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鉋刃研磨用冶具の製作工程

今や製造中止となり、店頭在庫でも探し当てない限り入手困難な鉋刃
研磨用の冶具です。本体は鋳物製で、非常に堅牢に作られています。
 

刃物装着部の間口、ローラーの径や取り付け位置
など各部の寸法は、ほぼオリジナルに合わせます。
 

装着部の構造やローラーの取り
付け方法には工夫が必要です。
 

CADを使って全体構造と各部品を設計します。部品を作る
素材はホームセンターで入手可能な範囲から選びます。
 
 

3D表示させた組み立て図です。
鉋刃を装着した状態を描いています。


近くのホームセンターで揃えた素材。この他にステンレス
丸棒が必要ですが、高価だったのでネットで購入します。
 

5mm厚、30mm幅のアルミ板を、長さ
96mmに切断し、刃物の装着台を作ります。
 

端面をディスクサンダーで整形します。
一挙に過熱するので軍手が不可欠です。
 

稜線のバリを削り落とし、軽く
面取りして危険がないようにします。
 

穴あけ位置を材料に直接けがくと精度を保てないので、
CADから装着台の平面図をプリントして型紙を用意します。
 

切り抜いた型紙をスプレー糊で
アルミ板に貼り付けます。
 

穴あけ位置にセンターポンチで刻印します。時々
先端を研磨しないと中心位置が微妙にずれます。
 

穴あけの中心位置にクロスマークを印刷して
います。クロスのほぼ中心に刻印されています。
 

ポンチが打たれた位置に3.2mm径の
穴を開けます。M4ネジの下穴です。
 

装着台とハンドルの連結用に4個、
ローラーの保冶具固定用が4個です。
 

M4のネジ穴とするため、
M4標準タップを用意します。
 

タップをタップハンドルに取り付け、装着台と
なるアルミ板をバイスに水平に固定します。
 

複数方向からタップの垂直を確認しながら
ゆっくりタップを回しネジを切り進めます。
 

M4タップの下穴は指定では3.3mmです。3.2mm穴ではタップの
回転がかなり重く、途中で3.3mmドリルを購入して開け直しました。
 

ハンドル部には18mm幅のアルミチャンネルを利用
します。装着台との連結用に4mm径の穴を開けます。
 

板厚2mmのため強度的にやや不安ですが、
装着台と一体化すれば強度が増すでしょう。
 

皿ネジの頭を埋め込むため、8mm径の
ドリルで穴の入り口側を座ぐります。
 

以前に井出電機製作所からいただいて再生したKIRA製
ボール盤
を活用します。振動もなく美しい加工ができます。
 

2つの穴が斜めにずれて並んでいるのは、狭いチャンネル
内で皿ネジの頭が互いに干渉するのを避けるためです。
 

あまり深く座ぐりを入れると穴周りの
強度が低下するのでほどほどにします。
 

ローラーのホルダーはステンレス製のL字
金具を流用します。ただし加工が必要です。
 

金具に書き込んである黒線に沿って切断
します。先に木片にネジで固定しておきます。
 

木片を砥石切断機のバイスで保持します。切断する
位置を一定に保つためストッパーをセットしています。
 

さすがにステンレスは硬いです。回転砥石が
逃げないよう無理をせず徐々に切り進めます。
 

保冶具代わりに木片を使用しているので
正確かつ安全に切断できます。
 

切断を終えました。大きくバリが残って
いますが、次の成形作業で取り除きます。
 

小さな部品でしかも成形中に猛烈に発熱
するので、ペンチでしっかり保持します。
 

ディスクグラインダに当てて、
曲線部分を研削・成形します。
 

この部分のRをローラーの径12mm以下に
削り取らないと、砥石の表面と干渉します。
 

バリが残っていますのでベルト
サンダーで削り落とします。
 

ローラーの保冶具が出来上がりました。汎用品のL字金具を流用した
ので、簡単に加工することができました。堅牢で錆の心配もありません。
 

保冶具にローラーの止めネジ(M6)を入れる
ネジ穴を加工します。下穴を5mm径に拡大します。
 

左側が5mm径に広げた下穴、
右側はL字金具の元の穴です。
 

M6タップをタップハンドルに取り付け、
L字金具はバイスに強く固定します。
 

タップの垂直を保ちながらネジを切り
進めます。時々切削油を補います。
 

ネットで注文していたステンレス丸棒(12mm径)が届きました。近くの
ホームセンターの3分の1の価格です。レターパックライトで送料も安い。
 

砥石切断機で長さ90mmに切り分けます。
1本(300mm長)から丁度3本取れます。
 

切断端面の周囲が焼けて変色しています。
大きなバリはレース盤で取り除きます。
 

切断したステンレス丸棒をレース盤にセットし
端面を仕上げ、周囲のバリを削り落とします。
 

中国製の安物バイトは切れ味が非常に悪いです。途中で
タンガロイ製チップの付いた8mmバイトに交換しました。
 

ローラーの両端面に軸受部を加工します。
ドリルの先端角を利用してピボット状にします。
 

写真ではドリル刃を使用していますが、ローラーの
フラッターを小さくするためセンタードリルに代えます。
 

M6ネジを加工した軸との相性を見て、
後で切り込み深さを調整します。
 

ローラーを回転させる軸を作るため
ステンレス製M6ネジを用意します。
 

レース盤のチャックで正確に把握できる
よう六角ナット2個を取り付けます。
 

加工中にネジがチャック内で空転しないよう
2つのレンチを使用してきつく締め込みます。
 

六角ナットの平面部に三つ爪チャックが
正確に当たるよう把握・固定します。
 

先端角70~80度くらいに
なるようバイトをセットします。
 

軸と軸受が斜面の一部で摺動するよう、
先端部を僅かに削り残します。
 

簡易的ですが潤滑油を介してピボット状に
機能すれば、十分実用的な軸になります。
 

本体の組み立てに必要な部品が揃い
ました。組み立て作業にかかります。
 

ハンドル部にM4-L20mmの皿ネジを通し、10mmの
ステンレス製スリーブを介して装着台と連結します。
 

ハンドル部の2mm厚アルミチャンネルは、強度的に
若干不安ですが、連結すると十分強固になります。
 

装着台の飛び出し部分に、ローラーの
保冶具を固定するネジ穴が見えています。
 

L字金具を加工した保冶具をステンレス製
M4-L10mmのネジで強く固定します。
 

両端に取り付けられた保冶具の間に
ステンレス製ローラーを取り付けます。
 

軸として加工済みのM6ネジを、緩み
止めナットを入れて取り付けます。
 

緩み止めナットを開放した状態でM6ネジを締め込み、
ローラーがガタつきなくスムーズに回転するよう調整します。
 

調整できた時点で緩み止めナットを
締め込み、軸受を固定します。
 

ハンドルの中央に刃物を固定する、ノブ
付きM6-L30mmネジを取り付けます。
 

これで金属部品からなる本体が完成です。
ピボットに注油すると非常に滑らかに回転します。
 

ハンドルの左右に取り付けるグリップを製作します。
適当な木材を長さ100mmに切り揃えます。
 

アルミチャンネル断面の「コ」の字型に
うまく嵌まり込むよう細工します。
 

アルミチャンネルの間隔に合わせて
昇降盤で2本の溝を切り込みます。
 

丸鋸の刃幅がチャンネルの板厚
2mmにほぼ合致しています。
 

実際に取り付けてみて、溝の
間隔や深さの具合を確かめます。
 

ハンドルの左右にこのように取り付けられます。
断面が四角では握り難いので改良します。
 

ルーターで稜線を面取りします。
R6.3の銀杏ビットを使用します。
 

使う人により握り易さは異なるので、この程度に
留めて必要により修正してもらうことにします。
 

アルミチャンネルの底部分が飛び出さない
ように、溝と溝の間を2mmほど浚います。
 

10mmのストレートビットで
2回に分けて加工します。
 

再度アルミチャンネルに取り付けて
溝周りの仕上がりを確認します。
 

グリップの木口周囲を面取りします。
4辺をベルトサンダーに当てて加工。
 

簡単ですが非常に握り易くなりました。水に濡れるため
劣化は避けられないので、半端な塗装は見合わせます。
 

アルミチャンネルには、予めグリップ固定用のネジ穴が
開けられています。頭が出ないよう座ぐり済みです。
 

10mmの皿ネジ2本を締めて
左右のグリップを固定します。
 

木製グリップが取り付けられて
研磨用冶具の完成です。
 

鋳物製に比べて本体の強度・剛性は劣ると思われますが、実用的に十分でしょう。
アルミニウムやステンレスを素材にしたので錆の心配がなく、デザインも目新しい印象です。
 

刃物固定用のノブ付きネジは、2mm厚のアルミチャンネルにねじ込まれているに過ぎません。
ネジ穴の強度が少々心配ですが、M6ナットを添えることで補強することを考えています。

 
 

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