです。
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つまり、この円盤はシャフトに
固定されて一緒に回転します。
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先に、溝付き円盤を
シャフトに通します。
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ギヤの保護紙を
剥がしておきます。
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ギヤをシャフトに通します。ギヤ自体は
このままではシャフトに固定されません。
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ギヤを移動させて溝付き
円盤と重ね合わせます。
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位置がずれないように
クリップで固定し、
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2枚が重なる面に接着剤を
流し込み、接合します。
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溝付き円盤の1mmとギヤの3mmで、計4mm厚となります。
金具のツメを押さえ付けた状態で、スナップリング用の溝が
顔を出します。リングを嵌めてギヤが抜けないようにします。
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それらしき代用のギヤが
出来上がってきます。
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回転軸の方向を90度変換する
ため、元のギヤは「傘歯車」です。
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レーザー加工機は2次元方向にしか加工できない
ので、斜め方向に歯を加工することなど不可能です。
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そこで、レース盤で歯の先を削り
落とすことで簡易的に傘歯車にします。
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ギヤを回転させながら歯の先にヤスリを当てます。
不用意にバイトを用いると、先が欠け飛びそうです。
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どのくらい削れば良いのか分からないので
ひとまずこれくらいにしておきます。
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傘歯車もどき・・といったところでしょうか。ゼンマイに組み込み
オルゴール本体に戻すと、すぐさま問題が判明します。歯先が
シリンダ側ギヤに届かず噛み合いません。最低限、噛み合わない
ことには動力を伝達できません・・ギヤ全体の厚みを変更します。
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ギヤを刻むアクリル板を単に厚くすると、
歯先の強度が低下し壊れやすくなります。
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もう1枚中間に円盤を入れることで
ギヤ全体の厚みを増やすことにします。
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3枚の接着に進もうとした時に、
また別のアイデアが浮かびます。
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ギヤ全体の厚みを増やすと、スナップリングを
嵌める溝の位置が合わなくなるのでは・・
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そこで、溝付き円盤中心部の穴を大きくし、その
下のシャフトが太くなる部分を貫通するようにします。
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ツメ付き金具はバネ座金でもあるので、
貫通したところで押し戻されてきます。
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3枚の中心を正確に合わせ
クリップで固定します。
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接着剤を入れて3枚を
完全に接合します。
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中間に1mm厚のアクリル板が加わり、
ギヤ全体は5mm厚に変更されます。
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ツメ付き金具を押し下げることができるので、
厚みが増していてもスナップリングは入ります。
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加えて、ツメ付き金具がスプリングのように機能
することで、ギヤ同士の当たりが調整されます。
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レース盤に取り付けて、歯先
形状を傘歯車に近づけます。
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最初のギヤがほとんど噛み合わなかった
ので、欠き取る範囲を小さめにします。
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このくらいでどうでしょうか。
試行錯誤するしかありません。
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ゼンマイケースに組み込みオルゴール
本体に取り付けて動作させてみます。
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今度は傘歯車同士が噛み合いはしましたが、
ゼンマイを巻き上げた瞬間悲鳴のような音がして、
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その後全くゼンマイを巻き上げることが出来なくなり、分解してみると・・
やはり恐れていたことが起こっています。ギヤ同士が噛み合う際に
生じる応力に、アクリル製ギヤの歯先が耐えられません。悲鳴音と
ともに、ほとんどの歯が欠けて飛んでしまっています。元のギヤは
ポリカーボネートやPOMのような強靭なエンプラ製でしょうか、代替
材料としてアクリルはおよそ適当ではありません。決定的に衝撃に
弱いことは承知していますが、レーザーによる自在な加工性を前提に
すると他に材料が見つからないのです。確実に噛み合うことで歯先の
ストレスを小さく保ち、かつ歯先の強度自体を向上させるようひたすら
形状を工夫するしかないようです。えらいことになったものです。
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