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化粧鏡台の修復過程 その2


昭和から平成にかけ、我々の母親世代に愛用された化粧鏡台を修復します。譲り受けて
きたものの作業が進まず、本体表面を研磨した後、1年近くもそのままにしておりました。
額縁の修復を終えると急に後ろめたさが募り、残りの作業を続けることにしました。


 
 3.本体修復と表面研磨


本体の各部に構造に関わる損傷が見られます。
4隅で脚部の留め接ぎが分離しかけています。
 


底部枠組みも留め接ぎが剥がれ、隙間が見えて
います。全体の強度が著しく損なわれています。

 

底板との接合部が全長にわたり分離しています。
当時の接着剤(膠)が劣化・固化し割れています。

 

分離した部分の隙間を広げ、出来る
限り深部まで接着剤を入れます。

 

細い棒などを使い、接着剤を奥まで押し込みます。元々、
釘を使用せず接着剤のみで組み立てられているようです。

 

播金をかけて固定します。各部の圧着力が
均一になるよう、播金を慎重に締め付けます。

 

接合部から接着剤が糸状にはみ出てくることを確認します。接着剤の
過不足や塗り斑があると、十分かつ均一な接合力が発揮できません。

 

接着剤が完全に乾き、本体構造に強度が
十分戻ってから表面の研磨にかかります。

 

表面の傷んだクリア塗装を落とすと
桑突板の美しい木目が現れます。

 

しかし、長年の使用で材料の内部に及ぶ傷も多く
付いています。突板を損なわない程度に除去します。

 

左側引き出し上の天板です。大きめの缶のような
ものが置かれていたのか、痕が残っています。

 

こちらもぎりぎりまで研磨します。完全には除去
できそうにないので、塗装で目立たなくします。

 

内側の幅の広い天板を研磨します。左右の
側板を傷めないよう、乱暴な作業は禁物です。

 

表面に残る硬いクリア塗装(ニス)を突破した
後は、ハンドツールに持ち替えて作業します。

 

天板の周囲、木口や木端面を、元の稜線の
風合いを損なわないよう丁寧に研磨します。

 

天板の奥まった部分に、こぼれた化粧品が
固まったのか汚れが集積しています。

 

鑿を慎重に使い、固まりを削り落とします。
手が届きにくい隅の手入れが重要です。

 

左右側板の内側を研磨します。小さく
切ったスポンジ研磨シートを使用します。

 

天板木端面の裏側を研磨します。側板に方向違いの
研磨痕を付けないよう、マスキングテープで養生します。

 

木端面に沿って研磨し残した部分があります。
クリア塗装が硬く、手作業では落とせません。

 

電動マルチサンダーを当てます。
養生されていますが慎重に作業します。

 

引き出し出入り口周囲の狭い
木口・木端面を研磨します。

 

稜線に施されている僅かな面取りを保ちながら作業
します。不用意に変更すると印象が損なわれます。

 

左側天板の左奥に突板の大きな欠損が
あります。木工パテで補修します。

 

木工パテの固化を待ち
綺麗に整形します。

 

整形後の欠損部分です。形状的に周囲と良く馴染んでいます。
塗装時に濃い目の着色によりほとんど目立たなくなるでしょう。

 

脚部周りも丁寧に研磨します。欠損や
残る隙間は木工パテで処理します。

 

1年余り前の作業はここまででした。その後
修復作業は長い空白を置くことになります。

 
 4.再塗装


1年余り後、再開した作業は本体表面の再研磨作業
からです。この写真からタイムスタンプが2018年です。

 


全体を軽く再研磨し、オイルステインで着色します。
元の色合いから推定しウォルナット色を選びます。

 

布切れを小さくたたみ、木地に染み
込む量を限度として塗り付けます。

 

着色剤が表面に残ると色斑の原因に
なるので、余分を拭き上げます。

 

ほぼ元の色合いが復元できそうです。桑材の明瞭な木目に
着色剤が入り込み、美しい玉杢が鮮やかに浮かび上がります。

 

僅かに残っていた缶のような容器の
痕は、もはやほとんど分かりません。

 

引き出し面板を着色します。先に
内側の埃等を吸い取っておきます。

 

本体表面と同様に手早く着色
します。美しい木目が蘇ります。

 

突板による周囲の縁取りが欠損している
部分は、木工パテで補修・整形済みです。

 

左右支柱の研磨作業を進めます。栗材(?)の
ような、地肌が褐色のやや柔らかい材料です。

 

簡素な塗装で研磨により簡単に塗膜が落ちていき
ます。R加工された側面はハンドツールで仕上げます。

 

支柱には変形や狂いが生じないよう、見事な柾目材が
用いられています。研磨するだけでその素直さを感じます。

 

支柱の本体取り付け部に、ささやかな化粧
彫りが施されています。研磨シートを入れます。

 

着色前の研磨作業を終えました。本体の溝に嵌まり込むホゾも
手加工されたのだと思います。職人ならではの正確無比な仕事です。

 

本体や引き出しと同じオイルステインで着色します。
材質が異なるので色合いが同じになるか心配です。

 

木地が褐色のこともあり、やはり突板が
張られた面よりも濃い目に着色されます。

 

左右支柱の間に入る、化粧を兼ねた補強材です。
切り抜きと彫りで笹の葉が表現されています。

 

上塗りに備え十分に乾燥させます。油性塗料どうし
では、上塗りが着色剤を溶かし出す恐れがあります。

 

直接クリアを刷毛塗りせず、透明カラー
スプレーを一度全体に吹き付けておきます。

 

塗膜が硬く耐久性に優れるウレタン樹脂
塗料で上塗りします。4回ほど重ね塗りします。

 

修復方針として、本体内部や背面など外部から視認されない部分は、
深刻な損傷がない限り再塗装など修復を行いません。長い年月を
経過した風合いを全て覆い隠してしまうには抵抗があるからです。

 

譲り受けて工房に運び込んでから1年半近くも過ぎています。まだ、
鏡枠の補修が残っていますが、手を止めず一挙に完了させたいものです。

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