ＰＣ修理（ＨＤＤトラブル、ＳＳＤ交換など）のご依頼をいただいた際に、起動に３・４分、まれに５分以上もかかるＰＣに出会うことがあります。ＨＤＤのアクセス速度が遅いことが主な原因であり、従ってＳＳＤ交換をお勧めするのですが、起動を遅くする原因はＨＤＤ以外にも存在します。

　その一つが「セキュリティツール（ウィルス対策ソフト）」の常駐です。最近のセキュリティツールは、激増するウィルス被害に対応するため高性能化・高機能化しており、ＣＰＵを始めＰＣの資源を大きく消費するアプリケーションソフトの様相を呈しています。ＰＣ起動時に自動的に実行され以後システムに常駐し、ＰＣ稼働中に様々な脅威を監視し続けます。また、時おりファイルをスキャンし、何か作業中（例えば文書作成中）の場合はレスポンスを大きく低下させます。

　家電店などで店員の勧めるままに購入されたＰＣには、出荷状態でセキュリティーツールがバンドルされており、その有無が製品の付加価値として謳われています。パターンファイルの更新やツールのバージョンアップは基本的に有償で、体験版や試用期間を設けた上で、その後あの手この手で有償契約に誘導しようとメッセージを表示します。一般のユーザー（工房のお客様の多く）にはセキュリティー対策に敏感な方が多く、ツールを不可欠なものとしてそのままお使いになっています。ＰＣの起動が遅くなり、レスポンスが低下し、有償契約のメッセージが頻繁に表示されても、仕方ないもの・こんなものと我慢しておられるようです。

 　先日守谷工房ＰＣサポートを立ち上げる際、テクニカルパートナー（専門スタッフ）の方と同じ問題について議論しました。先に結論を申し上げると、ＰＣにバンドルされたり後から購入される「セキュリティツール（ウィルス対策ソフト）」は、その必要性があまり高くないということです。実はこれまで守谷工房では、お客様に了解いただいた上でウィルス対策ソフトを停止またはアンインストールしてきました。そのままではウィルスなど脅威に対して無防備ですから、代わりに「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」をセットアップ・有効にします。これだけでもＰＣのレスポンスはかなり改善します。「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」はＷｉｎｄｏｗｓＯＳに元から組み込まれている高性能・高機能のセキュリティツールで、特にＷｉｎｄｏｗｓ１０で一段と完成度を高めました。

　問題は「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」のみで本当にセキュリティーを保つことが可能か・・という疑問です。守谷工房の内外で利用している数十台のＰＣでは、Ｗｉｎｄｏｗｓ７の頃から「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ（Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｓｅｃｕｒｉｔｙ Ｅｓｓｅｎｔｉａｌｓ）」のみで、ウィルス等の被害に遭ったことはありません。経験的な判断でしかありませんので、責任を持ってお客様に勧めるわけにもいかず、長短を説明した上であくまでもお客様に判断を求めてきました。その結果、お客様が損害を被る例も現時点で生じていません。

　さて、「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」がいかに高性能・高機能なセキュリティツールであるか、その詳細が解説された記事をようやく見つけました。「基本のセキュリティ機能からクラウドベースのリスク評価や自動修復まで、Windows Defenderの知られざる能力」に、「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」がどれほど強力なツールであるか、分かりやすく説明されています。「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」はSmartScreen、ファイアウォール、Exploit Protection、Exploit Guard、Application Guard、アプリケーション制御、Credential Guardから構成されるＷｉｎｄｏｗｓ１０セキュリティ機能の総称であり、多重のセキュリティ機能を提供します。Ｗｉｎｄｏｗｓ１０のグレード（Ｈｏｍｅ・Ｐｒｏ・Ｅｎｔｅｒｐｒｉｓｅ）により機能が異なりますが、およそ一般のセキュリティツールが備える機能を網羅しています。

　あらためて「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」のみでセキュリティーを保つことが可能か、他のセキュリティツールは不要なのか・・ですが、市販の「セキュリティツール（ウィルス対策ソフト）」を必須とするほどの「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」の弱点・欠点は見当たらないということです。市販品は事例を挙げながら新たな脅威を強調し製品の優位性を示しますが、「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」も含めた他社製品との差別化が目的と化し、実績に基づいた性能・機能の検証は難しくなっています。新しく登場するウィルスには、「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」も含めどの製品も十分に機能しないのが現状です。結論として、「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」が機能していれば他の「セキュリティツール（ウィルス対策ソフト）」はその必要性が高くない、ということです。他の製品を選択したり、念のため複数のツールを常駐させることはもちろん利用者ご自身の自由ですが、ＰＣ資源の浪費やレスポンスの低下とトレードオフ関係にあることをご理解いただきたいと思います。セキュリティツールを動作させるために、高性能ＰＣが用意されているわけではありません。加えて、市販の製品はいずれ有償になりますが「Ｗｉｎｄｏｗｓ Ｄｅｆｅｎｄｅｒ」はＷｉｎｄｏｗｓＯＳ機能の一部で、新たな費用はかかりません。

　セキュリティー関係で何かお困りごとがございましたら、守谷工房ＰＣサポートへ是非お問い合わせ・ご用命下さい。