製作開始からひと月以上が過ぎて、ようやくお仏壇の完成を迎える運びとなりました。
お見積もりの段階でご依頼元に納期を3週間程度とお伝えし、塗装作業が主な原因
とはいえ、これだけ遅れてしまったことを大変申し訳なく思います。ここに納められるで
あろうご位牌に心し、残る作業を最後まできちんと仕上げるのみです。
本体内部に棚板を1枚入れます。取り外しができるよう棚ダボを取り付けます。
箱組の中での位置決めは誤差が出やすいので、簡単な治具を使います。
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棚ダボの位置に下穴を開けておきます。
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既製品の棚ダボ(金属製)はなかなか高価です。
樹脂製スリーブと木ネジを使い自前で誂えました。
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棚板の裏側に棚ダボがかかる溝が必要です。綺麗な
R形状に加工するためストレートビットを使います。
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材が柔らかいため高速回転するビットで周囲が
捲れる心配があります。セロテープで養生します。
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材料が蹴られないよう、しっかり保持し
ながらゆっくりとビットに当てていきます。
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フェンスに突き当たったところで
切削完了のはずです。
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恐る恐る被切削部分を確認してみます。
何とか半円柱状に抉られているようです。
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材料の捲れもなく綺麗に切削されています。塗装後に作業
するとどうしても塗装面が傷むので、もう1回上塗りします。
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最終組み立てに備えて、扉開閉用の蝶番を本体に取り付けておきます。
既製品の真鍮製蝶番ですが、この通りネジ穴の座ぐりが不十分です。
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このままでは蝶番を閉じた時に、内側でネジ頭が
互いに干渉しかねません。座ぐりを入れ直します。
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蝶番の真鍮材に厚みがないので、あまり大きく座ぐると
ネジ穴を壊してしまいます。この程度にしておきます。
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まだいくらかネジ頭が飛び出しますが
頭同士の干渉は避けられるでしょう。
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蝶番のみ本体に取り付けてしまいます。扉の
取り付けは引き出しを入れてからにします。
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付属の真鍮製木ネジを使って本体に固定します。木材料も
真鍮も柔らかいので、そこそこに締めるに留めます。
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全体的に飾り気を抑えたお仏壇にあって、
蝶番の金色はささやかなアクセントになります。
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組み立ての終わっている引き出しを張り込みます。調整ありきで組み
立てた結果、引き出し外寸が箱の内寸を上回り、まるで入りません。
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引き出しの外寸を鉋削りして調整します。丁寧な
仕事にするためこのような治具を用意しました。
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クランプで固定した板材のはみ出し
部分に、引き出しを掛けます。
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これで引き出しが安定するので安心して鉋を当てられます。
材の順目・逆目は立ち位置を変えることで対応できます。
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おそらく最後の鉋がけになるでしょうから、ここで
刃を研いで肌の美しい引き出しを目指します。
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面板・背板・側板の底に当たる木端面で高さを、
側板の両外側で引き出し幅を調整します。
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木片を接着して、引き出しの奥止まりとします。
この時点で本体背板を本固定することができます。
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引き出しの調整中に本体底板に傷が付くのを防ぐ
ため、両端にセロテープを貼って養生しています。
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塗装を終えた扉を本体の上に載せてみます。塗装面
同士では粘着の心配があるので桟を介します。
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収まりを確認したら、いよいよ蝶番に固定します。
陰になるネジ位置を探り当てるには工夫が必要です。
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扉の底辺と本体の底板の間に厚紙1枚分の
隙間を取り、開閉時の擦れを防ぎます。
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ネジ穴の中心位置は厳密に決定しなければなりません。
ネジ穴用のセンタードリルやポンチ形状のキリを用います。
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ネジ穴の中心がずれていると、ネジを打ち
込むにつれて蝶番位置が狂っていきます。
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小型の蝶番は取り付け後に位置
調整ができず、毎回1発勝負です。
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今回も何とかなった・・というのが実感です。蝶番を正確無比に取り付け
扉をぴたりと収めるにはまだ工夫と練習が必要です。注文をいただいての
作業では、失敗できない緊張感があり非常に良い経験になります。
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扉に取っ手を付けるとお仏壇もいよいよ完成します。ホーム
センターで購入した汎用品ですが落ち着いたブロンズ色です。
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ここでもネジ穴の中心とネジの中心がずれることで
取り付け位置が狂うことのないよう注意します。
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付属してきた木ネジは、扉の板厚に対して
長過ぎます。ペンチで先を数mm切断します。
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取っ手自体の厚みも含めて
ちょうど良い長さです。
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ドライバーが滑って扉表面を傷付ける・・・などと
いうヘマをやらかさないように慎重に締めます。
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左右取っ手の中心間距離を30mmとしました。
40mmにするか迷いましたがすっきりした印象です。
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完成致しました。
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扉もスムーズに開閉します。マグネットキャッチの吸い付きが
少し弱い感じですが、扉を保持するには支障ありません。
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ご依頼元に納品可能となりましたが、塗装面が
もう少し安定するのを待ってからにします。
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本製作過程を最後までご覧いただき誠に有難うございました。
何らかのご参考にしていただければ幸いに存じます。
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