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電動アシスト自転車(ファットバイク)修理(2024.10.6)


購入されて2年も経たないファットバイク修理のご依頼です。
ファットの名前は異様なまでに太いタイヤに由来するようです。
ほとんどオートバイの様相ですが「電動アシスト自転車」で、
「Gran Battement」と書いて「グランビート」と読むそうです。

 

25kgにも及ぶ重量に、電動自転車に乗ったことがない
身には驚きです。工房内を少し移動させるだけで大変な
力仕事です。で、この弩級バイク、動かないそうです。
正確には、電動アシストが機能しない・・状態です。
 

「動かなくなった」と言われても
正直途方に暮れてしまいます。
 

それでも物珍しさにそそのかされ
各部の観察を始めてしまいます。
 

ペダルからチェーンリング、チェーンを介して
後輪スプロケットに踏力が伝達されます。

 

カセットスプロケットは5段の変速
ギヤとディレーラーが備わります。
 

異様なタイヤの太さを除けば
普通の自転車の造りですが、

 

ボトムシェルのあたりから
何やらケーブルが出ています。
 

前輪ハブ部分に取り付けられているのはディスクブレーキです。
よほど大きなアシストが加わるようで、ブレーキも強力な仕様です。
そして、ディスクの奥に見えるのが前輪を電動アシストするモーター
のようです。ハブ端から電力を送るケーブルが接続されています。
 

ハンドル周りを確認します。左側に電源スイッチを
含む操作ボタン、右側にLCDディスプレイがあります。
 

システムに電源が入り、ディスプレイに
表示が出ます、が電動アシストはダメです。
 

もう少し各部の確認を進めます。トップ
チューブが途中で分割されています。

ロックレバーを解除すると
そこから前後に分離します。
 

前後のトップチューブ端にフランジ部があり、
車体左側の蝶番により大きく折れ曲がります。
 

前後が完全に180度回転して車体長が2分
の1となります。折り畳み自転車でもあります。
 

トップチューブにはアルミ合金製のチャンネル材が使用され
内部は空洞です。その車体前方側内部にバッテリーが収め
られています。ワイヤフックを引くと取り出すことができます。
 

各部の構造がいくらか分かりかけてきましたが、バイクが正常に
動作する状態だとしても全体の理解には遠く及びません。まして
故障してアシストできない状態に対して、どこから手を付けたら
良いのか見当すら思い浮かびません。唯一、ご依頼主が製品
仕様のコピーを用意して下さっています。ですが、ご覧の通り
とても修理の役に立つ内容ではありません・・困り果てます。
 

メンテナンス用資料もなく、製造時の設計図や
組立図もヒントもなく、完全に手探り状態です。

 

途方もない時間がかかりそうですが、各部をできる限り
分解して構造・構成の理解に努めるしかありません。
 

車体後方側のチューブ端にバッテリーを受ける端子が
あり、それを取り外すと中に配線が収められています。

 

配線と一緒に何やら訳が分からないモジュールが出て
きます。JCP-2と表記がありますが機能は不明です。

 

さらに奥に金属製ケースに収められたモジュールが収められています。
手前側面からコードの束が出ており、複雑(面倒)な装置であろうことがを
予感させます。修理をお断りするなら今のうち・・?、思いがよぎります。

 

引き出してみると長辺10cm弱のアルミ製ボックスで、
内部のパワーデバイスの放熱器も兼ねているようです。

 

表面に「JC PAS」、「CONTROLLER」の表記が
あり、先ほどのモジュールと同じメーカーです。

 

チューブ内の空洞に夥しい配線が収められています。
全て引き出して、相互の接続関係を調べて行きます。

 

CONTROLLERを中心に、バッテリーや
先ほどのモジュールからの配線がつながり、
 

逆にCONTROLLERからハンドルスイッチや
LCDディスプレイへの配線が出て行きます。
 

ケーブルを切り離すと、電源が切れて
当然ディスプレイは表示されなくなります。
 

当り前過ぎることもひとつずつ確かめていくしか
ありません。続いてハブモーター周りを見ます。

 

樹脂製保護キャップを外すと
ハブ固定ナットが出てきます。
 

スパナでナットを緩めます。前輪のシャフトは
中空構造で、中を電力ケーブルが通ります。

 

ハブモーターのアウターが回転し、シャフト
自体は固定されて回転しないようです。
 

反対側のハブを固定しているナットも緩めます。これだけの
構造・重量を支えるには少々強度不足のように思います。

 

ナットが緩むとハブがガタついてきます。
構造は普通の自転車並みです。
 

前輪が無事に分離します、ブレーキユニットも脱着の必要はありません。
20インチの極太タイヤ、中心部に強力そうなアシスト用ハブモーター、
車体左側に放熱用スリットの入ったブレーキディスクが付いています。

 

チェーンホイール周りの構造確認に進み
ます。クランクを固定するボルトを緩めます。

 

クランク、チェーンホイール周りの分解は
単純そうに見えて実は意外と面倒です。
 

コッタレスクランクなので、専用工具が
必要です。急遽Amazonで調達します。

 

コッタレスクランク抜きをクランク
中心のネジ穴にセットします。
 

クランク抜きの先端が奥のシャフトに
当たった状態で、補助ナットを締め込みます。
 

クランクアーム単体では脱着できず、
チェーンホイールも一緒に外れてきます。
 

チェーンホイールの内側を確認すると、CONTROLLER
からの配線の一部がホイール内に引き込まれています。

 

樹脂製のカバーが嵌め込まれていますが、
周囲をこじることで何とか開けられそうです。

 

クランク回転を検知するセンサーのようです。スプリングが組み
込まれているのでトルク(踏力)を検出するのかも知れません。
 

車体前方に延びる配線は、トップチューブ
下面にホルダで固定されています。

 

電気系配線を一度全て外すため
ホルダを取り除きます。
 

ハンドル周りに延びる配線です。
ケーブルの全貌が見えてきました。

 

操作スイッチ、LCD
ディスプレイを外します。
 

ディスプレイを固定している
ホルダごと取り外します。

 

故障個所どころかまだ各部の機能が分からない
状態です。手探りで解明する必要があります。
 

ここまで分解してきて、各部の組み立て構造や電気系の接続関係が
ほぼ理解できています。ですが、各部の機能、特に電気系の機能
分担・配置は全く分かっていません。全体が正常に動作しているなら、
まだ解析の余地もあるでしょうけれど、現実は故障状態。何が分から
ないのかが分からない状況で、まるで手の出しようがありません。

続電動アシスト自転車(ファットバイク)修理へ

続々電動アシスト自転車(ファットバイク)修理へ

  
 

さて、ファットバイク、GranBattementは既に販売が終って
おり、検索の末ようやく製品紹介の名残を見つけました。
 

製品に同梱される取扱説明書もありました。
ご依頼主提供のシートはこの中の一部です。
 

正確には販売は終了したのではなく、その
違法性が指摘され中止に追い込まれています。

 

消費者庁国民生活センターが、道交法の基準に適合
しない経緯を詳細に説明し、注意を喚起しています。
 

JAF(日本自動車連盟)も、製品の違法性や
利用上のリスクをWEB記事で取り上げています。

 

道交法所管の警察庁は、京都府警がファットバイクの
販売者を検挙したことを広報資料として公開しています。
 

販売店(京の洛スク)の運営会社(株式会社THE NeO)は、その後
1億5000万円の負債を抱え、昨年6月に倒産に至っています。問題は、
このような違法性のある製品を、果たして修理など引き受けてよろしいか
ということです。修理自体も違法とならないか、慎重な判断が必要です。
詳細は略しますが、道交法が定義する道路上で使用した場合に、摘発
されるのはその運転者自身です。間接的に運転者の違法行為を手助け
することになるかも知れませんが、公道を違法走行する原因を修理業者に
結びつけることは無理があり極端です。依頼者が公道を走るかどうかは
分かりませんし関与できることではありません。道交法に抵触する理由は
運転者の踏力に対するモータのアシスト比(1:2まで)だそうです。時速
24kmの時点でアシスト力がゼロになる必要があり、それを超過すると
原動機付き自転車と見なされます。しかし、現時点での想像ですが、
パワーデバイスによりモーターを制御しているので、多分アシスト比や
速度はコントローラの設定次第なのではないでしょうか。補助パワーや
速度が出るポテンシャルがあるだけで、厳しく取り締まれるのか疑問に
思います。だとすれば、最高時速が250kmも出るスーパーカーは
一般道路をとても走れません。修理作業を先に進めるべきか悩みます。

 
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